浮世絵作りはチーム戦! 現代の版元を訪ねて
絵師、彫師、摺師の三者と、それを総合的にプロデュースする版元によって作られてきた浮世絵。東京・目白の「アダチ版画研究所」では、この伝統木版技術の継承を掲げ、現在は20~40代の彫師3名、摺師5名がひとつ屋根の下で制作しています。
主な彫道具(ほりどうぐ)と摺道具(すりどうぐ)。職人は一人前になるまでに「彫師7年、摺師5年」といわれ、道具を使いこなすにも長い時間と修業が必要だ。
復刻版浮世絵に加えて半数以上を占めるのが、現代作家とのコラボレーション作品。
「シャープな線と鮮やかな発色、分業制という独特の形態。浮世絵ならではの表現は、海外アーティストからも注目されています」と話すのは、理事で学芸員でもある中山浩子さんです。
江戸のマスメディアであった浮世絵の制作は、一つ一つの動作、道具も、効率性と品質の向上を求めて発展してきました。たとえば版木に用いる山桜は硬く、木目が通っているため大量生産に適しています。
越前で作られる楮(こうぞ)100パーセントの和紙は、顔料が繊維の中まで染み込んで美しく発色する特別な素材です。
【彫】江戸時代と同じ山桜の版木を彫る「彫師」。水が入ったフラスコは、光を反射させ、刃先の影を消すためのもの。
分業制もいうなれば効率を求めた結果。一人が彫と摺を習得するには時間がかかりますが、分業制にすることでより早く、高いレベルに達し、結果的にそれが熟練の職人技を結集した、世界に誇る文化を生んだのです。
【摺】ばれんに体重をのせて和紙に絵の具を摺り込む「摺師」。奥まで均等に力をかけられるよう、作業台は前方に傾斜している。
「浮世絵は江戸の商業印刷で、職人たちは高度な技術者集団として活躍していました。その伝統技術を守り繫ぐため、後継者の育成に特に力を注いでいます」(中山さん)。