名字365 姓氏研究家の森岡 浩さんが日本人の名字を毎日紹介します。あなたの意外なルーツが分かるかも?知れば知るほど面白い、名字の世界をお届けします。
連載一覧はこちら>>
珍しい名字:三分一(さんぶいち)
「三分一」という名字があります。「さんぶんのいち」ではなく、「さんぶいち」と読みます。ただし、意味は現在の三分の一と同じで、古い時代には「さんぶいち」といったのです。
さて、江戸時代の武家では長男が家を相続し、財産をすべて受け継ぐのが普通でした。二男や三男は長男の家臣になるか、他家に養子に行くしかありませんでした。
しかし、中世ではこうした制度は成立しておらず、家を継ぐのは長男とは限りませんでした。とくに戦乱の続いた戦国時代では、一族の中の優秀な人物が家を継いだのです。
さらに古い鎌倉時代では、家を継いだ惣領が財産を総取りするわけでもなく、兄弟で分割して相続することよくもありました。家を継がない庶子が全体の三分の一だけを相続した「三分一地頭(さんぶいちじとう)」という言葉もあったのです。
そして、こうした庶子の中には「三分一」を名字とした人がいたのです。また、その土地が「三分一」という地名になったところもあります。
現在は山口県に多く、岩国市に集中しています。
森岡浩/Hiroshi Morioka姓氏研究家。1961年高知県生まれ。早稲田大学政経学部在学中から独学で名字の研究をはじめる。長い歴史をもち、不明なことも多い名字の世界を、歴史学や地名学、民俗学などさまざまな分野からの多角的なアプローチで追求し、文献だけにとらわれない研究を続けている。著書は「全国名字大辞典」など多数。
墨アート製作 書家・越智まみ(
https://esprit-de-mami.com/)
セブンアカデミーで越智まみさんの「オンライン書道」墨アートレッスンが開催中。詳細は
こちらから>>