カルチャー&ホビー

江戸後期の暮らしがわかる『守貞謾稿』から学ぶ、江戸流の生き方「足るを知る」

2025.02.27

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正月飾り

写真/本誌・坂本正行

稲穂の付たる藁を以て輪注連を少し大形に精製し〈中略〉飾りとなしたるを……
『守貞謾稿』巻之二十六では正月の門松に続いて、右の絵の飾りを紹介。「床の間或は坐敷の内然るべき柱などに掛ること、風流を好む家に専らこれを用ふ」とある。「門松や注連縄は古くから農村でも飾っていたはずです。それらを現代の飾りに通じる装飾性の高いものにしたのは、江戸後期の都会の人たちでしょう」(田中さん)。

端午の節句

写真/小林庸浩

江戸にては初年(男児が生まれて初めての端午)より柏餅を贈る
端午の節句につきものの粽(ちまき)は行事とともに中国から伝来。一方で、柏餅は日本が発祥とされる。『守貞謾稿』では「江戸にては砂糖入味噌をも餡にかへ交るなり。赤豆(あずき)餡には柏葉表を出し味噌には裡(うら)を出して標(しるし)とす」と詳述。「好奇心が強く、アイディアが豊かだった」(田中さん)という江戸人の気質が感じられて面白い。

隅田川花火

©峰脇英樹 / アフロ

両国橋の南辺に於て花火を上るなり。諸人見物の船多く又陸にても群集す
旧暦の5月28日は浅草川(現在の隅田川)の川開き。「昔は川開きをしたら、毎日のように花火を上げていました。起源はお盆の行事ですから、故人を供養する気持ちを込めて、しみじみ眺めるという風情ですね」(田中さん)。大花火のときには江戸じゅうの船宿や飲食店から費用を募り、「大花火なき夜は遊客の需(もとめ)に応て金一分以上焚く」(『守貞謾稿』)。上の絵はそうした夜の様子だろうか。

酉の市

©イメージマート

今日参詣の人 左図の物(熊手)を買ひ 神棚等に飾り家業繁昌の兆とす
酉の市といえば、熊手。お福の面や鯛、米俵などの縁起物を華やかに飾りつけた熊手は、何かと縁起を担ぐ日本人の国民性を象徴しているようにも見える。「此日江戸四民男女専ら参詣す」(『守貞謾稿』)と記されている鷲(おおとり)大明神(現在の鷲神社)の酉の市は令和の世も健在。「熊手はお客様を “かき集める” 縁起物。商売をしている人にとって大切なのは、江戸も東京も変わりませんね」(田中さん)。

取材・文/清水千佳子 ※『守貞謾稿』の写真は、すべて国立国会図書館『守貞謾稿』デジタルコレクションより。 ※ 参考文献/『近世風俗志』(岩波文庫) ※『守貞謾稿』の表記は、表紙には「漫」と書かれているが、ここでは『広辞苑』で正しい表記としている「謾」を採用する。

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