名字365 姓氏研究家の森岡 浩さんが日本人の名字を毎日紹介します。あなたの意外なルーツが分かるかも?知れば知るほど面白い、名字の世界をお届けします。
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玉虫(たまむし)
名字には、獣や鳥、魚などに因むものはたくさんありますが、昆虫に因む名字というのはあまりありません。そうした昆虫に由来する名字に「玉虫」があります。
タマムシとは甲虫目タマムシ科に属する昆虫で、金緑色の翅がメタリックに輝く美しい虫です。
江戸時代、仙台藩士に玉虫家があり、同家にはその由来が伝わっています。
それによると、玉虫家はもともとは桓武平氏で城(じょう)氏の一族でした。平安時代の永観2年(984)、城維忠は越後国岩船郡石井村(現在の新潟県)の戦で敗れて自刃しようとした際に老翁に助けられ、後に戦に勝ったといいます。
実は老翁は神の化身で、玉虫となって去った行ったことから、維忠は「玉虫」を名字にしたと伝えています。
このほか、旗本にも玉虫家があり、こちらも城氏の一族としていますが、「玉虫」は越後の地名に因むとしています。
タマムシという名前の由来は、玉(宝石)のように美しいことからきており、縁起のいい昆虫でした。
名字の由来としてどちらが正しいのかはわかりませんが、縁起のいいことに因んでつけられたものであることは間違いないと思います。
現在は山形県米沢市に集中しています。
森岡浩/Hiroshi Morioka姓氏研究家。1961年高知県生まれ。早稲田大学政経学部在学中から独学で名字の研究をはじめる。長い歴史をもち、不明なことも多い名字の世界を、歴史学や地名学、民俗学などさまざまな分野からの多角的なアプローチで追求し、文献だけにとらわれない研究を続けている。著書は「全国名字大辞典」など多数。
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