名字365 姓氏研究家の森岡 浩さんが日本人の名字を毎日紹介します。あなたの意外なルーツが分かるかも?知れば知るほど面白い、名字の世界をお届けします。
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難読名字:乾(いぬい)
「乾」という名字があります。名字ランキングでは600位台と珍しい名字ではないため、普通に「いぬい」と読める人が多いと思います。
では、なぜ「乾」と書いて「いぬい」と読むのでしょうか。
「乾」という漢字の読み方は、訓読みが「かわく」で、音読みは「カン」です。この他に「ほす」「ケン」という読み方もありますが、「いぬい」というのは例外的な読み方です。
江戸時代以前、日本では方角を十二支を使ってあらわしていました。
北が「子(ね)」で南が「午(うま)」です。今でも地球の南北を結ぶ線を子午線といいます。そして、東は「卯(う)」で西が「酉(とり)」です。それぞれの方角はさらに3等分して十二支をあてました。
一方、中国の八卦では方位を八等分しました。東西南北の他に、北東を「艮」、南東を「巽」、南西を「坤」、北西を「乾」というのです。
このうちの「乾」の方角が、日本では「戌(いぬ)=西北西」と「亥(い)=北北西」の中間にあたるため、「いぬい」と呼んだのが由来です。つまり、「乾」は方位由来の名字なのです。
現在、「乾」という名字は、奈良県を中心に四国南部から愛知県にかけての間に集中しています。
森岡浩/Hiroshi Morioka姓氏研究家。1961年高知県生まれ。早稲田大学政経学部在学中から独学で名字の研究をはじめる。長い歴史をもち、不明なことも多い名字の世界を、歴史学や地名学、民俗学などさまざまな分野からの多角的なアプローチで追求し、文献だけにとらわれない研究を続けている。著書は「全国名字大辞典」など多数。
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