悪の象徴・闇呑神と一体化し鬼となった温羅と、対峙する吉備津彦。お互いを写し鏡の様に感じ惹かれていたものの、剣を交える状況に追い込まれる。鬼となったはずの温羅は自ら刃を胸に向けて吉備津彦を生かし、絶命する。暗闇に蛍が現れ、光に包まれるというシーン。
舞台の幕が降りて転調するかのように、物語を展開する荘厳な力が宿ったSUGIZOさんの音楽。高橋さんや増田さんたち俳優陣の感情面、表現面において後押しとなったに違いありません。公演前のインタビューで高橋さんが「自分も知らなかった自分に出会える作品になりそう」と話してくれたのですが、感情表現において、新たなステージに到達した高橋さんの姿を見ることができました。特別映像出演の市村正親さんの快演、特別音声出演の戸田恵子さんの表現力もさすがでした。
堤監督とSUGIZOさんの魂が共鳴し、スケーターや俳優陣が一体となって作り上げた『氷艶 hyoen 2025 -鏡紋の夜叉-』。公演を見逃してしまったかた、もう一度観たいと思っていたかたに朗報です。2025年9月28日(日)19時から、日テレプラスにて完全版が放映されるとのこと。世界が不安定な今だからこそ、1人でも多くの方に見ていただきたい。正義の価値観や寛容性、多様性の本当の意味を考えるきっかけやメッセージがこの作品にはたくさんちりばめられている、そう感じました。
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小松庸子/Yoko Komatsuフリー編集者・ライター。世界文化社在籍時は「家庭画報」読み物&特別テーマ班副編集長としてフィギュアスケート特集などを担当。フリー転身後もフィギュアスケートや将棋、俳優、体操などのジャンルで、人物アプローチの特集を企画、取材している。
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