「『このセリフ、本心でいってるのかな』。台本は全部疑いながら読んでいます」

新作舞台『ブランク』はクセものたち6人の会話劇
あるときは現代日本に転生した天才軍師、諸葛孔明、またあるときは父親になった魔法使い、ハリー・ポッター。作品ごとにさまざまな顔を見せてくれる向井理さんが、最新の主演舞台『ブランク』で演じるのは、自身と同世代の弁護士。本作は2023年の舞台『リムジン』でタッグを組んだ倉持 裕さんの書き下ろしです。まだ稽古に入る前のある日、向井さんに台本の感想や作品への思いを尋ねると、クールなイメージと裏腹に、終始、穏やかな笑顔で答えてくれました。
「倉持さんの作品は台本を読んだだけではわからない魅力がたくさんあるんですが、『リムジン』を経て、『ここらへんが面白くなりそうだな』というのは、なんとなくわかるようになりました。でも、とても繊細な台本で、間やテンポを間違えたら、笑ってもらえなくなるシーンが多々あるので、演じるほうとしてはなかなか緊張する作品です」
向井さんが演じる浅香賢介は、まじめで職務に忠実な弁護士。物語は、弁護士事務所のメンバーと依頼人たち、同じビルの清掃会社に務める米原佐知子(西田尚美さん)の6人によるコミカルなやり取りで展開していきます。
「『米原佐知子とは何者なのか?』というところから始まるのですが、その謎に振り回される人もいれば、まったく意に介さない人もいて、向き合い方はバラバラ。弁護士事務所という同じ空間にいて、一緒に問題を解決しようとしている人たちなのに、みんな違う方向を向いている。その違和感、人間っぽさが面白くて。倉持さんは、どうしてこんなすごいものが書けるんだろうと思います」
感じ入った様子で話す向井さんが続けて口にしたのは「僕は、セリフは全部疑いながら読んでいるんですけどね」という興味深い言葉。その真意とは?
「自分だけでなく、ほかの役についても、『このセリフ、本心でいってるのかな』と疑って読むということです。『そうだね』という返事も、本当にそう思っていればすぐにいえるけど、思っていなければ『……そうだね』となる。そのわずかな遅れにお客さんが『今の何?』と気づいてくれたら嬉しいですね」
舞台は自分たち役者のもの。年に1本出演するのが理想
「舞台もエンタメも攻めた仕事も全部やりたい。欲張りなんでしょうね」
ストレス発散法は料理という向井さん。「先日、朝起きて冷蔵庫を開けたら、前の晩に飲みながら作ったオクラキムチがあって。すっかり忘れていたので、得した気分になりました」。
テレビ、映画、動画配信サービスでの活躍も目覚ましい向井さんですが、舞台への情熱はひとしおで、「年に1本出演するのが理想」と話します。
「舞台は古代ギリシャから始まる芝居の原点ですし、自分たち役者のものだと感じるからです。映像は監督が見せたいところをアップにできるし、編集して作り上げますから、監督のものなんですよね。舞台にも演出家はいますが、いざ始まれば役者に委ねるしかありません。もちろん、僕らは演出家が納得するところまで稽古を積んで本番に臨むわけですが、それこそ『間』なんて毎日変わりますから。お客さんの立場で考えると、すべてを自分のフィルターで見られるのも、映像にはない魅力だと思いますね」
その言葉から、自らが携わっている世界を広い視野で多角的に見ていることが伝わります。そんな向井さんが仕事のオファーを受けるときの決め手とは。
「やったことがなくて、面白そうなもの、ですね。自分が成長できる『壁』のような作品に挑戦したいと常に思っています。先日までWOWOWの『MR-医薬情報担当者-』というドラマを撮っていたのですが、製薬会社を舞台にするなんて攻めてるな、面白いなと思いました。そういう攻めた仕事やエンタメをやりつつ、舞台も続けたい。欲張りなんでしょうね」
向井さんは最初から最後まで、本心で語ってくれたように聞こえました。
向井 理(むかい・おさむ)1982年神奈川県生まれ。2006年俳優デビュー。2010年のNHK連続テレビ小説『ゲゲゲの女房』で注目を集める。近年では映画化もされたドラマ『パリピ孔明』、いのうえ歌舞伎『爆烈忠臣蔵~桜吹雪 THUNDERSTRUCK』『ハリー・ポッターと呪いの子』(ともに舞台)など、話題作への出演が続いている。
M&Oplaysプロデュース『ブランク』

浅香賢介(向井 理)はクセの強い依頼人たちや事務所の面々に手を焼きつつ、仕事に勤しむ45歳の弁護士。清掃会社社員・米原佐知子(西田尚美)と出会ったことで心の平穏が揺らぎ始める。彼女の過去の空白期間(ブランク)に何があったのか──。コミカルな言葉の応酬と「間」が絶妙な会話劇。
2026年10月3日(土)~10月25日(日) 本多劇場(東京)
全席指定9000円ほか
お問い合わせ:M&Oplays
TEL:03(6427)9486(平日11時~15時)
※ほか2026年11月15日(日)まで、広島、愛知、新潟、宮城、富山、大阪にて公演あり
作・演出/倉持 裕 出演/向井 理 西田尚美 入野自由 森 優作 中井千聖 池津祥子
URL:
https://mo-plays.com/