次の世代へと思いを受け継ぐ公演の見どころ
今年の秀山祭九月大歌舞伎では、種太郎さんと秀乃介さんは『ひらかな盛衰記』に出演します。
左/マイペースでチャーミングな秀乃介さん。右/ひと言ひと言、しっかり考えてお話しする種太郎さん。
種太郎さん「出ている時間は短いけれど、立ち廻りや動きが多いので、大変です」
歌昇さん「遠見の松右衛門はパパもやったことがあるんだよ」
種太郎さん「その時パパは何歳だったの?」
歌昇さん「10歳くらいかな」
種太郎さん「今の僕と一緒くらいだ」
秀乃介さん「僕のお役は、あきちゃん(叔父の種之助さん)だったの?」
歌昇さん「そう、駒若丸は種之助だった」
そんな秀乃介さんの「(相手役の)槌松をやる子役さんは初めてだから、僕がよく考えて、ちゃんと合わせられるようにします」という頼もしい発言に、「まずは自分のことを考えてお稽古しないとね」と、お父様が釘を刺す場面もありました。
一方で歌昇さんは昼の部では弟の種之助さんと舞踊『三社祭』に出演します。
「『三社祭』は、お稽古場に行くと誰かが必ず踊っているような立役の舞踊の代表的な演目。観ていても踊っても、すごく楽しい踊りです。清元に乗って漁師の二人が踊るうちに悪玉と善玉が乗り移って、クドキがあったり、当時の流行り唄が入っていたり、踊り方もどんどん変わっていきます。清元の聴きどころもたくさん。何をもって清元らしい踊りというかは人それぞれですが、僕にとっては風が吹くようなイメージですね。今回は相手が弟なので、安心して身を委ねられます。兄弟で踊り方が微妙に違うので、持ち味の違いも楽しんでいただけたら」。
『一條大蔵譚』吉岡鬼次郎=中村歌昇(2023.3国立劇場)©松竹
夜の部『一條大蔵譚』では吉岡鬼次郎を演じます。
「今年の秀山祭は『ひらかな盛衰記』『沼津』『一條大蔵譚』と、秀山祭らしい義太夫狂言が並んでいますが、なかでも『一條大蔵譚』は播磨屋にとって大事な演目です。吉右衛門のおじさまは10代から70代まで演じ続け、僕は国立劇場の研修発表会と新春浅草歌舞伎でおじさまに大蔵卿のお役を教えていただきました。吉岡鬼次郎は、2017年には双蝶会で弟の大蔵卿で、2003年には国立劇場での父の大蔵卿でつとめています。鬼次郎は気質が明瞭で源氏への忠義という筋が一本通っていて、だからこそ常盤御前も大蔵卿も思いを託す気持ちになる。弟の種之助との夫婦役も久し振りで楽しみなところではありますね。今回は松本幸四郎のお兄さんが八剣勘解由で出演されるので、相談させていただきながら、吉右衛門のおじさまに教えていただいてきたことを活かしてつとめられればと思っています」
古典だけでなく昨年の歌舞伎『刀剣乱舞』の陸奥守吉行と源実朝では“メロい!”とSNSを賑わせ、新たなファンも獲得した歌昇さん。
「“メロい”の意味はいまだによくわかっていないのですが、新作歌舞伎に出演させていただくことは自分の新しい引き出しを増やすよい機会にもなります。学生時代に“古文”と聞くと敬遠してしまったように、“古典歌舞伎”は敷居が高いと思っていらっしゃる方にも、新作が入り口となって歌舞伎に興味を持っていただけることもあるはず。
一方でこれからの時代、古典もブラッシュアップされていくことがあるのかもしれません。
何より秀山祭は、初代、そして二代目吉右衛門のおじさまをはじめ先人たちが築き上げてきたものを受け継ぎ、次の世代へと繋げていく場。今年も大切に向き合いたいと思います」
中村歌昇●1989年生まれ。父は三代目中村又五郎。94年6月歌舞伎座『道行旅路の嫁入』の旅の若者で四代目中村種太郎を名のり初舞台。2011年9月新橋演舞場『舌出三番叟』の千歳ほかで四代目中村歌昇を襲名。歌舞伎の舞台以外にも映画、ドラマなどでも活躍。2025年3月に能登演劇堂で上演された舞台『まつとおね』では演出に挑んだ。今年9月の「秀山祭九月大歌舞伎」公演期間中に初のファンミーティングも開催予定。
https://www.instagram.com/kasho_nakamura/?hl=ja中村種太郎●2016年生まれ。19年「秀山祭九月大歌舞伎」での『伊賀越道中双六沼津』で、小川綜真の名で初お目見得、22年『菅原伝授手習鑑』寺子屋の菅秀才で五代目中村種太郎を名のり初舞台。「夏休みの自由研究では“オイルタイマー”を作りました」
中村秀乃介●2018年生まれ。22年『菅原伝授手習鑑』寺子屋の松王丸一子小太郎で中村秀乃介を名のり初舞台。「夏休みは落花生を育てて観察日記を書きました」
【公演情報】
歌舞伎座「秀山祭九月大歌舞伎」2026年9月2日(水)~26日(土)
※9日(水)、18日(金)は休演。25日(金)昼の部、5日(土)、21日(祝・月)夜の部は貸切。(幕見席は営業)
出演:片岡仁左衛門、中村魁春、中村歌六、中村萬壽、中村雀右衛門、中村又五郎、中村錦之助、片岡孝太郎、松本幸四郎、尾上松緑、八代目尾上菊五郎、中村時蔵、中村歌昇、中村種之助、中村隼人、市川染五郎、尾上辰之助、市川團子 ほか
昼の部 午前11時~
『春調娘七種』『三社祭』『ひらかな盛衰記』
夜の部 午後4時~
『雛鶴三番叟』『伊賀越道中双六 沼津』『銘作左小刀 京人形』『一條大蔵譚』
https://www.kabuki-bito.jp/theaters/kabukiza/play/978/