〔特集〕歌舞伎新ジェネレーション 染(市川染五郎)・團(市川團子)・辰(尾上辰之助)の時代、始まる 歌舞伎ファンが今、三人の若きスターに注目しています。市川染五郎さん21歳、市川團子さん22歳、そして尾上辰之助さん20歳。“染・團・辰”と呼ばれ、2026年5月には、それぞれ大きな舞台に挑み喝采を浴びた三人の、これまで歩んできた道のりと、この先に広がるであろう輝かしい可能性に迫ります。
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撮影中も仲のよい三人。染五郎さん、團子さんは辰之助さんを前名の“左近ちゃん”や本名の“大河”、團子さん辰之助さんは染五郎さんを本名の齋(いつき)から“いっくん”と呼んだり。辰之助さんの笑いが突然止まらなくなる場面もあった。
「未来に向けて、自分の引き出しをたくさんの経験で満たしたい」──市川團子

歌舞伎町大歌舞伎『獨道中五十三驛』。「大汗をかいて一所懸命に勤めます」という口上での言葉のとおり13役の早替りで喝采を浴びた。2026年5月 THEATER MILANO-Za。(©松竹 製作:Bunkamura)
鮮やかな早替りは役の“性根”を捉える積み重ね
振袖姿のお嬢さんが乗った籠が閉まると、すぐに上手から若い男が登場、上手に去ると今度は下手から芸者が舞台へ。演じるのはすべて團子さん。『獨道中五十三驛(ひとりたびごじゅうさんつぎ)』での13役の早替りに、拍手と歓声が湧き上がりました。
「役によって男なのか女なのか、年齢や身分でも手の位置をはじめ所作が変わりますが、早替りで一番大切なのは役の“性根”だと思っています。なぜその人が走ってきたのか、どこを見ているのかなど、一つ一つの役柄の背景を読み込んで動きに感情を乗せていく。お客様に喜んでいただけるのは、登場する人物が女から男へ、すっきりとした芸者から狂乱する女へ、など、綺麗に対比が出るように役の順番が工夫されているからです。普段のお芝居よりもキャラクターの要素を誇張して演じることも大事かもしれないと気づきました」
ここ数年、『ヤマトタケル』や『新説 小栗判官(しんせつ おぐりはんがん)』、『義経千本桜(よしつねせんぼんざくら)』など、澤瀉屋ゆかりの演目で次々と主役を勤めている團子さん。役に恵まれるなかで感じることも。
2025年10月歌舞伎座『義経千本桜 川連法眼館(かわつらほうげんやかた)』の佐藤忠信。鼓となった親を慕う狐の芝居やドラマティックな宙乗りだけでなく、狐が化けた忠信ではない“本物の忠信”の武士としての佇まいも注目を集めた。(©松竹)
「祖父の猿翁は30代頃から、上演が途絶えていた作品を復活し始めて、40代の頃にはスーパー歌舞伎を創ったわけですが、それまでに死ぬほど古典作品をやっているんです。それに比べて自分は、とにかく古典が足りていないとつくづく思います。『獨道中五十三驛』の13役にしても、元となっているそれぞれの役をできる人がおいしいところだけをさらっとやるからいいのであって、僕は全く基礎がないのでそれに一から取り組まなくてはならず、引き出しのなさを痛いほど感じました。もっともっと古典を勉強して、自分の引き出しを経験で満たしていかないと、と思っています」
この春、大学を卒業しました。
「最近、自分の物事の捉え方に変化を感じています。今までは白か黒か、ゼロか百かという極端な思考の人間だったのが、そのほかの考え方も認められるようになってきました」