〔特集〕歌舞伎新ジェネレーション 染(市川染五郎)・團(市川團子)・辰(尾上辰之助)の時代、始まる 歌舞伎ファンが今、三人の若きスターに注目しています。市川染五郎さん21歳、市川團子さん22歳、そして尾上辰之助さん20歳。“染・團・辰”と呼ばれ、2026年5月には、それぞれ大きな舞台に挑み喝采を浴びた三人の、これまで歩んできた道のりと、この先に広がるであろう輝かしい可能性に迫ります。
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撮影中も仲のよい三人。染五郎さん、團子さんは辰之助さんを前名の“左近ちゃん”や本名の“大河”、團子さん辰之助さんは染五郎さんを本名の齋(いつき)から“いっくん”と呼んだり。辰之助さんの笑いが突然止まらなくなる場面もあった。
「“演じる”ということを突き詰めて、役に、芝居に向き合っていく」──市川染五郎
『ハムレット』の舞台から。父の死の真相を知り、苦悩、怒り、葛藤、悲しみ……とさまざまな思いを抱きながら復讐を誓う王子の姿を演じ、心に響く台詞回しで空間を支配した。2026年5月 日生劇場。(©松竹/梅田芸術劇場)
初めてのストレートプレイ『ハムレット』で感じたこと
「生きてこうあるか、消えてなくなるか、それが問題だ(To be, or not to be, that is the question)」。染五郎さん演じるハムレットの台詞は、一つ一つがまっすぐに観客の心に響きました。演出家のデヴィッド・ルヴォー氏が“現代のハムレット”像を重ねたという染五郎さん。どのように作品と向き合ったのでしょうか。
「衣裳は普段の僕の私服かなと思うような黒のニット。サングラスをかけて登場するとは想像していませんでした。ただ、“現代のハムレット”とは、単に新しいだけではないと思います。昨今の世界情勢のなかでこの作品を上演することの意味やお届けする言葉の重みを感じながら、あくまでシェイクスピアが描いた人物像から外れないよう役と向き合いました」
作品に自分を重ねた部分も。
「『ハムレット』は人間を描いている作品ですが、劇中では演劇というものも描かれています。ハムレットが語る“役者とは摩訶不思議なものだ。たかが絵そらごとなのに、かりそめの情熱に打ち込み、全身全霊をおのれの想像力の働きにゆだねる”という台詞には、本当にそうだなと共感しました。舞台に立つのはハムレット本人ではなく、市川染五郎。いってしまえば偽物です。そこに命を削って熱量を吹き込む役者って、不思議な仕事ですよね。エンターテインメントは衣食住のように人間が生きていくうえで必要最低限のものではありませんが、それでも、現実を忘れて夢を見るためには必要だと思うんです。僕はお客様にそれを与える仕事をしている、すごく不思議で素敵なことなのだと感じました」
家にとって大切な役に挑み、繫いでいく使命感
三大歌舞伎演目の通し狂言の一つとして2025年9月歌舞伎座で上演された『菅原伝授手習鑑』の武部源蔵。主君の若君を守るため寺子屋の子を身替りにする苦悩や緊迫感が客席にひしひしと伝わった。(©松竹)
歌舞伎では『絵本太功記(えほんたいこうき)』の武智光秀、『菅原伝授手習鑑(すがわらでんじゅてならいかがみ)』の武部源蔵、『梶原平三誉石切(かじわらへいぞうほまれのいしきり)』の梶原平三と、古典の大役が続いています。
「武部源蔵のお話をいただいたときは今の自分にはまだ無理とお断りしようと思ったほどでした。実際に課題だらけで悔しさもたくさん残りましたが、とりあえずスタートを切ることは大事だと感じました。この先何歳まで生きるかわかりませんが、何十年後かに演じたときに、ああ、早めにやれてよかったなと思えたらいいですね。演じてみたい役はいくつもありますが、小さい頃から憧れているのは『勧進帳(かんじんちょう)』の弁慶。歌舞伎十八番ですが高麗屋にとっても七代目幸四郎から続く大切な演目ですので、いつかはと思っています」
2026年7月の歌舞伎座では『時今也桔梗旗揚(ときはいまききょうのはたあげ)』の森蘭丸を勤めます。
「高麗屋にとって大切な光秀の役を父が繫いで行く姿を近くで見られるのは、とてもありがたいです。高麗屋は代々、存在感があって空間を埋め尽くす役を演じてきました。僕も“演じる”ということを突き詰めて、深めていきたいと思います」
市川染五郎(いちかわ・そめごろう)2005年3月27日生まれ。父は松本幸四郎、祖父は松本白鸚。2007年6月歌舞伎座『侠客春雨傘(きょうかくはるさめがさ)』で初お目見得。2009年6月歌舞伎座『門出祝寿連獅子(かどんでいおうことぶきれんじし)』童後に孫獅子の精で初舞台。2018年1月・2月歌舞伎座『勧進帳』源義経ほかで八代目市川染五郎を襲名。2022年大河ドラマ『鎌倉殿の13人』の木曽義高や、配信ドラマ『人間標本』でも話題を集める。若き日の長谷川平蔵を演じる『鬼平犯科帳 本所の銕』は2026年7月10日からTOHOシネマズ日比谷ほか全国でロードショー予定。
[染五郎さん]ジャケット14万3000円 シャツ4万4000円 パンツ4万9500円/すべてガラアーベント(サーディヴィジョンピーアール) イヤリング55万円 リング205万9200円(ともに予定価格)/ともにブシュロン(ブシュロン クライアントサービス) ブーツ5万1700円/アール(ティーニーランチ) [團子さん]スーツ88万1100円 シャツ22万円 サンダル22万8800円 ベルト44万5500円 スカーフ(参考商品)/すべてエルメス(エルメスジャポン) [辰之助さん]ジャケット7万9200円 シャツ4万7300円 パンツ4万7300円/すべてイレニサ バングル7万4800円/マツオ トシヒコ イヤーカフ4万9500円 リング11万8800円/ともにプールプラ バイ マツオ トシヒコ(マツオ トシヒコ)