AIやSNSの時代だからこそ“生”で向き合うことって大事だと思う
時空を超え、いつの時代も変わらないもの
それは、作・演出の野田秀樹さんによると、“正しくない科学に基づいた、正しくないSF(サイエンス・フェイクション)”。
『華氏マイナス320° 』の物語は、化石の発掘現場から始まります。阿部サダヲさん演じるタスケテが古代から現代までを旅する中で、命に対する人間の身勝手さや欲望が浮かび上がります。
「僕が演じるタスケテはストーリーテラー的な役割も担っているし時代を行ったり来たりする役。タスケテと一緒に時空を超えていくと、物語がわかりやすいかもしれません」
台詞に言葉遊びや皮肉がちりばめられているのは、野田地図ならではです。
「野田さん、よく思いつくなって思います。今回は英語の言葉遊びも入ってますし、最後の“愛”という言葉の韻を踏んでいくメッセージも面白いです」
巧みな言葉遊びや奇想天外なストーリーの一方で、現代の科学の闇の部分がモチーフとして登場。最後は命の尊さを突きつけられ、心臓をギュッと摑まれるような気持ちに。ハッピーエンドと捉えるかバッドエンドと捉えるかは観る人次第です。
「僕は前向きな話だと思っています。世の中は似たような人ばかりじゃない。完璧な人間ばかりではつまらないじゃないですか。もともと僕自身が人と同じようなことしたくないと思ってこの世界に入ったので、いろんな人がいるから面白いのだ、ということを伝えたいですね」
劇中、時代を行ったり来たりするタスケテ。演じる阿部さん自身も日常の中で時代の変化を感じることがあるそうです。
「最近って電話もちょっとかけづらくて“今から電話していいですか”って先に LINEが来たりしますよね。会話がどんどんなくなってコミュニケーションの形が変わっていくのは怖いなと思っています。直に接するからこそ響き合うものってあると思う。今回の作品ではMISAKIちゃんというろう者の役者さんも一緒に舞台に立っているのですが、僕は彼女とも文字でコミュニケーションをとるより、実際に会うほうが言葉がなくても通じ合うんですよ」