エンターテインメント

進み続けるピアニスト 角野隼斗さんインタビュー ジャンル・時代を超えた音楽家へ

2026.05.29

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〔特別インタビュー〕進み続けるピアニスト 角野 隼斗 飛躍の日々と現在地 世界を飛び回り、日々新しい顔を見せてくれる、ピアニストの角野隼斗さん。その快進撃は止まらず、活躍の場を多方面に広げています。圧倒的な観客動員数を誇るコンサートや、今年リリースされたばかりのセカンドアルバムへ込めたメッセージを通して、音楽観を語っていただきました。

角野隼斗(すみの・はやと)
1995年千葉県生まれ。2018年ピティナ・ピアノコンペティション特級グランプリ、2020年東京大学総長大賞を受賞し、一躍注目を集める。2021年ショパン国際ピアノコンクールでセミファイナリストに。2025年レナード・バーンスタイン賞を受賞。オーパス・クラシック賞2025では史上初の2部門で受賞。2024年日本武道館で、クラシックピアニストとして史上最多1万3000人動員の単独公演を成功させた。

特別インタビュー「進み続けるピアニスト 角野 隼斗」の記事一覧はこちら>>>

ジャンルや時代を超えた、世界共通で感動してもらえる音楽を目指す

アルバム『CHOPIN ORBIT』の初回生産限定盤特典である愛蔵版ブックレットには、自宅の本棚や音楽空間が再現された撮り下ろし写真が多数掲載され、話題を呼んだ。

アルバム『CHOPIN ORBIT』の初回生産限定盤特典である愛蔵版ブックレットには、自宅の本棚や音楽空間が再現された撮り下ろし写真が多数掲載され、話題を呼んだ。

ジャンルを超えて時代を反映する音楽家として

クラシック音楽との架け橋となりたいという角野さんの願いは、世界にも伝わっています。カーネギーホールでのコンサートでも、テレビインタビューを受けた興奮冷めやらない観客たちが口々にこう評していました。


「彼のすごいところは、クラシックの奏法にジャズと即興を合わせているところ。そうして美しい音楽ができ上がる」「クラシックを親しみやすくして、興味がない人たちを感動させているのが素晴らしい」

ⓒYasutomo Ebisu ⓒYasutomo Ebisu

エルメスのファッションショーでモデルとしてランウェイデビュー:2026年2月に東京で開催されたエルメスの26AWコレクションのリピートショーに出演した角野さん。グレーを基調としたマフラーとカーディガン姿で歩く様子は「モデルよりも堂々としている」と評判だった。ⓒKo Tsuchiya

ⓒKo Tsuchiya 

エルメスのファッションショーでモデルとしてランウェイデビュー
2026年2月に東京で開催されたエルメスの26AWコレクションのリピートショーに出演した角野さん。グレーを基調としたマフラーとカーディガン姿で歩く様子は「モデルよりも堂々としている」と評判だった。ⓒKo Tsuchiya

架け橋となるためにも、つねに角野さんが大切にしているのは、「今の時代を反映すること」。では、角野さんにとっての“今の時代”とはどのような時代なのでしょうか。

「音楽でいえば、音楽を聴く手段がはるかに多様化していることですね。歴史をたどれば、もともとは生演奏だけだったものがレコードが普及し、CDへ。今は、ストリーミングという方法もあり、YouTubeなどメディアを伴った媒体での音楽の楽しみ方もあります。

これは、音楽家とリスナーの関係が一方向から双方向になったということです。音楽に限らない21世紀のエンターテインメントの特徴でもありますね。僕は、その流れにアジャストしていきたい。10代の頃からそんな流れがあったので、自然に楽しんでいるともいえるかもしれませんが」

もう一つ、インターネットのおかげで世界の距離が縮まったことも、今の時代を象徴している現象だと角野さんはいいます。150万人を超える登録者数を持つYouTubeチャンネルで「かてぃん」の名で活動を行う中、学んだことも音楽観に生きているそう。

秋の日本公演ではヘルシンキ・フィルハーモニー管弦楽団との初共演。「シベリウスの交響曲の初演を多数行ってきた由緒ある管弦楽団との共演が楽しみ」(角野さん)

ⓒChris Lee 秋の日本公演ではヘルシンキ・フィルハーモニー管弦楽団との初共演。「シベリウスの交響曲の初演を多数行ってきた由緒ある管弦楽団との共演が楽しみ」(角野さん)

「世界の裏側の人たちから簡単にリアクションをもらえるのは、現代ならではの大きなメリット。コロナ禍でも、YouTubeを通じて世界と繫がれるようになり、能動的に自分の視点を示していきたいと感じるようになりました。そこでクラシックをもとに、ジャズやポップス、即興演奏を織り交ぜた独自の演奏を行ったところ、注目してもらえるようになったのです。

Kアリーナ横浜公演では、真鍋大度さん(ライゾマティクス)プロデュースの音と光が交錯する演出も盛り上がりを見せた。

ⓒRyuya Amao Kアリーナ横浜公演では、真鍋大度さん(ライゾマティクス)プロデュースの音と光が交錯する演出も盛り上がりを見せた。

そして、クラシックに自然に即興を混ぜるスタイルを実際のコンサートで行っても面白がってくれる人が多い。世界がフラットになったことで、自分のアイデンティティは確立されていても、バックグラウンドや環境に依存しない、音楽の普遍的な部分を感じることができるようになってきた人が増えているように感じています。

たくさんの問題を抱えている現代ですが、そうした人々にジャンルや時代をも超えた音楽を届けて、楽しみ感動してもらえるように、これからも邁進したいと思います」

角野隼斗さんへQ&A

Q.アルバムのタイトルにも入っているショパン。初めて感銘を受けたショパンの曲は?
A.「スケルツォ第1番」です。小学生の頃の体験なので、どこまで“感銘”という感情を正しく理解できていたかはわかりませんが、演奏をしている時に、感情が揺れ動かされる、突き動かされる感覚がありました。自分が曲の中へ中へと引き込まれてしまうようななかなかない体験でしたね。

Q.作曲のインスピレーションは、どんなところから得ていますか?
A.まず、音楽に限らず音そのもの。美術、風景と自然、映画と街。本もよく読みます。新幹線での移動中に読むことが多いですね。実は、アルバムのリリースを記念して、3月まで東京・神保町で僕の自宅の本棚を再現した選書が公開されていました。『限りなく透明に近いブルー』(村上 龍著)や、『天文学者たちの江戸時代』(嘉数次人著)などジャンルも幅広いです。

Q.趣味は?
A.昔は、趣味はピアノですと言っていたのですが、今は仕事になりました。最近は、ジムですかね。体力が必要なので。海外のホテルのフィットネスセンターなどを利用することが多いですね。公演前だと、近くのホールかリハーサル室で18時頃まで練習をして、その後、ジムで体力作りというスケジュールを過ごしています。

Q.忙しい中での気晴らしは?
A.銭湯と語学の勉強。今取り組んでいるのは、フランス語と韓国語です。韓国でのリサイタルで、韓国語で話すとみんな喜んでくれます。

Q.猫のコンサートグッズも可愛いですね
A.実家でも飼っていましたし、猫はずっと身近な存在なんです。それもあって、コンサートグッズに猫が登場するものが多いかもしれませんね。

ショパンを中心においたニューアルバム

『CHOPIN ORBIT』

ソニーミュージック
【初回生産限定盤】7700円

【初回生産限定盤】7700円

【通常版】3300円

【通常版】3300円

ショパンの音楽的重力に引かれ、独自の新しい軌道を形成するイメージで制作された。ショパンの作品「雨だれ」「黒鍵」などと、角野さんの新作「ポストリュード雨だれ」「エチュード 白鍵」がペアとなるように収録されている。アナログ盤もリリースされた。

北欧最古の名門・ヘルシンキ・フィルと初共演
ユッカ=ペッカ・サラステ指揮
『ヘルシンキ・フィルハーモニー管弦楽団 with 角野隼斗』

【プログラム】
シベリウス:組曲《ペレアスとメリザンド》作品46より
プロコフィエフ:ピアノ協奏曲第3番 ハ長調 作品26(ピアノ:角野隼斗)
シベリウス:交響曲第2番 ニ長調 作品43

日時:2026年10月13日(火)19時開演 サントリーホール
チケット:S席3万円ほか 
お問い合わせ:テンポプリモ 03(3524)1221

日時:2026年10月18日(日)14時開演 横浜みなとみらいホール
チケット:S席3万円ほか 
お問い合わせ:神奈川芸術協会 045(453)5080

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この記事の掲載号

『家庭画報』2026年06月号

家庭画報 2026年06月号

撮影/宮崎裕介〈SEPT〉 スタイリング/金野春奈〈foo〉 ヘア&メイク/MAIMI 取材・文/小倉理加 写真/Chris Lee Ryuya Amao

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