〔特別インタビュー〕進み続けるピアニスト 角野 隼斗 飛躍の日々と現在地 世界を飛び回り、日々新しい顔を見せてくれる、ピアニストの角野隼斗さん。その快進撃は止まらず、活躍の場を多方面に広げています。圧倒的な観客動員数を誇るコンサートや、今年リリースされたばかりのセカンドアルバムへ込めたメッセージを通して、音楽観を語っていただきました。
角野隼斗(すみの・はやと)1995年千葉県生まれ。2018年ピティナ・ピアノコンペティション特級グランプリ、2020年東京大学総長大賞を受賞し、一躍注目を集める。2021年ショパン国際ピアノコンクールでセミファイナリストに。2025年レナード・バーンスタイン賞を受賞。オーパス・クラシック賞2025では史上初の2部門で受賞。2024年日本武道館で、クラシックピアニストとして史上最多1万3000人動員の単独公演を成功させた。
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幼少期から最も身近な音楽家だったショパン
今回、セカンドアルバムの題材にショパンを選んだ理由を角野さんに尋ねると、こう返ってきました。
2026年6月20日から9月5日まで開催されるドイツ・ラインガウ音楽祭のアーティスト・イン・レジデンスに就任。音楽祭史上初めて、一人のアーティストに焦点を当てる特別な試みだ。期間中、7公演に出演し、ソロ、室内楽、協演など多彩なプログラムを披露する予定になっている。
「ファーストアルバムの『HumanUniverse(ヒューマン・ユニヴァース)』は、多様な作曲家の作品を収録したアルバムでした。そのため、次のアルバムは一人の作曲家に焦点を当てたいなと思っていたんです。
ショパンは、幼い頃から触れてきた、自分にとって距離が近いと思える作曲家。2021年のショパンコンクールに出場するために、かなり集中的に取り組んでいた時期もありました。そのコンクールでセミファイナリストに選ばれた直後は、ショパンとガーシュウィンがテーマの全国ツアーを組んだりもしましたが、しばらくショパンからは離れていました。
4年経って、さまざまな海外経験を経て視点が変化した後に、ショパンに立ち返るよいタイミングだと思ったんです。自分の作品を作るうえで、絶えず意識的にも、無意識的にもインスピレーションの源であるショパン。ここで一旦、ショパンとダイレクトに向き合うのもよいかもしれないと……」


撮影中のスタジオで音楽が流れると、リズムに合わせて踊りだすチャーミングな一面も。世界を精力的に飛び回り、多忙な中でも遊び心を忘れない余裕が感じられる。この、どんなときも楽しむ姿勢が、年齢も性別も国境も超えて愛される音楽が生まれる源にあるようだ。
しかし、ただのショパンの名作集にとどまらないのが角野さんの流儀。タイトルにある“ORBIT”に、アルバムを通して伝えたいメッセージが込められています。
「“ORBIT”は、軌道の意味。ショパンの音楽を核に据え、そこから現代の感覚で即興や再解釈などの軌道を描くというコンセプトです。僕はクラシック音楽を演奏するときも、昔の音楽ではなく、今ここで生まれたようなライブ感、生きている感覚を持って届けたいという気持ちがあります。そのためコンサートも、頻繁にクラシックと自分が作曲した曲も含む今の時代の曲を行ったり来たりするような構成で行うんです。
今回のアルバムに収録した曲の並びに関しても、ショパンの作品に対して僕のアンサーとしての曲を付合させています。それによって、2世紀ほど異なる時代間の対話という意味合いを楽しんでもらえるのではないでしょうか。同時に、クラシック音楽の時代の違いをあまり考えずに、構えずに聴いてもらいたいという意図も含んでいます。
僕のアンサーが全くかけ離れたものでも意味がないし、かといってスタイルに追随しすぎていても意味がない。現代との架け橋になっていて、かつきちんとその橋が見出せるようなものにしたいという思いが、アルバム名にも込められています。クラシックと現代を行き来する音楽の旅を通じて、普段クラシックを聴いている方にも発見があり、なじみが薄い方にも親しみやすくなっていれば嬉しいです」
(次回へ続く。
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