振付家・金森 穣との対話。愛と葛藤が照らす、人間の普遍のかたち
東京バレエ団が創作したオリジナルのグランド・バレエ『かぐや姫』。同バレエ団が振付家・舞踊家の金森 穣氏と2年7か月のクリエイションを経て、2023年10月に全幕を世界共演し、大きな反響を呼びました。そして2026年5月、約2年半ぶりにこの名作が上演されます。
その中で、物語の核を担う存在ともいえる“道児”を演じるのが柄本弾さんです。王子役からヒールまで数多くの役柄を踊ってきた柄本さんにとって、道児とはどのような存在なのでしょうか。創作の舞台裏、役への向き合い方、そして東京文化会館への思いまで、率直に語っていただきました。
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5歳でバレエを始め、30年以上踊り続けてきた柄本さん。フィジカルをキープする秘訣を尋ねると、「セーブすることです」との答え。「手を抜くというのではありません。若い頃は120%の力を出し切るように踊ってきましたが、今は100%の力で踊ることを意識しています。ジャンプであれば、無理に高く跳ぼうとするのではなく、美しいポジションを保ちながら無駄な力みなく跳ぶ。そうすることで浮遊感がある跳躍になり、高さもあるように見せることができます。年齢を重ねるにつれて筋力や体力は落ちていきますから、どう体をコントロールしていくかを常に考えています」
新作の初演で向き合った道児という役
──2023年10月に世界初演となったグランド・バレエ『かぐや姫』で、ファースト・キャストとして主演されました。2021年11月に第1幕を、23年4月に第2幕を上演し、同じ年の10月に全3幕を上演するという稀な制作工程の中で、第1幕を初演したときは正直すべてが手探りでした。それまでも、斎藤友佳理さんが改訂演出・振付された『くるみ割り人形』をはじめ、新作と呼ばれる作品には携わってきましたが、完全にゼロから制作工程に身を置いたのは初めてです。
東京バレエ団には『ザ・カブキ』や『M』といった至宝のオリジナル全幕バレエがありますが、私はその当時を知らないので、非常に貴重な経験をさせていただいたと思っています。特に本作では、金森 穣さんから振り写しをしていただく際、かぐや姫役の秋山 瑛さんと私の動きを見ながら創られていく部分もあったので、本当に特別な時間でした。
*東京バレエ団・団長の斎藤友佳理が、レフ・イワーノフ及びワシーリー・ワイノーネン版に基づき改訂演出・振付を手がけた。「版」とは振付家や演出家が振付や演出を改訂した「改訂版」のこと。『くるみ割り人形』は1892年にマリインスキー劇場で初演され、台本をマリウス・プティパ、振付をレフ・イワーノフ、音楽をピョートル・チャイコフスキーが手がけました。この初演版はイワーノフ版と呼ばれています。
──「道児」という役についてはどうですか。タイトル通り、かぐや姫が主演ではありますが、私の中では“道児の成長物語”という印象が強いです。子どもだった少年がかぐや姫と出会い、恋をして、人を愛することを知る。同時に村と宮廷との争いがあり、喜びや悲しみを経験しながら、ひとりの男性へと成長していく。その心の動きが物語の軸にあると感じましたし、とても演じがいがありました。
──これまで演じてきた役柄と比べて、道児は柄本さんにとってどのような存在ですか?私はストーリー性のある作品が好きですし、自分でお話しするのもおこがましいのですが(笑)、得意なほうだという自負があります。道児は、物語を前に進めるストーリーテラー的な存在。だからこそ、役を“生きる”感覚がひときわ強いのではないかと感じています。ただ、私は役に入り込みすぎてしまうところがあって、たまに穣さんからは「やりすぎ」と指摘されるんです(笑)。自分の中で感情が高ぶって出てしまうんですね。
穣さんが「俺が弾を最高に格好よく見えるように創るから、そこまでやらなくていい」とおっしゃったので、与えていただいた振りを、ただひたすらに忠実に踊ることを心がけました。心は情熱的でありながらも、頭は常に冷静でいられることを大切にしています。
Photo Shoko Matsuhashi
衣裳デザインを手がけたのは、日本を代表する服飾デザイナー・廣川玉枝さん。“第二の皮膚”をコンセプトにした無縫製ニットの「Skin Series」は、2017年ニューヨーク近代美術館(MoMA)に収蔵されたことも話題に。長きにわたり鍛え上げられたダンサーの身体美を際立たせるこの衣裳も見どころのひとつ。

新たなペアで、化学反応を
──今回はどのような道児を演じたいですか。基本的な軸は大きく変わらないと思います。ただ、舞台は生ものなので、リハーサルや本番では想定外の感情がわき上がることも多々あります。前回踊ってからの約2年半、私自身も年齢や経験を重ねてきたぶん、また違う何かを感じるかもしれません。
──足立真里亜さんとのパートナリングも見どころのひとつです。足立さんとは初めて組むのですが、ずっと踊りたいと思っていたダンサーの一人なので、今からすごく楽しみです。彼女はとてもストイックで自分の考えをしっかり持っていますし、私と同じように感情が出るタイプなので、どんな化学反応が起こるのか予測できません。パートナーが変われば、タイミングや重心のかけ方も微妙に変わるので、その機微をどう受け取り、どう支えるかが私の役割だと思っています。ただ、私は一応先輩ですので(笑)、できるだけ彼女をリードし、しっかりとサポートしていきたいですね。
“ホーム”東京文化会館で迎える、改修前最後の舞台
──約3年の長期改修を前に、東京文化会館で踊る最後の舞台になります。東京文化会館は、東京バレエ団の“ホーム”だと思っています。スタジオのサイズも舞台と同じで、日々そこで稽古を重ねてきました。当たり前のように立ってきた場所ですが、改めて考えると特別な存在です。劇場が変われば、空気も光も、客席の奥行きも違います。私は本番前のルーティンを大切にするタイプなので、その“いつも通り”があることは大きな安心材料でした。それがしばらくなくなるのは寂しさもありますが、その変化をどう自身の成長につなげられるかが大事だと思っています。
──最後に、読者へのメッセージをお願いします。この作品は、愛や別れといった普遍的なテーマだけでなく、争いや環境問題など、現代にも通じるメッセージが込められています。でも、決して難しいものではありません。100人いれば100通りの感じ方があっていい。皆様それぞれの感性で、この『かぐや姫』の世界を楽しんでいただけたら嬉しいです。
オフの過ごし方は「ゴルフが好きで、友人たちとコースを回ります。ただ、最近はなかなか時間がないので、実は家でだらだら過ごすことが多いです(笑)」と柄本さん。とはいえ、自身のインスタグラムではプロ並みの腕前の手料理を披露。「趣味といえるほどではないですけど、料理が好きなんです。冷蔵庫にある余りものの食材で作ることが多いですね。お酒を飲みながら、ゆっくりと料理をする時間が至福です」
柄本 弾(つかもと・だん)
京都府京都市出身。5歳よりバレエを始める。2008年に東京バレエ団に入団。10年1月、『ラ・シルフィード』で主役に抜擢。13年にプリンシパルに昇進。『ドン・キホーテ』『ジゼル』などの古典、ベジャール作品ほか数多くの作品で主役を踊る。24年に第36回服部智恵子賞、25年に第75回芸術選奨文化科学大臣賞を受賞。23年からはバレエ・スタッフに就任し、後進の指導にもあたっている。
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東京文化会館 休館前最後の公演!
柄本 弾さんと贅沢なひとときを「かぐや姫」特別鑑賞会
日時2026年5月5日(火・祝)
17時30分 受付開始
18時 開場
18時30分 『かぐや姫』開演
21時10分 『かぐや姫』終演予定
~21時50分 限定カクテルタイム(館内レストラン「フォレステーユ精養軒」)
21時55分 終了
会場東京文化会館(東京都台東区上野公園5-45)
https://www.t-bunka.jp/募集人数20名様
※先着順となります。定員に達し次第、締め切らせていただきますので、何卒ご容赦ください。
参加費2万6000円(税込)
内容・S席(1階19列以内)にて『かぐや姫』を鑑賞
・柄本 弾さん直筆サイン入りプログラムをプレゼント
・公演後、主演・柄本 弾さんとの贅沢なカクテルタイム
※カクテルタイム最後に、柄本 弾さんと握手&写真撮影あり(ご自身のスマートフォン、カメラにて1カットのみ)
応募締め切り2026年3月30日(月)

※応募には、家庭画報ドットコムID会員登録が必要です。
※先着順のため定員に達し次第、締め切らせていただきます。
※ご参加いただくお客様には、家庭画報お客様係より2026年4月8日までにメールにて詳細をご案内いたします。
※日時等、変更になる場合がございます。
●イベントに関するお問い合わせ
家庭画報ドットコム お客様係
E-mail:sid.toiawase@sekaibunka.co.jp