「現在厳選された20曲で国内ツアー中。来年は世界8都市を回る予定です」
パスポートを捨ててから思いもよらぬ展開に
都会的かつ洗練されたサウンドで、耳にしただけで青春時代が甦る世代はもちろん、初めて聴く世代をも虜にしている高中正義さん。日本のロック界・フュージョン界を代表するカリスマギタリスト・作曲家が、現在『高中正義 SUPER TAKANAKA WORLD LIVE 2025-2026』の国内ツアーを開催中です。

「たくさんのアルバムからスタッフが厳選した約20曲を演奏しています。なかでも『MIDO』は、僕が最近とても気に入っているきれいな曲。自分の曲は照れくさいから普段あまり聴かないんですが、何かの拍子に聴いて“地味だけど結構いいじゃん。派手な曲が多い中、1曲ぐらい静かで泣けるのがあってもいいよな”と思って入れました。来年、同じセットリストで世界8都市を回る予定です」
実は、70歳を機に「海外へはさんざん行ったし、時差ボケがつらいからもういいや」と、パスポートを捨ててしまった高中さん。ところがその後、1970年代後半から1980年代に日本で流行したシティポップやAОRが世界的に注目されている近年の音楽シーンを背景に、海外から続々と公演依頼が舞い込み、2025年3月にはロサンゼルスで2日間コンサートを開催。
大盛況となったその模様を収めたブルーレイ『TAKANAKA SUPER LIVE2025 BLACK SHIP in L.A.』からは、インターネットで高中さんの音楽を知ってファンになった、アメリカの若者たちの熱狂が伝わってきます。
「2024年の12月に上海公演をやったときに若いお客さんたちの熱気に触れて、これはロスも大丈夫だなと思ってはいたんですが、それ以上の盛り上がりでしたね。僕の最初のアルバム『SEYCHELLES』は、今から50年前に作ったものなんです。まさか、自分が20代に作ったものを今の20代の若者たちが聴いて、発表から50年後にロスで一緒に盛り上がれるとは。とてもありがたく嬉しいことです」
日々の練習と筋トレが今も変わらぬ演奏を支える
2024年9月号の「軽井沢特集」で初めて家庭画報本誌にご登場いただいた高中さん。「軽井沢の自宅でいい写真を撮ってもらって以来、家庭画報を読むようになりました。魅力的な情報が満載で、料理屋さんに行ったり、スキンケアのクリームを買ったり、いろいろ影響を受けています(笑)」。
ロサンゼルス近郊を襲った激しい山火事が鎮火して1か月ほど経った頃にコンサートを行ったことから、「ロサンゼルスの山々に美しい虹がかかりますように」という英語のМCのあと、コンセプトアルバムの最高峰『虹伝説 THE RAINBOW GOBLINS』収録の1曲とアメリカ合衆国国歌でコンサートを締めくくった高中さん。奇しくも翌日、ロサンゼルスには多くの虹が出たといいます。
「ただ、僕はスタッフと昼から打ち上げをやっていて、虹を見ていないんです。酒盛りをしている場合じゃなかったなと、後から知って思いました(笑)」
そんな新たな“虹伝説”も生み出した72歳。時流の影響も受けつつ、ここまで人気が再燃したのは、街や海、夏の空気や情景が溶け込んだような唯一無二の高中サウンドが、新たなリスナーの心をとらえて離さないからに相違ありません。
「洋楽に憧れて、ビートルズやベンチャーズを真似するところから始まって、何かオリジナル曲を作らなきゃ、自分にしかできない曲をと思って、作曲を始めたのは高校時代。そこから自分で演奏したり、人の演奏に加わったり、スタジオミュージシャンとしてレコーディングに参加したりしていたら、あるピアニストに『高中が弾くと太陽が見えるよ』という嬉しい言葉をもらったんです。当時から何か個性はあったのかなと思います」
「歌のようなギターを弾きたいという思いは、昔からありました」
特に印象的なのは、インストゥルメンタルでありながら、思わず口ずさみたくなるほどキャッチーなメロディ。
「昔から、歌のようなギターを弾きたいとは思っていました。歌うと音程がよくないから、ギターを弾いているところもあるかな(笑)。ホイットニー・ヒューストンみたいに歌えたら、歌ってますよ」
飾らないお人柄も素敵な高中さんはそういって笑いますが、聴く人が言語の壁なく音楽を楽しめるのは、インストゥルメンタルであればこそ。そして何より、珠玉のギタープレイこそが、高中サウンドの真髄。たゆまぬ日々の鍛錬が、今も衰えぬ演奏を支えています。
「以前入っていたスポーツジムで習ったトレーニングを、この時間は腹筋、この時間はダンベルというふうに決めて、もう30年ぐらい家で毎日続けています」