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「この人が出ている作品は面白いと思われる俳優に」鈴木亮平さんが挑む感動作『花まんま』

2025.05.22

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今月の人 鈴木亮平さん

「どうしても自分が演じた役の目線で試写を観てしまうので、一般のお客様とは違う見方だったとは思いますが、それでもすごく心を動かされました」

そう話すのは、主演映画『花まんま』が絶賛公開中の鈴木亮平さん。朱川湊人さんの直木賞受賞作が原作の本作品で、亡くなった両親に代わって妹のフミ子(有村架純さん)を育ててきた、真っすぐで情に厚い兄・加藤俊樹を演じています。

物語の舞台は、長年映画化を望んでいた前田 哲監督の出身地でもある大阪。フミ子の“不思議な記憶”を軸に、家族のつながりや下町の人情を描き出す、ファンタスティックで愛に溢れた感動作です。

あまりやったことがなかった王道のヒューマンストーリーです

「こういう王道なヒューマンストーリーは、これまであまりやったことがなかったので、自分にとっては結構挑戦でした。下町感はあるけれども、コテコテにはしたくなかったし、俊樹を現代に生きる30代の兄やんにしたかったので、あえて準備はあまりしませんでした。言葉の違いは若干あるものの、僕は兵庫県西宮の出身で、関西人のノリはよくわかる。そんな自分の関西人気質を、そのまま出していこうかなと思いまして」


とはいえ、そこは常々「人物の核となる部分を摑んでから撮影に入る」ことを大切にしている鈴木さん。

ジャケット、シャツ、パンツ/ユーゲン(イデアス)

今回も撮影前に台本を読み込み、俊樹の言動の根っこには“褒めてほしい”気持ちがあることに気づいたそうです。

「もちろん妹のことは可愛いし、幸せになってほしいと心から願っているんですが、“俺はすべてを犠牲にして妹を守ってきたんや”というのも俊樹の本心。それをあえて自分から周りにいうのが関西人であり、そこには“俺、デキる男やろ?みんな褒めてや”という気持ちがあったと思うんです。だからこそ“自分以外の人物”がフミ子の心の支えになっていたことがショックで、受け入れられないんだなと」

フミ子のために奔走する俊樹。

自身の思いも反映された感動のスピーチ

というのも、フミ子には幼少の頃から別の女性の記憶があり、フミ子の結婚が決まったことを機に、その女性の家族の存在が浮かび上がってくるのです。俊樹はそれが許せず、フミ子と仲違いをしたまま、結婚式当日を迎えます。

そんな俊樹が披露宴でスピーチをする場面は、本作品の大きな見どころの一つ。鈴木さんも一緒に、スピーチの内容を考えたといいます。

「脚本を読んだときに、ちょっとキレイすぎるスピーチだな、俊樹だったら、どんなにしんみりしそうになっても笑いは取るだろうなと思ったんです。それを監督とプロデューサーにお伝えしたら『鈴木さんが現場で俊樹として感じたことを、反映しながら作っていきましょう』といってくださって。僕としては、役者やスタッフや作品への愛と厳しさがありつつも、現場では冗談しかいわない監督の雰囲気も出せたらなと思いましたし、大阪出身の父のこともイメージしました。父は残念ながら、僕の妹の結婚式には立ち会えなかったんですが、きっと父だったらこんなことをいっただろうなと。俊樹渾身のスピーチになったと思っています」

「僕も30歳ぐらいから、季節ごとに咲く花に心惹かれるようになりました」

ちなみに作中に登場する“花まんま”は、花をご飯などに見立てた、ままごと遊びのお弁当のこと。ツツジをはじめとする花々が印象的に使われているところも、本作品の魅力の一つです。

「いいですよね、花って。若い頃は人が作ったものに興味があった僕も、30歳ぐらいから、季節ごとに咲く花に心惹かれるようになりました」と鈴木さん。「その頃から世界を見る目が変わってきた気がしますね。いまだに都市や建築も大好きですが、同じくらい自然の美しさや季節の移ろいにも感動する。それが大人になっていくということなのかなと感じています」。

ツツジは俊樹とフミ子の子ども時代と現代に登場し、作中で大きな役割を果たす。

旅によって自分を知り、さらに視野が広がる

2025年現在42歳。その優れた感性と、英検1級、世界遺産検定1級の実力を生かし、ドキュメンタリー番組のナビゲーターなどでも活躍している鈴木さんは、自身が旅に惹かれる理由を、こんなふうに話します。

「旅先で違う国の文化や歴史に触れると、自分が今いる場所や、日本人として生まれ育った自分がどういう文脈の中にいるのかが見えてきて、今世界で起こっていることや自分が考えていることを、より幅広い視点で捉えられるようになる。旅のきっかけは、遺跡を見たいとか、人と出会いたいとか、その土地のものを食べてみたいといったことでも、結局のところ、そういう部分に魅せられている気がします」

最近訪れた旅先で最も印象深いのは、エジプトだという鈴木さん。「メジャーな観光地で、昔はあまり興味がなかったんですが、遺跡のクオリティの高さと知られざる謎の数々に感動しました。プライベート旅行だったのに、この素晴らしさを伝えなければという使命感に駆られて、SNSにたくさんアップしてしまいました(笑)」。

徹底した役作りでも知られる彼は、もちろん俳優としても大活躍。いまや日本を代表する俳優の一人といっても過言ではありません。

2024年は北条 司さんの漫画を原作とした配信映画『シティーハンター』で、念願だった主人公の冴羽 獠を演じ、国内のみならず海外でも高い評価を得ました。

「まだまだ夢はたくさんあります。たとえば『シティーハンター』にしても、今回やらせていただいたのは“エピソード0”的な物語なので、僕が愛読していたもっと時間が進んだところのエピソードを、お届けしたいという気持ちがありますね」

「この人が出ている作品は面白いと思われるような俳優になりたいですね」

そんな鈴木さんに理想の俳優像を尋ねると、「この人が出ている作品は面白いと思われる俳優」とのこと。

「僕が目指しているのは、いってみれば“強い俳優”です。強いといっても、力強いとか、熱量があるといったことではなく、あの俳優が出ているなら観に行きたい、あの俳優が出ているからには面白いに違いないと思ってもらえるような強さ。そういう強さを持った存在に、なっていきたいですね」


鈴木亮平(すずき・りょうへい)
1983年兵庫県生まれ。2007年『椿三十郎』で映画デビュー。NHK大河ドラマ『西郷どん』、TBS日曜劇場『下剋上球児』、映画『エゴイスト』『シティーハンター』、舞台『広島ジャンゴ2022』など数々の作品で活躍。主演を務める劇場版『TOKYO MER~走る緊急救命室~南海ミッション』が2025年8月1日に公開予定。

映画『花まんま』

朱川湊人の短編小説のその後を描いた、『そして、バトンは渡された』の前田 哲監督作品。早くに両親を亡くし、大阪の下町で二人で暮らす兄・俊樹(鈴木亮平)と妹・フミ子(有村架純)。フミ子の結婚が決まり肩の荷が下りるかと思いきや、遠い昔に封印したはずのフミ子の“秘密”が甦り……。

全国公開中 配給/東映
原作/朱川湊人『花まんま』(文春文庫) 
監督/前田 哲 脚本/北 敬太
出演/鈴木亮平 有村架純
URL:https://hanamanma.com/

この記事の掲載号

『家庭画報』2025年06月号

家庭画報 2025年06月号

撮影/猪俣晃一朗 スタイリング/丸山 晃 ヘア&メイク/Kaco〈ADDICT_CASE〉 取材・文/岡﨑 香

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