〔特集〕価値ある作品で人生を豊かに 「アートのある暮らし」 かつては投資の対象として語られることも多かったアート。今や資産性にとどまらず、日々の暮らしを豊かに彩る存在へと広がっています。お気に入りの作品を迎えた住まいから、注目のアーティスト、飾り方まで、美術館だけではない、日常に息づくアートの魅力をお届けします。
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アートの専門家に聞く
アートの選び方、楽しみ方
UESHIMA MUSEUM 館長
植島幹九郎さん
(1)アーティストの発掘方法、作品の見極め方できる限り多くの作品に触れ、自分の目で見続けることを大切にしています。コレクションを本格的に始めた当初は特に、ニューヨークやパリなどのアートフェアや国内の芸術祭にも足を運び、国内外のオークションも常にチェックしていました。興味を持ったアーティストについては、作品の情報はもちろん、展覧会履歴や、オークション履歴なども継続的に情報収集しています。
(2)作品を見る際のポイント第一印象で惹かれるかどうか、近くで見たときに細部や素材からエネルギーを感じられるか、そして何度も繰り返し見たいと思える作品かどうかを大切にしています。また、作品の背景や制作意図に触れたときに、コンセプトや表現方法などから、驚きや衝撃を感じられる作品をコレクションしています。
(3)アート作品の飾り方、楽しみ方特に自宅のリビングなど日常的に過ごす空間に飾る作品は、ふとした瞬間、目に入ってきたときに落ち着くものを選ぶようにしています。アートを飾る意義は、作品が持つストーリーに没入することにもあると思います。映画の世界に感情移入することと近いかもしれません。現代では、ほとんどの情報が画面を通してデジタルで入ってくるからこそ、実際に物理的に存在するアートと向き合うことで思考が切り替わり、新しい発想が生まれるきっかけにもなります。
(4)アートを購入する魅力、醍醐味アーティストから直接話を伺えることも、現代アートをコレクションする醍醐味の一つです。ご自身のバックグラウンドや創作環境、作品への想いに触れる時間は非常に刺激的です。
(5)おすすめの作家今津 景、アリシア・クワデ
植島さん「作品全体も美しいですが、細部まで多彩な表現がちりばめられていて見応えがあります」
今津 景 Kei Imazu (1980~)
《Drowsiness》2022キャンバスに油彩 194×162センチ
Courtesy of the artist and ANOMALY, UESHIMA MUSEUM COLLECTION 画像転載不可
GMO インターネットグループ 代表
熊谷正寿さん
(1)アーティストの発掘方法、作品の見極め方美術館などはもちろんですが、アートに限らず、建築、家具、⽇⽤品でも「美しいもの」に意識的に接する時間を設けています。そういった中で、理屈ではなく本能、直感で「好きか嫌いか」を判断しています。
(2)作品を見る際のポイントアートを選ぶときと同様、理屈ではなくそのときに感じたことを⼤切にしています。美しいものに触れ、本物を感じることで、感性が磨かれます。
(3)アート作品の飾り方、楽しみ方⾃宅は、書斎、リビング、それぞれライフスタイルに合ったものを、整然と並べています。24時間いつでも作品を楽しめ、美しいものに囲まれていることが最⼤の喜びです。またオフィスでは、パートナー(従業員)に常に本物に触れてもらい、感性を磨いてもらえるように「GMO Gallery」と命名し、ジュリアン・オピーの作品を常設展⽰しています。「インターネットの時代は感性の時代」。こういった刺激はとても重要だと考えています。
(4)アートを購入する魅力、醍醐味アーティストは、作品を通じて⾃らの思いや考えを表現します。⼀⽅ で、アートをコレクションすることは、単に作品を購⼊することとはまったく異なります。コレクターは、アーティストの思いや表現に共鳴し、どの作品を選び、集め、どのように展⽰するかを通じて、⾃らの考えやメッセージを社会に伝えていく存在だと考えています。つまり、コレクターは単なる所有者ではなく、キュレーターのような役割を担うべき存在です。そこにこそ、アートをコレクションする本当の意味があると思っています。
(5)おすすめの作家ジュリアン・オピー
アート・オフィス・シオバラ 代表
塩原将志さん
(1)アーティストの発掘方法、作品の見極め方情報収集と、実際に作品の前に立ち体験することが絶対に必要です。私も一年のうち3分の2ほどは、画廊、アートフェア、美術館、国際アートイベントなどを訪れています。また、作品を買う判断基準ですが、「これはよいと思う先にある、残るという感覚」「作品が歴史化されるための、美術史(アカデミック)における位置づけ」も大切にしています。ファインアート(純粋に美を追求する美術)において、アカデミックな評価とマーケットでの評価(価格)は完全に一致している訳ではありませんが、密接に関係していると思います。
(2)作品を見る際のポイント「How」の奥にある「Why」にも目を向けることです。個人の関心や心理状態が影響して、情報の認知に偏りや抜け落ちが生じる場合もあるので、少しでも気になったら作品を何度も見ることをおすすめします。また、「売りたい作品」ではなく、「買いたい作品」を入手することも大切です。
(3)アート作品の飾り方、楽しみ方自宅ではそのときの気分や、気になるテーマ(論題)、主題によって展示作品を替えています。できるだけ多くの作品を展示しますが、一つ一つの作品に集中でき、ごちゃごちゃに見えないための作品配置を心がけています。
(4)アートを購入する魅力、醍醐味アートはいわば「社会の合鍵」です。国や地域、人種、宗教、言語、階級すらも超えられるコミュニケーションツールだと思います。また自身の好奇心や探究心、知識欲、所有する喜び、他者と共感する楽しみを満たしてくれるものだと思います。
(5)おすすめの作家ヴィック・ムニーズ、ジャナイナ・チェッペ、イケムラレイコ、ザネレ・ムホリ
塩原さん「素材とイメージの関係を探求し、意図的に人間の視覚的理解と認識を混乱させる領域を生み出す芸術家」
ヴィック・ムニーズ Vik Muniz (1961~)
《Mona Lisa, after Leonardo da Vinci from Gordian Puzzles》2009 クロモジェニック・プリント 151.4×101.6センチ
UESHIMA MUSEUM COLLECTION 画像転載不可
三重県津市生まれ。ヨーロッパを拠点に、絵画やドローイング、彫刻など、さまざまな分野の作品を手がける芸術家。
イケムラレイコ Leiko Ikemura
《Pink Hair Ⅱ》2019 ジュートにテンペラと油彩 130×95センチ
Courtesy the artist © Leiko Ikemura Photograph by: Jörg von Bruchhausen 画像転載不可
The Third Gallery Aya オーナー
綾 智佳さん
(1)アーティストの発掘方法、作品の見極め方アートフェアや普段行かない美術館に行くと、普段見ることのないアート作品に触れることができます。思いがけない作品に出会うことは、とても楽しいことです。
(2)作品を見る際のポイント写真作品を取り扱うことが多いのですが、写真の場合は1点ではなく、複数の作品の組み合わせでストーリーが存在したりします。また、現代美術作品は空間自体を体感するような展示もあります。一見するとわからない作品もヒントがあればとてもおもしろくなるので、ギャラリーのスタッフの方に作品のコンセプトを聞いてみたり、展覧会のカタログを読んでみたりすることもおすすめです。
(3)アート作品の飾り方、楽しみ方作品1点だけではなく、複数の作家の違うタイプの作品を組み合わせて楽しんでいます。
(4)アートを購入する魅力、醍醐味アートは、慌ただしい日常の中に異なる空間と時間をもたらしてくれると思います。かつて日本では、床の間がその場所だったと思います。床の間のある家は減ってしまったと思いますが、アートとともにそれに変わる場所をつくっていただくと生活が豊かになると思います。
(5)おすすめの作家石内 都
メキシコの女性画家、フリーダ・カーロの遺品を撮影したシリーズ。
石内 都 Miyako Ishiuchi (1947~)
《Frida by Ishiuchi #15》2012 クロモジェニック・プリント 112.5×76センチ
Courtesy of The Third Gallery Aya 画像転載不可
(次回へ続く。
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