〔特集〕価値ある作品で人生を豊かに 「アートのある暮らし」 かつては投資の対象として語られることも多かったアート。今や資産性にとどまらず、日々の暮らしを豊かに彩る存在へと広がっています。お気に入りの作品を迎えた住まいから、注目のアーティスト、飾り方まで、美術館だけではない、日常に息づくアートの魅力をお届けします。
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今、購入するべき
世界が認めた アーティスト探訪
自己模倣はつまらない。新境地を日々模索
五木田智央(1969〜)
「描いては失敗し、また描く。その先に正解が見えてくる」──五木田さん
《Playing Possum》(2026)油彩、キャンバス 181.8×227.5センチ
五木田智央(ごきた・ともお)東京都生まれ。「タカ・イシイギャラリー」所属。イラストレーションから出発し、2000年代以降、キャンバスにアクリルガッシュで描くモノクロームの人物画を中心に制作。ニューヨーク、ロサンゼルス、ベルリンなどでも作品を発表し、高い評価を受ける。近年は、カラーの絵画作品にも力を入れている。
2000年代半ばに世界デビューし、それから10年という短期間で現代アートシーンの中心に躍り出た五木田智央さん。その劇的な成功を本人は「まったく予測してなかった」と飄々と語ります。
20歳からイラストレーターとして活動を開始し、専門雑誌で特集されるなど売れっ子になりました。しかし「クライアントの意向のとおりに絵を描くのがしんどくなって」(五木田さん)。画家として身を立てると一念発起し、2000年に初の作品集『ランジェリー・レスリング』を発表。それが思わぬ転機を呼び込みました。
「本にあるドローイングを見たアメリカのキュレーターがニューヨークの小規模なグループ展に誘ってくれたんです。2005年のことでした。オープニングには大変な数の人が来て、なんと翌週の『ニューヨーク・タイムズ』に僕の作品が大きく取り上げられたのです」。
《New Sad》(2014) アクリルガッシュ、キャンバス 80.3×80.3センチ
五木田ワールドを象徴するモノクロームの人物画。シャープなグラデーションにどこか陰鬱としたムードが漂う。「DIC川村記念美術館」で2014年に開催された個展『THE GREAT CIRCUS』のメインビジュアルを飾った。
© Tomoo Gokita Courtesy of Taka Ishii Gallery Photo: Kenji Takahashi
以降、世界各国で次々と個展を開催。2014年には、あのバスキアを見出した伝説的ギャラリスト、メアリー・ブーンのギャラリーで個展を開き、トップアーティストとしての地位を不動のものにしました。
制作は、描いては失敗し、また描き、という格闘の連続。五木田さんの代名詞といえるモノクロームの人物画は、最初のグループ展の後、個展に向けた新作を模索する中で見出したスタイルでした。モチーフの参照元は、愛好する1950年~1960年代の古雑誌の写真やハリウッドのポートレートなど。「見た人からよく『懐かしい感じがする』という声を聞く。元ネタの存在が作品の普遍性に繫がっているのかも」。
《Late Marriage》(2020)アクリル、パステル、キャンバス 259.4×194センチ
2020年に「タカ・イシイギャラリー」で行われた個展『MOO』にて日本初公開された、新境地といえるカラーペインティング作品。溶け合うように寄り添う二人の人物と淡い色彩がノスタルジーを刺激する。
© Tomoo Gokita Courtesy of Taka Ishii Gallery Photo: Kenji Takahashi
2020年からは長らくのモノクロ表現から脱却し、カラー作品へと舵を切りました。「どこか予定調和で描けてしまうのが退屈に感じて。“再デビュー戦”の気持ちで、日々描き、もがく。それが僕のスタイルです」。
2026年夏に開催した個展「Lush Life」(タカ・イシイギャラリー)にて。「学生時代に専攻していた油彩画に回帰。最初は感覚が戻らず手探り。それもまた楽しい」。
(次回へ続く。
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