今月のアート
ナビゲーター・宮島綾子さん(国立新美術館 主任研究員)
レオナルドの傑作が日本初公開
ルーヴルが贈る珠玉のルネサンス展
レオナルド・ダ・ヴィンチ《女性の肖像》、誤って付された別称《美しきフェロニエール》1490‒1497年頃 パリ、ルーヴル美術館 ⓒ GrandPalaisRmn(musée du Louvre)/Michel Urtado
これまで来日したことのない、レオナルド・ダ・ヴィンチの名画が日本にやってきます。担当学芸員の国立新美術館宮島綾子主任研究員にお話を伺います。
まずは、初来日する《女性の肖像》はどのような作品なのでしょうか。「レオナルド・ダ・ヴィンチの現存する絵画作品約15点のうち、ルーヴル美術館は最多の5点を所蔵しています。本作はそのうちの一点で、フランスでは広く知られ、ルーヴル美術館で常に展示されるべき重要な作品とみなされています。そのため、作品の移動は極めて困難であり、今回の来日は例外的ですが、ルーヴル美術館と日本との信頼関係のもと、特別に出展が実現しました」
本作と《モナ・リザ》との関連性について教えてください。「本作の完成から5〜6年後に《モナ・リザ》に着手したとされています。まずは、当時のイタリアの肖像画で一般的だった横顔ではなく、四分の三正面観を採用している点。頭を、ほんのわずかに体とは逆方向に向けています。この微細なひねりによって動きの感覚が生まれています。また、どこを見ているのかわからない瞳の描き方により、人間の複雑な心を描こうと試みたと考えられます。こうした観点から、《モナ・リザ》のいわば前身として位置付けられています」
本作は、かつて《美しきフェロニエール》と呼ばれていたそうですが、その経緯とはどのようなものですか?「本作はフランス王家のコレクションに属していましたが、その中に、19世紀までレオナルドの作品と見なされていた横顔の女性の別の肖像画があり、《美しきフェロニエール》と呼ばれていました。フランス革命後、この2作がルーヴル美術館に移管された18世紀末に混同され、本作が次第に《美しきフェロニエール》と呼ばれるようになったのです。本展では、その“もう一つのフェロニエール”も展示しますので、併せてご鑑賞ください」
ロンバルディアの画家《女性の肖像》、通称《美しきフェロニエール》1500 ‒1512年頃 パリ、ルーヴル美術館 Photo ⓒ GrandPalaisRmn(musée du Louvre)/Franck Raux /distributed by AMF-DNPartcom
そのほかに見どころはありますか?「ルネサンスでは油彩技法の発明に加え、版画芸術でも技術革新が生じました。デューラーによる《サイ》は、サイを見た人の記述とスケッチだけを頼りに創出された作品ですが、本物のサイの外見が周知される18世紀半ばまで、博物学の書物に繰り返し転用されています。このような版画作品を含めて本展をご覧いただくことで、ヨーロッパ全域で隆興した“ルネサンス”という時代を俯瞰して捉えていただくことができるでしょう」
アルブレヒト・デューラー《サイ》1515年(初版) パリ、ルーヴル美術館 Photo ⓒ GrandPalaisRmn(musée du Louvre)/Michel Urtado /distributed by AMF-DNPartcom
『ルーヴル美術館展 ルネサンス』
2026年9月9日(水)~2026年12月13日(日)
国立新美術館 企画展示室1E
一般2400円ほか(当日券あり)
TEL:050-5541-8600(ハローダイヤル)
休館日:毎週火曜休館
※2026年9月22日(火・祝)、11月3日(火・祝)、12月8日(火)は開館、11月4日(水)は休館。
URL:
https://www.nact.jp/exhibition_special/2026/louvre2026/