歴史上最もファッショナブルな王妃と称されるマリー・アントワネット。その装いや暮らし、関連したアートなどを紹介する展覧会『マリー・アントワネット・スタイル』が横浜美術館にて開催中です。ここではフランス革命のきっかけともなった「首飾り事件」のネックレスの一部と伝わるダイヤモンドにフォーカス。家庭画報.com読者限定のチケットプレゼントもお見逃しなく!
王妃の運命を変えたダイヤモンドが初来日
アレクサンドル・デュマの小説や、ハリウッド映画、そしてあの『ベルばら』にも描かれた伝説のダイヤモンドネックレス。「首飾り事件」と呼ばれる出来事を聞いたことがある人も少なくないはず。ロンドンのヴィクトリア&アルバート博物館が企画した世界巡回展。日本では唯一、横浜美術館で開催中の『マリー・アントワネット・スタイル』には、この事件の首飾りの一部とされる、通称「サザーランド・ダイヤモンド」が展示されており、大きな話題になっています。
「首飾り事件」とは、高価なダイヤモンドネックレスをめぐる稀代の詐欺事件。本展は、時代を超えて人々を魅了し続ける王妃マリー・アントワネットの「スタイル」に迫る展覧会ですが、興味深いことに、王妃自身はこの首飾りを身に着けることは決してなかったのです。
「コートドレスのマリー・アントワネット」 フランソワ=ユベール・ドルーエ 1773年 油彩、カンヴァス 63.5×52cm ヴィクトリア&アルバート博物館蔵 © Victoria and Albert Museum, London
ネックレスを仕立てたのはパリの宝石商ベーマーとバッサンジュ。彼らはアントワネットの義父にあたるルイ15世から、愛妾デュ・バリー夫人のための豪奢なネックレスを注文されました。1772年のことでした。
18世紀当時、ダイヤモンドは現在のように豊富には採れず、インドが世界唯一の産出国でした。今とは比べものにならないくらい、ダイヤモンドは希少だったのです。ベーマーとバッサンジュはあらゆるつてを使って必死で大粒のダイヤモンドを集めたことでしょう。
ところが2年後、ルイ15世は天然痘にかかって崩御。647石のダイヤモンドをあしらったベーマーとバッサンジュのネックレスは受け取り手をなくしてしまったのです。200万リーヴルもの途方もなく巨額な代金を受け取れず、破滅は彼らの目前に迫っていました。
「首飾り事件」のネックレスを描いた版画。1780年代にニコラ・アントワーヌ・タウネーが刊行。メトロポリタンミュージアム所蔵 ©The Met, NY ※本展の展示作品ではありません
なんとかネックレスを売却しようと奔走するベーマーとバッサンジュは、マリー・アントワネットにすがります。けれど王妃は購入を断り、ルイ16世も支払いを拒みました。絶望する宝石商たちを陰謀に巻き込んだのが、アンリ2世の末裔の伯爵夫人を自称するジャンヌ・ド・ラ・モットです。
ジャンヌは失脚した貴族のロアン枢機卿をだまし、金を引き出していました。アントワネットに似た女を偽の王妃に仕立て、枢機卿と密会させて、自分が王妃の親友であると信じ込ませたのです。
そしてジャンヌは枢機卿にささやきました。王妃はネックレスに関心を寄せており、秘密裏に購入したいので、あなたに買い取りの手続きを代行してもらうことを望んでいる、と。
王妃に近づいて権力を得たいあまりに、うかつにも仲介を引き受けたロアン枢機卿。ジャンヌが偽造した王妃の怪しげなサイン入り購入書類が交わされた後、輝くネックレスは宝石商からロアン枢機卿へ、そして王妃の使者に扮したジャンヌの仲間に手渡され、そのまま闇に消えたのです。
通称「サザーランド・ダイヤモンド」 オリジナルのネックレス:フランス製 1780年代に加工 プラチナ、ダイヤモンド、金、銀 長さ35.8cm、8cm、8.1cm ヴィクトリア&アルバート博物館蔵 ©Victoria and Albert Museum, London
ベーマーとバッサンジュがネックレスの支払いを王妃に催促したことで、詐欺は発覚しました。そのときにはもう、ジャンヌ一味はネックレスをばらばらに分解してパリとロンドンで売りさばいていました。
ダイヤモンドは英国に渡り、公爵家の家宝に
今回展示されている通称「サザーランド・ダイヤモンド」は、そのとき売られたネックレスの一部である可能性が非常に高いとされる逸品。当時フランス駐在の英国大使だったゴア伯爵(後の初代サザーランド公爵)が妻のために購入したと伝わります。
リヴィエールと呼ばれるシンプルなデザインのこのネックレスは、最大約15カラットあるオールドマインカットダイヤモンドが連なっています。インドのゴルコンダ産と思われる、透明度に優れた最高級のダイヤモンドは、まさに王家にふさわしい品質。ヴィクトリア女王からジョージ6世の時代まで約100年にわたって形を変えながら、歴代のサザーランド公爵夫人が君主の戴冠式の際に身に着けました。
ゆかりの品々に見るアントワネットの美意識

「ブレスレットの留具」 フランス製 1770年頃 ダイヤモンド、青の鉛ガラス(人工宝石)、金 各H.3.9×3×1.4cm ヴィクトリア&アルバート博物館蔵 ©Victoria and Albert Museum, London
本展には、マリー・アントワネットの時代を物語る品々がさまざまに展示されています。そのうちのひとつである「ブレスレットの留具」は、片方にイニシャルのモノグラム、もう片方に鳩や、婚姻の神ヒュメナイオスを示すたいまつが描かれています。宝飾史家ジョーン・エヴァンズが「上品な──そして高価な──シンプリシティの精神」と著作『ジュエリーの歴史』で評した作品です。
そう、王妃の趣味は甘く優雅、軽やかに洗練されていて、決して派手ではありませんでした。元はといえば国王の愛妾のために作られた「首飾り事件」の絢爛豪華なネックレスは、彼女の好みではなかったことがわかります。
けれどスキャンダラスな詐欺事件のおかげで、アントワネットに非はないにも関わらず、その威信は地に落ちて、王室に対する民衆の不信は募るばかりでした。
「マリー・アントワネット旧蔵の天然真珠とダイヤモンドの3連ネックレス」フランス製 18世紀後半 天然真珠、金、ダイヤモンド 各連の長さ38.5cm、41cm、43cm ハイディ・ホルテン・コレクション、ウィーン
Photo courtesy of Sotheby’s
王妃が所有した「マリー・アントワネット旧蔵の天然真珠とダイヤモンドの3連ネックレス」も、日本初公開。この時代に養殖真珠はありませんから、119粒の真珠はすべて希少極まりない天然真珠です。
革命の火の手が広がり、ヴェルサイユから逃亡する決死の旅に出る前に、アントワネットは本作を含む高価なジュエリーを密かに故国オーストリアに運ばせました。しかし王妃は国境を越えることはできず、この真珠を再び手に取ることはありませんでした。
本展では、カール・ラガーフェルドが「首飾り事件」のネックレスにオマージュを捧げた「シャネル」のコスチュームジュエリーも紹介。マリー・アントワネットの時代を21世紀の今にまでつなぐ展示は、必見です。
『マリー・アントワネット・スタイル』会期:2026年8月1日〜11月23日
会場:横浜美術館
開館時間:10時〜18時(11月21日、22日は20時まで)※入館は閉館の30分前まで
休館日:木曜日 ※8月13日、9月24日、11月19日は開館
お問い合わせ:050-5541-8600(ハローダイヤル)
公式ホームページ:
https://www.marie2026.jp
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応募締め切り:2026年8月27日(木)
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