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那智大瀧 誌上ギャラリー 勇壮な姿を絵画に落とし込む 川又聡/八木幾朗/榎 俊幸

2026.04.30

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〔特集〕国宝「那智瀧図(なちのたきず)」の謎を追って 那智瀧(なちのたき)を描く 【11人の画家による誌上競作展】 この4月、現代の11人の画家が描く「那智瀧」の展覧会が開かれた。開催地はまさに那智瀧をご神体とする熊野那智大社。神社として初の美術展となるだけでなく、絵のジャンルを超えて画家たちが自発的に開催する展覧会であることも注目される。那智瀧を描いた絵といえば、鎌倉時代の超名品、国宝「那智瀧図」。何かと謎が多く圧倒的な存在感を放つこの作品と対峙しつつ那智瀧に挑む画家たちの思いに迫った。

国宝「那智瀧図」(なちのたきず)鎌倉時代 13~14世紀 作者不詳 絹本着色一幅 縦160.7センチ 横58.8センチ 根津美術館蔵
日本の神は仏の仮の姿であるという「本地垂迹説(ほんじすいじゃくせつ)」に基づく垂迹画とされる。普通、垂迹画では神社や神々を描くのだが、この「那智瀧図」では熊野那智大社のご神体である「飛瀧(ひろう)権現=瀧」のみを茶色の顔料、墨、金泥などで描いている。表現法としては北宋時代末期の山水画と日本の大和絵の融合。フランスの作家、アンドレ・マルローは、1958年に根津美術館で見たこの絵に衝撃を受ける。絵に「空に向かってそそり立つ白い剣」を見出し、「この掛け軸は絵ではない。(中略)一つの記号である」と述べた(ミシェル・テマン著阪田由美子訳『アンドレ・マルローの日本』TBSブリタニカ刊)。そして晩年、実際の那智瀧を訪れた後には、那智瀧の精神は「下にいる人間と上にある空との対話だ」と語っている(同)。

特集「那智の瀧を描く」の記事一覧はこちら>>>

画家の感性で見て表現した瀧の姿
那智大瀧 誌上ギャラリー

六曲一双屛風、インスタレーションなど、表現方法はさまざま。シンプルゆえに難題ともいえるモティーフ「那智瀧」と対峙し、画家たちは何を感じたのか。各々の創造力と感性が描き出した傑作を作家のコメントとともに。

川又 聡

周囲の空間や広がりも感じられる観音開きの屛風形式に

「那智大瀧」和紙、墨、岩絵具

「那智大瀧」和紙、墨、岩絵具

瀧の高さはもちろん壮観ですが、特に心を惹かれたのは瀧を包み込むように存在する岩の岩肌でした。重厚な岩の存在により白く流れ落ちる水の動きがより際立ち、瀧が持つ迫力や神聖さが強く感じられるのではないかと思います。

川又 聡(かわまた・さとし)
1978年神奈川県生まれ。2010年東京藝術大学大学院美術研究科博士後期課程美術専攻日本画研究領域修了。生命力溢れる野生の動物や鳥類を鋭い筆致で描写する。

八木幾朗
大胆な横構図。どちらが天でどちらが地なのか

「神の瀧 那智」雲肌麻紙、墨、胡粉、プラチナ箔、金箔、金泥

「神の瀧 那智」雲肌麻紙、墨、胡粉、プラチナ箔、金箔、金泥

瀧を下から見上げると、どちらが天空なのか地なのかわからなくなる。降り注ぐ瀧をいくつか描いた後、思い切って横構図に決定した。墨の作品は若い時は上手く描かせてはくれなかった。人生を経験しやっと描けるようになるのかもしれない。

八木幾朗(やぎ・いくろう)
1955年静岡県生まれ、1982年多摩美術大学大学院日本画修了。1991年文化庁芸術家在外研修員。日本画の伝統と未知の表現の融合を墨彩、岩絵の具、コラージュ、彫刻など多彩な技法で試みている。

榎 俊幸
滝壺の石を配した作品と瀧のコラボレーション

「みちびき」キャンバス地にアクリル絵の具

「みちびき」キャンバス地にアクリル絵の具

那智勝浦に行って思ったのは“瀧と海が分かちがたく一体である”ということ。垂直方向のベクトルを持つ瀧と水平方向に広がる海と、異なる空間軸を同一平面に描けないか? 掛け軸と絵巻物、2つの絵画形式を組み合わせました。

榎 俊幸(えのき・としゆき)
1961年東京都生まれ。1988年東京藝術大学大学院修了。1989年同大学研究生修了。2001〜2004年同大学非常勤講師。空想獣などをモティーフに謎めいた幻想世界を描く。現在日本美術家連盟会員。

那智大社境内で鑑賞する『那智大瀧展』

●東京展
会期:2026年5月16日〜29日
会場:靖山画廊(東京都中央区銀座5-14-16 銀座アビタシオン1階)

●鎌倉展
会期:2026年5月24日〜6月7日
会場:Gallery 蘇処(神奈川県鎌倉市長谷1-11-43)
お問い合わせ:那智大瀧展実行委員会
電話:03(3546)7356

画家たちが集まって熊野那智大社に取材兼会場の下見に行った際の写真。男成洋三宮司を囲んで。

画家たちが集まって熊野那智大社に取材兼会場の下見に行った際の写真。男成洋三宮司を囲んで。

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この記事の掲載号

『家庭画報』2026年05月号

家庭画報 2026年05月号

撮影/本誌・大見謝星斗 編集・取材・文/三宅 暁

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