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自然の中に身を置いた画家クロード・モネ。オルセー美術館主任学芸員が語る「モネの眼差し」

2026.03.24

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〔特集〕没後100年特別取材 クロード・モネ 睡蓮に至る道 クロード・モネが、ジヴェルニーの自宅で86年間の生涯を閉じてから、今年で100年。この記念すべき年は、現在開催中の東京・アーティゾン美術館での大規模な展覧会で幕を開けました。パリのオルセー美術館から来日した貴重な作品群とともに印象派以前の青年期から晩年の睡蓮に至るまでの、20世紀を代表する画家の生涯を辿ります。

特集「クロード・モネ 睡蓮に至る道」の記事一覧はこちら>>>
「私はすべてを戸外で描く ── クロード・モネ」

ダークグレーの壁に作品が浮かび上がるかのような、オルセー美術館最上階の印象派の展示室。

右から、


クロード・モネ《積み藁、夏の終わり》1891年、油彩・カンヴァス、オルセー美術館蔵
【日本初公開】クロード・モネ《ディエップ近くの断崖》1897年、油彩・カンヴァス、オルセー美術館蔵
クロード・モネ《エプト川のポプラ並木、風の日》1891年、油彩・カンヴァス、オルセー美術館蔵
クロード・モネ《ノルウェー型の舟で》1887年、油彩・カンヴァス、オルセー美術館蔵

『モネ没後100年 クロード・モネ ── 風景への問いかけ』
主任学芸員・本展監修者特別インタビュー
日常的な風景にひそむ美しさを見つける “眼”

「モネの作品を前にすると、私たちはつい “よく知っている絵” だと思い込んでしまいがちです。でも本当は、初めて見るつもりで向き合ってほしいのです」

そう語るのは、アーティゾン美術館で開催中の『モネ没後100年 クロード・モネ ─ 風景への問いかけ』展の監修を担当した、オルセー美術館主任学芸員のシルヴィー・パトリさんです。

オルセー美術館主任学芸員 シルヴィー・パトリさん

19世紀後半の絵画、とりわけ印象派・ポスト印象派を専門とする研究者でありキュレーター。ソルボンヌ大学で哲学と美術史を学び、バーンズ財団などで要職を歴任。

本展は、日仏の長年にわたる協力関係の中で生まれ、2017年から構想が進められてきました。そしてモネ没後100年という節目にあたる今年(2026年)、日本のために特別に企画されたのです。会場となるアーティゾン美術館は、前身のブリヂストン美術館時代から印象派の名品を紹介してきた場所です。

「ここには、モネを受け止めるための歴史と感性があります」。

さらに、現代的な建築空間でモネを体感することが、本展の重要な要素でもあるといいます。

「来館者が展示室を巡ること自体が、一つの “散歩” になるように構成しました。モネ自身が歩いて画題を探していたように」。

生涯で約2000枚の絵を描いたモネ。その約9割は風景画です。

【日本初公開】クロード・モネ《トルーヴィル、ロシュ・ノワールのホテル》

1870年、油彩・カンヴァス、オルセー美術館蔵
Photo©GrandPalaisRmn (musée d’Orsay) / Gabriel de Carvalho / distributed by AMF

「けれど彼は、単に自然を写していたわけではありません。自然とは何か、私たちは何を見ているのかを、絵を通して問い続けていたのです」

【日本初公開】クロード・モネ《氷塊》

1880年、油彩・カンヴァス、オルセー美術館蔵
Photo©GrandPalaisRmn (muséed'Orsay) / Sylvie Chan-Liat / distributed by AMF

本展では、年代順の構成に加え、19世紀の写真などの視覚文化、日本美術との関係も示しながら、モネの眼差しを多角的に浮かび上がらせます。

クロード・モネ《戸外の人物習作 - 日傘を持つ右向きの女》

1886年、油彩・カンヴァス、オルセー美術館蔵
Photo©GrandPalaisRmn (muséed'Orsay) / Stéphane Maréchalle / distributed by AMF

「自然の中で風景を描き始めた日が、モネの画家としての出発点でした」── シルヴィー・パトリさん

「モネは自然の前に立つのではなく、自然の中に身を置きました。屋外制作に身を投じ、光や空気、風の移ろいを全身で受け止めながら描いた画家です。彼は、自然と距離を取ることができませんでした。だからこそ、風景と一体化するような絵が生まれたのです」

クロード・モネ《雨のベリール》

1886年、油彩・カンヴァス、石橋財団アーティゾン美術館

2017年の構想開始から年月を経たものの、「テーマそのものは、最初から変えていません」とパトリさん。

「世界がどのように変わっても、“見る” という行為の意味は変わりません。だからこそ今、モネの問いかけがあらためて重要なのです」。

そうした願いを込めて、本展は見る人をモネの風景の中へ静かに誘います。

【日本初公開】クロード・モネ《ディエップ近くの断崖》

1897年、油彩・カンヴァス、オルセー美術館蔵
Photo©Musée d’Orsay, Dist. GrandPalaisRmn / Sophie Crépy / distributed by AMF


モネ没後100年
クロード・モネ ─ 風景への問いかけ

モネ没後100年にあたる年の幕開けを飾る展覧会。オルセー美術館所蔵のモネの作品41点と同時代の作家の作品・資料約50点に、国内の美術館や個人の所蔵作品を加えた計約140点が集結。青年期から晩年まで、自然光の移ろいの美しさをカンヴァスにとどめようと模索し続けた風景画家モネの画業と生涯を展観します。

会期:2026年5月24日まで
会場:アーティゾン美術館5、6階展示室
開館時間:10時~18時(金曜、5月2日以降の土曜は20時まで)
*入館は閉館の30分前まで
休館日:4月13日、5月11日
入館料:日時指定予約制でウェブ予約
チケット一般2100円、窓口販売チケット同2500円
URL:https://www.artizon.museum/exhibition_sp/monet2026/

*本ページで掲載した作品は、《積み藁、夏の終わり》を除き、すべてアーティゾン美術館で開催中の展覧会『モネ没後100年 クロード・モネ -風景への問いかけ』で鑑賞することができます。

(次回に続く。この特集の記事一覧はこちらから>>

この記事の掲載号

『家庭画報』2026年04月号

家庭画報 2026年04月号

撮影/小野祐次 取材・文/大島 泉 構成・文/安藤菜穂子 参考文献:『クロード・モネ 狂気の眼と「睡蓮」の秘密』 ロス・キング 著 長井那智子 訳 亜紀書房 『図説 モネ「睡蓮」の世界』 安井裕雄 著 創元社

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