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ドガ、マネ、モネ──巨匠たちが描いた肖像画から読み解けることとは

2025.12.24

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エドガー・ドガ《家族の肖像(ベレッリ家)》 1858-1869年 油彩/カンヴァス 201×249.5cm オルセー美術館、パリ

東京・国立西洋美術館で開催中の展覧会『オルセー美術館所蔵 印象派―室内をめぐる物語』。オルセー美術館との本格的な共催、そして印象派コレクションがこの規模で来日するのが10年ぶりというのも話題のひとつです。展覧会の見どころを、本展に携わった美術展プロデューサーの今津京子さんが解説します(全3回)。

記事の最後には、会員限定のチケットプレゼントもあります。ぜひご応募ください。


第2回 エドガー・ドガ《家族の肖像(ベレッリ家)》、エドゥアール・マネ《エミール・ゾラ》、クロード・モネ《ルイ・ジョアシャン・ゴーディベール夫人》

今回は展覧会のメインビジュアルのひとつである、エドガー・ドガ初期の傑作《家族の肖像(ベレッリ家)》を中心に肖像画をご紹介します。

肖像画は、神話画、歴史画などと同じく伝統的な絵画のジャンルのひとつです。権力者の力を示すために広く頒布されたり、死者の記憶のために、あるいはお見合いの写真代わりに制作されるなど、さまざまな役割を担ってきました。登場人物の洋服や小物、背景は、その人の職業、社会階級、趣味などを紹介するための重要な小道具です。


例えばエドゥアール・マネの《エミール・ゾラ》は、20代の若き文筆家が描かれた肖像で、知的な印象を与えています。テーブルの上に置かれた羽ペンとインク壺は彼の職業を象徴していますし、壁には彼が擁護したマネの作品《オランピア》やベラスケスの版画に加えて日本の浮世絵が飾られ、背後に屏風も置かれています。両方ともマネが所有していたもので、19世紀後半のジャポニスムの大流行を示すものとして有名な作品です。エドゥアール・マネ《エミール・ゾラ》 1868年 油彩/カンヴァス 146×114cm オルセー美術館、パリ🄫 GrandPalaisRmn (musée d'Orsay) / Adrien Didierjean / distributed by AMF

エドゥアール・マネ《エミール・ゾラ》 1868年 油彩/カンヴァス 146×114cm オルセー美術館、パリ🄫 GrandPalaisRmn (musée d'Orsay) / Adrien Didierjean / distributed by AMF

クロード・モネの《ルイ・ジョアシャン・ゴーディベール夫人》はサイズも大きい立派な作品。洋服のドレープや素材の艶感は美しく、またショールも豪華で、古典的な肖像画のようですが、何と、本人の顔が見えません。ゆえに肖像画とは言えない、といった批評もあったそう。モネに是非、その真意を聞いてみたいところです。クロード・モネ《ルイ・ジョアシャン・ゴーディベール夫人》 1868年 油彩/カンヴァス 216.5×138.5cm オルセー美術館、パリ🄫 GrandPalaisRmn (musée d'Orsay) / Hervé Lewandowski / distributed by AMF

クロード・モネ《ルイ・ジョアシャン・ゴーディベール夫人》 1868年 油彩/カンヴァス 216.5×138.5cm オルセー美術館、パリ🄫 GrandPalaisRmn (musée d'Orsay) / Hervé Lewandowski / distributed by AMF

ドガは20代にフィレンツェに住む叔父叔母であるベレッリ男爵夫妻のところに2度滞在し、その間に《家族の肖像(ベレッリ家)》を描きました。エドガー・ドガ《家族の肖像(ベレッリ家)》 1858-1869年 油彩/カンヴァス 201×249.5cm オルセー美術館、パリ🄫 photo:C2RMF / Thomas Clot

エドガー・ドガ《家族の肖像(ベレッリ家)》 1858-1869年 油彩/カンヴァス 201×249.5cm オルセー美術館、パリ🄫 photo:C2RMF / Thomas Clot

壁紙など内装は当時のフィレンツェの富裕階級のしつらえです。無邪気で可愛らしい姪二人に挟まれて、叔母の虚ろな冷たい表情が際立っています。右側には力無さそうに3人を見る叔父。この二人の間の不和、そして緊張感というものを感じさせます。よく見ると右下には茶色の犬が、まさにこの場から逃げ出して行こうとしているかのよう。ドガは終生、この作品を手元に置いていたそうです。

近年、作品は修復されて、細部がより明確になったということですが、この作品はほとんどヨーロッパを離れたことはなく、このたびアジアで初公開となりました。オルセー美術館でドガの初期の作品は、地上階の右側ギャラリーに展示されていますが、その展示室は天井が高くありません。今回、日本での展示にはバックパネルが付いて、この大きな作品がより大きく、また光も綺麗に当てられていますので、作品が際立っています。エドガー・ドガ《家族の肖像(ベレッリ家)》 1858-1869年 油彩/カンヴァス 201×249.5cm オルセー美術館、パリ ©読売新聞社

エドガー・ドガ《家族の肖像(ベレッリ家)》 1858-1869年 油彩/カンヴァス 201×249.5cm オルセー美術館、パリ ©読売新聞社

私のような展覧会の作り手からしますと、有名な作品を繰り返し借用することも重要ですが、初公開の重要作品を展示したいという希望を常に持って企画に取り組んでいます。この作品があるかないかで、展覧会の印象はかなり変わるでしょう。本当によく来てくれたと、感慨もひとしおです。


・次回へ続く(12月26日公開予定)。


今津京子(いまづきょうこ)

撮影/小野祐次

美術展プロデューサー。パリをベースに、「モネ 睡蓮のとき」(2024‐25年)、「マティス 自由なフォルム」(2024年)、「ルーヴル美術館展 愛を描く」(2023年)、「ガブリエル・シャネル展 Manifeste de mode」(2022年)、「ロンドン・ナショナル・ギャラリー展」(2020年)など、40年にわたり数十を超える大型展覧会の企画に携わる。日仏英の3か国語を操り、美術、ファッションなどの分野でジャーナリストとしても活動。音楽、演劇、料理、アンティークなどアール・ド・ヴィーヴルをこよなく愛する。

オルセー美術館所蔵 印象派─室内をめぐる物語
会場:国立西洋美術館(東京・上野公園)
会期:2025年10月25日(土)~2026年2月15日(日)
休館日:月曜日、12月28日(日)~1月1日(木・祝)、1月13日(火)※ただし1月12日(月・祝)、2月9日(月)は開館
観覧料:〔当日券〕一般2,300円/大学生1,400円/高校生1,000円

【家庭画報ドットコム会員限定】プレゼント

抽選で5組10名様に本展の鑑賞券をプレゼントします。

応募には、家庭画報.comの会員登録(無料)が必要です。未登録の方は応募ボタンから「新規会員登録」へお進みください。

応募締め切り:2026年1月12日(月・祝)23:59まで

注意事項(必ずお読みください)
●当選の発表はプレゼントの発送をもってかえさせていただきます。抽選結果に関するお問い合わせはお答えしかねます。
●住所不明・長期不在等で届かなかった場合は、当選を無効とさせていただきます。

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