
東京・国立西洋美術館で開催中の展覧会『オルセー美術館所蔵 印象派―室内をめぐる物語』。オルセー美術館との本格的な共催、そして印象派コレクションがこの規模で来日するのが10年ぶりというのも話題のひとつです。展覧会の見どころを、本展に携わった美術展プロデューサーの今津京子さんが解説します(全3回)。
※記事の最後には、会員限定のチケットプレゼントもあります。ぜひご応募ください。
今回は展覧会のメインビジュアルのひとつである、エドガー・ドガ初期の傑作《家族の肖像(ベレッリ家)》を中心に肖像画をご紹介します。
肖像画は、神話画、歴史画などと同じく伝統的な絵画のジャンルのひとつです。権力者の力を示すために広く頒布されたり、死者の記憶のために、あるいはお見合いの写真代わりに制作されるなど、さまざまな役割を担ってきました。登場人物の洋服や小物、背景は、その人の職業、社会階級、趣味などを紹介するための重要な小道具です。
クロード・モネの《ルイ・ジョアシャン・ゴーディベール夫人》はサイズも大きい立派な作品。洋服のドレープや素材の艶感は美しく、またショールも豪華で、古典的な肖像画のようですが、何と、本人の顔が見えません。ゆえに肖像画とは言えない、といった批評もあったそう。モネに是非、その真意を聞いてみたいところです。
ドガは20代にフィレンツェに住む叔父叔母であるベレッリ男爵夫妻のところに2度滞在し、その間に《家族の肖像(ベレッリ家)》を描きました。
壁紙など内装は当時のフィレンツェの富裕階級のしつらえです。無邪気で可愛らしい姪二人に挟まれて、叔母の虚ろな冷たい表情が際立っています。右側には力無さそうに3人を見る叔父。この二人の間の不和、そして緊張感というものを感じさせます。よく見ると右下には茶色の犬が、まさにこの場から逃げ出して行こうとしているかのよう。ドガは終生、この作品を手元に置いていたそうです。
近年、作品は修復されて、細部がより明確になったということですが、この作品はほとんどヨーロッパを離れたことはなく、このたびアジアで初公開となりました。オルセー美術館でドガの初期の作品は、地上階の右側ギャラリーに展示されていますが、その展示室は天井が高くありません。今回、日本での展示にはバックパネルが付いて、この大きな作品がより大きく、また光も綺麗に当てられていますので、作品が際立っています。
私のような展覧会の作り手からしますと、有名な作品を繰り返し借用することも重要ですが、初公開の重要作品を展示したいという希望を常に持って企画に取り組んでいます。この作品があるかないかで、展覧会の印象はかなり変わるでしょう。本当によく来てくれたと、感慨もひとしおです。
・次回へ続く(12月26日公開予定)。
オルセー美術館所蔵 印象派─室内をめぐる物語抽選で5組10名様に本展の鑑賞券をプレゼントします。
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