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ルノワールとモネが描いた“親密な時間”。オルセー美術館の印象派展を今津京子さんが解説

2025.12.22

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(左)ピエール=オーギュスト・ルノワール《ピアノを弾く少女たち》1892年 油彩/カンヴァス 116×90cm オルセー美術館、パリ (右)トーネット兄弟社 両面譜面台 1873-1888年(原型) ブナ材、合板、曲木加工、黒色の着色、熱転写による模造寄木象嵌 オルセー美術館、パリ

東京・国立西洋美術館で開催中の展覧会『オルセー美術館所蔵 印象派―室内をめぐる物語』。オルセー美術館との本格的な共催、そして印象派コレクションがこの規模で来日するのが10年ぶりというのも話題のひとつです。展覧会の見どころを、本展に携わった美術展プロデューサーの今津京子さんが解説します(全3回)。

記事の最後には、会員限定のチケットプレゼントもあります。ぜひご応募ください。


第1回 ピエール=オーギュスト・ルノワール《ピアノを弾く少女たち》 クロード・モネ《アパルトマンの一隅》

2022年初夏。オルセー美術館上層部の友人から「今後の展覧会プロジェクトについて相談したい」という連絡をもらいました。世界中に広がったコロナ禍で、多くの展覧会がキャンセルあるいは延期に追い込まれましたが、一段落して先々のプログラムを見直す時期でした。すぐに東京の同僚に伝えて国立西洋美術館に話したところ、袴田紘代主任研究員から、今まで日本で扱ったことのない「印象派の室内」をテーマにするのはどうだろうかというアイデアが浮上。オルセーも賛同し、話がトントンとまとまりました。

印象派の画家たちは、時間の経過による光の変化や色彩の移り変わりに関心を持ち、キャンバスを持って屋外にでて、自然の光のもとで描くようになりました。従来の伝統的な絵画の技法とは一線を画するアプローチで、それは特に屋外の風景画において強く表現されました。しかしながら、画家たちは同時に、急速に近代化が進む都市環境とライフスタイル、そしてそこに住む人々に対しても大きな関心を寄せていたのです。


19世紀後半、ピアノを持つことは裕福さと文化的な生活を意味し、演奏は上流階級の子女の嗜みでした。ピエール=オーギュスト・ルノワールは、《ピアノを弾く少女たち》を何点も描きました。オランジュリー美術館、NYのメトロポリタン美術館などが所蔵する6点が知られています。その中でもこのオルセー美術館の作品は、フランス国家がルノワールの作品を初めて買い上げた貴重な一点。それは画家にとって大変な栄誉であったことでしょう。 ピエール=オーギュスト・ルノワール《ピアノを弾く少女たち》1892年 油彩/カンヴァス オルセー美術館、パリ🄫 GrandPalaisRmn (musée d'Orsay) / Hervé Lewandowski / distributed by AMF

ピエール=オーギュスト・ルノワール《ピアノを弾く少女たち》1892年 油彩/カンヴァス 116×90cm オルセー美術館、パリ🄫 GrandPalaisRmn (musée d'Orsay) / Hervé Lewandowski / distributed by AMF

本展の欧文タイトルは『印象派の室内=親密さ、装飾、近代性』となっています。室内はしばしば生活の場所でもあり、画家にとって個人的な、親密な空間と言えます。音楽だけでなく読書や手芸をするモデル、そして入浴場面など日常の情景が多数描かれました。ゆえに身近な女性や子どもが多く登場するのも本展覧会の特徴の一つです。 ドイツのトーネット社製の当時の譜面台と共に。その他にもマネ、ドガ、カイユボットが描いたピアノを演奏する場面の作品が並んでいます

ドイツのトーネット社製の当時の譜面台と共に。その他にもマネ、ドガ、カイユボットが描いたピアノを演奏する場面の作品が並んでいます。(左)ピエール=オーギュスト・ルノワール《ピアノを弾く少女たち》1892年 油彩/カンヴァス 116×90cm オルセー美術館、パリ (右)トーネット兄弟社 両面譜面台 1873-1888年(原型) ブナ材、合板、曲木加工、黒色の着色、熱転写による模造寄木象嵌 オルセー美術館、パリ 

クロード・モネの《アパルトマンの一隅》は、モネの長男ジャンがモデルと考えられています。子どもたちを描いた可愛らしい絵が並ぶ中で、この作品は異彩を放っています。
クロード・モネ《アパルトマンの一隅》 1875年 油彩/カンヴァス 81.5×60cm オルセー美術館、パリ 🄫 GrandPalaisRmn (musée d'Orsay) / Martine Beck-Coppola / distributed by AMF

クロード・モネ《アパルトマンの一隅》 1875年 油彩/カンヴァス 81.5×60cm オルセー美術館、パリ 🄫 GrandPalaisRmn (musée d'Orsay) / Martine Beck-Coppola / distributed by AMF

手前が明るく、奥にいる人物は暗く、その表情すらわからない── この時代には珍しい、〈逆光〉で描かれているからでしょう。モネの革新性を思い知らされる作品として私は心打たれました。本展のオルセー美術館監修者のアンヌ・ロビンスさんのおすすめの作品でもあります。

・次回へ続く。第2回「ドガ、マネ、モネ──巨匠たちが描いた肖像画から読み解けることとは」を読む→


今津京子(いまづきょうこ)

撮影/小野祐次

美術展プロデューサー。パリをベースに、「モネ 睡蓮のとき」(2024‐25年)、「マティス 自由なフォルム」(2024年)、「ルーヴル美術館展 愛を描く」(2023年)、「ガブリエル・シャネル展 Manifeste de mode」(2022年)、「ロンドン・ナショナル・ギャラリー展」(2020年)など、40年にわたり数十を超える大型展覧会の企画に携わる。日仏英の3か国語を操り、美術、ファッションなどの分野でジャーナリストとしても活動。音楽、演劇、料理、アンティークなどアール・ド・ヴィーヴルをこよなく愛する。

オルセー美術館所蔵 印象派─室内をめぐる物語
会場:国立西洋美術館(東京・上野公園)
会期:2025年10月25日(土)~2026年2月15日(日)
休館日:月曜日、12月28日(日)~1月1日(木・祝)、1月13日(火)※ただし1月12日(月・祝)、2月9日(月)は開館
観覧料:〔当日券〕一般2,300円/大学生1,400円/高校生1,000円

【家庭画報ドットコム会員限定】プレゼント

抽選で5組10名様に本展の鑑賞券をプレゼントします。

応募には、家庭画報.comの会員登録(無料)が必要です。未登録の方は応募ボタンから「新規会員登録」へお進みください。

応募締め切り:2026年1月12日(月・祝)23:59まで

注意事項(必ずお読みください)
●当選の発表はプレゼントの発送をもってかえさせていただきます。抽選結果に関するお問い合わせはお答えしかねます。
●住所不明・長期不在等で届かなかった場合は、当選を無効とさせていただきます。

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