〔特集〕パリ『アール・デコ博』から100年 女たちの「アール・デコ」フランスで花開いた「アール・デコ」は2つの世界大戦の間におこった芸術運動です。より女性が社会進出していった時代、デザインにはどんな変化が起こったのか? アール・デコのジュエリーを中心に、時代を紐解きます。
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海を行ったり来たり!?
日本と「アール・デコ」
さまざまなエキゾチシズムを取り入れてフランスで始まった「アール・デコ」のスタイル。その中には、日本の美術や素材からの影響もありました。こうして生まれた芸術様式のムーブメントは、再び日本へ。国境を超えて繫がったエピソードをご紹介します。
1.アール・デコの潮流を日本にもたらした
朝香宮ご夫妻

《朝香宮鳩彦王、朝香宮鳩彦王妃允子肖像》1925年頃 写真 東京都庭園美術館蔵
1920年代にフランスに長期滞在された朝香宮鳩彦王と、その後渡欧した允子(のぶこ)妃。ご夫妻がパリで『アール・デコ博覧会』を訪れたことは、記録にも残っています。
帰国後、東京の白金台に建設された邸宅「朝香宮邸」(現在の東京都庭園美術館)はフランスの装飾芸術家アンリ・ラパンに主要な部屋の設計や室内装飾を依頼するなど、アール・デコの様式を随所に取り入れた名建築です。
2.アメリカ大人気!日本発の斬新な陶磁器
「ノリタケ・アール・デコ」
主に海外への輸出用として製造されたノリタケの陶磁器の中で、異彩を放っているのがアール・デコ期の製品。第一次世界大戦後の好景気に沸いたアメリカで人気を集めました。
ラスター彩や原色を用いた鮮やかな配色、これまでにない斬新なデザインは「ノリタケ・アール・デコ」と呼ばれています。
写真提供:ノリタケミュージアム
上写真は幾何学文のコンポート。下写真はモダンガールのスカート部分が収納スペースになっている蓋物。
写真提供:ノリタケミュージアム
3.アール・デコ博覧会にも登場芸術家たちが夢中になった
日本の漆
アール・デコの装飾美術に用いられた素材の中でも、特に愛用されたのが、漆。フランスで漆工芸家の菅原精造に出会い、漆の技術を学んだ工芸家のジャン・デュナンがアール・デコ博覧会で手がけたフランス大使館の喫煙室は、壁面から家具調度品に至るまで漆塗りが施されました。
4 きものにも合う
日本のアール・デコ

写真提供:ウエダジュエラー
現存する日本最古のジュエラーといわれるウエダジュエラーのオニキス・水晶・めのうを用いたブローチ(写真上)が生まれたのは、フランク・ロイド・ライトの設計による帝国ホテルが誕生した1923年。
大正初期から昭和初期(1910〜30年頃)に作られた帯留め(写真下)は、プラチナ、真珠、ダイヤモンドの白とオニキスの黒という色彩と左右対称の形が象徴的。ジュエリーも建築も、アール・デコ様式が全盛だったことが窺えます。
写真提供:ウエダジュエラー
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