〔特集〕2025〜2026年、3大展覧会開催 “ゴッホイヤー”を楽しむ─Vincent van Gogh─ ゴッホがこの世を去った1890年の135年後にあたる2025年から26年にかけて3つの大規模な展覧会が日本各地で開催されます。27歳で画家を志し、37歳で没するまでに約2000点の作品を描き、ひと目見て誰もが“ゴッホの絵だ”とわかる独自の画風に到達した人の家族、画業、生涯を、各展覧会の担当学芸員の方々のお話から紐解きます。
前回の記事はこちら>>*掲載作品がどの展覧会で展示されるか、あるいは展示されないかは、作品名に続く数字でご確認いただけます。①=「ゴッホ展 家族がつないだ画家の夢」 ②=「大ゴッホ展 夜のカフェテラス」 ③=「ゴッホ・インパクト─生成する情熱」 ④日本での展示なし
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今もなお、アーティストと私たちの心を揺さぶる
後世に与え続けるインパクト

桑久保 徹《フィンセント・ヴィレム・ファン・ゴッホのスタジオ》③ 2015年 油彩、カンヴァス 181.8×227.3 センチ 個人蔵
美術史における巨匠を取り上げ、想像上のアトリエを描き出した「カレンダーシリーズ」の一つ。
ポーラ美術館で開催中の展覧会「ゴッホ・インパクト─生成する情熱」は、同美術館が収蔵するゴッホ作品とともに、近代から現代まで、ゴッホに触発された画家による作品を集めた展覧会です。
「ポーラ創業家の2代目 故・鈴木常司が収集した近代絵画コレクションには、モネやピカソの作品群とともに、ゴッホの絵画3点が含まれています。2002年の開館以来、このコレクションに加え、その後の美術の展開を追う近現代の重要な作品の収集にも力を入れてきました。従来のコレクションと現代の作品を組み合わせた展示や、現代作家の個展の開催を経て、ゴッホ×日本、ゴッホ×現代というアプローチの企画に至りました」と、ポーラ美術館 学芸員の工藤弘二さん。
中村 彝《向日葵》③ 1923(大正12)年 油彩、カンヴァス 52.3×45.0センチ 石橋財団アーティゾン美術館
戦前日本に招来され、戦災で焼失したゴッホの《向日葵》を強く意識したことが感じられる。
豊かなコレクションを収蔵し、個性ある独自のキュレーションを行う同美術館だからこそ可能な「ゴッホ展」といえるでしょう。
本展では、岸田劉生をはじめ近代の作家から現代作家によるインスタレーションまで、幅広い作品が展示されます。
岸田劉生《外套着たる自画像》③ 1912(明治45)年 油彩、カンヴァス 41.1×31.8センチ 京都国立近代美術館
色彩の豊かさや筆触の力強さがみなぎる自画像。ゴッホの影響を如実に示した作品。
「大正期、ゴッホの芸術は雑誌の白黒写真などを通して日本の画家たちに受容されました。作品とともに紹介された、ゴッホの短くもドラマティックな人生、芸術に身を捧げた生き方は、作品の実物を見ずとも彼らに強い影響を与えました。
福田美蘭《冬-供花》③ 2012年 アクリル、カンヴァス 181.8×227.4センチ 豊田市美術館
ゴッホの《薔薇》(1890年、ワシントン・ナショナル・ギャラリー)を翻案した作品。
1950年代には、戦後の文化復興のなかで社会現象としてゴッホ・ブームが起きています。ゴッホの作品とともに、日本の各時代の作家たちがゴッホをどう受け止めたのかを表現した作品を鑑賞することで、現代に受け継がれ、生成され続けるゴッホの情熱を感じていただけると嬉しいです」
フィオナ・タン《アセント》③ 2016年 ベルナール・ビュフェ美術館
インドネシア出身でゴッホの母国であるオランダを拠点として活躍する映像作家による映像と写真のインスタレーション。
ゴッホが本格的に絵筆を取り始めてから約145年。その情熱は、各時代の芸術家のみならず、鑑賞者にも伝わります。私たちがなぜこんなにもゴッホが好きなのか。その理由を探り、自分なりの「ゴッホ像」を描く貴重な機会となりそうです。
お話を伺った方々大橋菜都子さん/東京都美術館 学芸員専門はフランス近代美術。「ゴッホとゴーギャン展」等を担当。主な著書に『ルノワール作品集』がある。
塚原 晃さん/神戸市立博物館 学芸員専門は南蛮美術など、西洋の影響を受けた日本美術全般。「メゾチントと洋風画」(『國華』1498)など論考多数。
工藤弘二さん/ポーラ美術館 学芸員専門はフランス近代美術史。おもに印象派の画家たちをテーマとした展覧会を担当している。
(次回へ続く。
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