原田さんのアート小説を中谷さんが朗読で表現
中谷 ところで、先ほど、マハさんもおっしゃいましたが、このたびは『リボルバー』のオーディオブック(本の朗読をアプリで聴けるサービス)の朗読をさせていただくことになり、光栄に思っております。
原田 こちらこそ、本の帯に素敵な言葉をくださった美紀さんに読んでいただけて、大変嬉しいです。私は自分の作品がほかの表現者によって映像など別のメディアになるとき、原作に忠実である必要はないと思っているんです。その表現者が優れた人であったら、その人のものにしてもらうことのほうが大事。そう考えるのは多分、私がキュレーターをしていたからなんですよね。キュレーターはアーティストやクリエイターの可能性を引き出すのが仕事ですから。なので私は、美紀さんがご自身のクリエイティビティやアーティスティックなセンスを全開にして、この作品を表現してくださるのが理想なんです。ぜひ好きなようにアレンジしてお読みください。
中谷 そうおっしゃっていただくと、自由度が高く、やりがいもありますが、一方で怖さも感じます。マハさんの品のいい筆致を壊さないように読まなければ……と。マハさんはグロテスクにも書ける話題を、美しく端正な言葉で表現されるじゃないですか? 『リボルバー』で印象に残っている言葉の一つが、ゴーギャンと14歳の妻の話で使われた「夜伽(よとぎ)」です。淫靡な世界を想像させつつ、品格は保たれている。マハさんは読者を信じていらっしゃるのだなと感じました。
原田 それはおっしゃるとおりで、私の読者は皆さん想像力を働かせて行間も読んでくださるので、いつもありがたく思っています。でも「夜伽」のことは、今美紀さんにいわれるまで忘れていました(笑)。そんな細かいところまで読み込んでくださって、嬉しいです。『リボルバー』のちょっとユニークなキャラクターの男性や、ゴッホ、ゴーギャンのセリフを、美紀さんがどんなふうに表現されるか楽しみです。
中谷 そこはかなり悩みました。あまりカリカチュアライズしてしまったら、この小説のよさが失われてしまうと思いまして。
原田 登場人物になりきるというよりは、朗読としてお読みいただくといいのではないでしょうか。そうすることで、美紀さんご自身の気持ちも入って、聞きどころの一つになるように思います。長い話なので本当に大変だと思いますけど、お預けしましたので。
中谷 承りました。プレッシャーですが、頑張ります。
原田 それから、次にお嬢さんとパリへいらっしゃるときは、ぜひお声がけください。
中谷 よろしいんですか?
原田 もちろん。おすすめの美術館へご案内します。
中谷 これ以上ない贅沢なツアーですね。ご一緒できるのを楽しみにしております。
中谷さんが原田さんの著書を朗読オーディオブック『リボルバー』
パリのオークション会社に持ち込まれた錆びついた一丁のリボルバー(回転式拳銃)。持ち主の女性はゴッホの自殺に使用されたものだというが……傑作アート・ミステリー。
著者/原田マハ ナレーター/中谷美紀
Amazon オーディブルにて2025年6月30日より配信→
原田マハ(はらだ・まは)1962年東京都生まれ。森ビル森美術館設立準備室勤務などを経て作家に。『楽園のカンヴァス』で山本周五郎賞受賞。最新作は『原田マハのポスト印象派物語』(新潮社)。自作をもとにした初監督映画『無用の人』の制作に邁進中。
中谷美紀(なかたに・みき)1976年東京都生まれ。1993年の俳優デビュー以来、映画、ドラマ、舞台、CM等で活躍。結婚を機にオーストリアと日本の二拠点生活に。『文はやりたし』『オフ・ブロードウェイ奮闘記』(ともに幻冬舎文庫)など著書も多数。
・後編へ続く。