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【美と美味の国・山梨へ】第8回 「酒は、水。」──山梨の清流が育む日本酒を巡る旅

2026.08.12 | PR

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ぷるんと透明 名水生まれの甘味処に立ち寄る

製造販売マネージャーの小野珠央さん(カウンター奥)。県を代表する銘菓「信玄餅」ほか、山梨土産にしたい和菓子が机一面に並ぶ。

製造販売マネージャーの小野珠央さん(カウンター奥)。県を代表する銘菓「信玄餅」ほか、山梨土産にしたい和菓子が机一面に並ぶ。

笹一酒造から車で西に約1時間。次に訪れたのは、北杜市・台ヶ原宿に店を構える老舗和菓子店・金精軒です。120年以上にわたり、南アルプス・甲斐駒ヶ岳の名水とともに菓子づくりを続けてきました。酒造りと和菓子。一見異なるものづくりのようですが、根底にあるのは「良い水が、美味しさを生む」という考え方です。「和菓子づくりは、本当にたくさんの水を使う仕事なんです」そう話すのは、製造販売マネージャーの小野さん。例えば、あんこ作りでは、小豆を何度も水にさらしてアクを抜く「渋切り」という工程があります。この工程に使われる水の質が、あんこの味わいを大きく左右するといわれています。

名水の魅力を最も表すのが、金精軒の名物「水信玄餅(みずしんげんもち)」です。透明な姿は、まるで水そのもの。材料は寒天と水、そしてごく少量の砂糖だけというシンプルさ。口に含むと体温ですっとほどけていきます。山梨を訪れたら一度は味わいたい、水が主役の逸品です。

夏季限定(2026年は9月27日までの発売)販売の水信玄餅(左)と、その仕込み水(右)。水信玄餅のつるんと冷たい食感、黒蜜の純朴な甘みが絶妙な組み合わせに。毎週、金曜・土曜・日曜・祝日限定販売。

夏季限定(2026年は9月27日までの発売)販売の水信玄餅(左)と、その仕込み水(右)。水信玄餅のつるんと冷たい食感、黒蜜の純朴な甘みが絶妙な組み合わせに。毎週、金曜・土曜・日曜・祝日限定販売。

店の周囲には静かな田園や川が広がり、穏やかな時間が流れています。「ここには何もない良さがあるんです。山があって、川があって、空気がおいしい。虫もちょっと多いんですけど、虫が多いということは、たぶん人にとっても暮らしやすい場所です」という小野さんの言葉からも、この土地に根差した和菓子作りへの想いを感じました。

宿場町の一角に佇み、江戸時代の旅籠屋の姿をそのままに残している。

宿場町の一角に佇み、江戸時代の旅籠屋の姿をそのままに残している。

●台ヶ原金精軒(だいがはらきんせいけん)
山梨県北杜市白州町台ヶ原2211
営業時間:9時~17時
定休日:木曜
TEL:0551-35-2246
URL:https://kinseiken.co.jp/


南アルプス 清流の恵み
山梨銘醸の「七賢」

約180年前に建てられた木造建築。1880年には明治天皇ご巡幸の際に行在所(宿泊所)となった。

約190年前に建てられた木造建築。1880年には明治天皇ご巡幸の際に行在所(宿泊所)となった。

金精軒から歩いてすぐ。同じ台ヶ原宿で270年以上にわたり酒造りを続けてきたのが、山梨銘醸です。創業者・北原伊兵衛氏が、台ケ原宿の水に魅了され酒蔵を構えたと伝えられています。山梨銘醸の代表銘柄「七賢」は甲斐駒ヶ岳の伏流水で醸されています。

甲斐駒ヶ岳に降り積もった雪や雨は、長い年月をかけて花崗岩を通り抜け、硬度約20mg/Lという極めてやわらかな伏流水となって湧き出します。「南アルプス天然水」と同じ水系に属するこの水は、雑味が少なく澄んだ味わいが特徴。「七賢」にも透明感のある味わいをもたらしています。

近年は醸造技術の進歩により、重厚な酒も軽やかな酒も、ある程度は技術によって造り分けられるようになりました。そんな時代だからこそ、山梨銘醸が見つめ直したのは、この土地の水が持つ個性でした。

七賢「星ノ輝」は白州の澄んだ空気や満天の星空をモチーフに、瓶内二次発酵によるクリアな味わいが特徴。昆布や大葉など、パリの三ツ星レストランでは和の食材が登場する機会が増えており、食の国際化を見据えた一本にもなっている。

七賢「星ノ輝」は白州の澄んだ空気や満天の星空をモチーフに、瓶内二次発酵によるクリアな味わいが特徴。パリの三ツ星レストランでは、昆布や大葉など和の食材が登場する機会が増えており、食の国際化を見据えた一本にもなっている。

「なぜ私たちは、この場所で酒を造るのか。その答えを考え続けた結果、この水だからこそ生まれる、華やかでフレッシュな酒を追求することが、この土地で酒を醸す意味だという結論に至りました。」そう語るのは、山梨銘醸の北原対馬社長。2014年から水を主役に据えた酒造りを本格化し、2015年には瓶内二次発酵によるスパークリング日本酒の開発にも着手しました。

その代表作が、「星ノ輝」です。目指したのは、和食の出汁に寄り添う日本酒。昆布や鰹節の繊細な旨味を引き立て、料理とともに完成する一杯を追求しています。2021年に「七賢」のスパークリング日本酒は、フランス料理界の巨匠、アラン・デュカス氏とのコラボレーションも実現。日本酒の新たな可能性を世界へ発信しています。

山梨銘醸の行在所に設えられたテイスティングルームにて。「とても軽やかで澄んでいるのに、後から米の旨が広がります。“ふくよか”という言葉がぴったりです」と高瀬さん。

山梨銘醸の行在所に設えられたテイスティングルームにて。「とても軽やかで澄んでいるのに、後から米の旨みが広がります。“ふくよか”という言葉がぴったりです」と高瀬さん。

実際に試飲した高瀬さんは、「語弊がある言い方になりますが……もはや日本酒じゃないみたいです」と驚いた表情。きめ細やかな泡と軽やかな飲み口、優しい甘みとラムネのような涼やかな香りが印象的で、日本酒のイメージを心地よく覆してくれる一杯でした。

富士山の伏流水を用いた食中酒「笹一」に対して、甲斐駒ヶ岳の名水が生み出す「七賢」のスパークリング。水が変われば酒も変わる。土地に応じた日本酒の個性を実感できる体験となりました。

●山梨銘醸(やまなしめいじょう) 直売店
山梨県北杜市白州町台ヶ原2283
営業時間:9時~17時
TEL:0551-35-2236
URL:https://www.sake-shichiken.co.jp/index

酒を味わう、その先へ
一日一組限定の文化邸宅「宿場esoto」

ゲストルームに飾られた掛け軸は、山梨県生まれで、ろうけつ染めを用いて花のモチーフを描く古屋絵菜さんの作品。大正時代のアンティーク照明が室内をやさしく照らす。

ゲストルームに飾られた掛け軸は、山梨県生まれで、ろうけつ染めを用いて花のモチーフを描く古屋絵菜さんの作品。大正時代のアンティーク照明が室内をやさしく照らす。

山梨銘醸を訪れた際に、ぜひとも滞在したいのが、2026年6月に開業した宿場esotoです。明治40年頃の建物を活用し、かつての台ヶ原宿の趣を受け継ぐ宿。壁や天井は現代の滞在に合わせて改修されながら、欄間など随所に意匠を残しています。積み重ねられた時の流れと、洗練された居心地の良さが共存する空間です。

滞在中は、七賢の日本酒と地元食材を生かした料理とのペアリングを楽しめるほか、酒造りを支える水源・千ヶ淵を訪ねるツアーも用意。酒を味わうだけでなく、水や自然、風土まで体感できるのが、この宿ならではの魅力です。

「フランス・ボルドー地方のワイナリーは、ワイン造りだけでなく、オーベルジュと呼ばれるレストランや宿泊施設を運営し、ゲストの体験価値を高めています。我々も世界一(山梨銘醸の七賢『白心』は、2025年のインターナショナル・ワイン・チャレンジで最高賞を受賞)を獲得した今、そのフィールドに立つ時が来ました」と北原社長は話します。

120年の歴史を刻む松の木などが植えられた、美しい日本庭園を望む。蔵風呂からも、庭の景観が楽しめるよう設計されている。

120年の歴史を刻む松の木などが植えられた、美しい日本庭園を望む。蔵風呂からも庭の景観が楽しめるよう設計されている。

江戸時代から人が行き交った台ヶ原宿には、清らかな水、豊かな森、宿場町として育まれてきた文化が息づいています。蔵を改修し湧き水を用いた「蔵風呂」に浸かり、土地の恵みを活かした料理を味わう。歴史ある建物に身を置きながら、酒を育む水の源流へと足を運ぶ。台ケ原宿の自然と文化を五感で味わう旅を、宿場esotoは提案しているのです。

夏のペアリングコースのメニューである八寸(左)。専属シェフによる3食付きプランのほか、水源地ツアーなど台ケ原宿の自然を満喫できる機会に。予約はウェブサイトもしくは宿泊問い合わせ先へ。

夏のペアリングコースのメニューである八寸(左)。専属シェフによる3食付きプランのほか、水源地ツアーなど台ケ原宿の自然を満喫できる機会に。予約はウェブサイトもしくは宿泊問い合わせ先へ。

●宿場esoto(しゅくばえそと)
山梨県北杜市白州町台ヶ原2291
宿泊問い合わせ(株式会社LOOOF)TEL:055-244-3895
URL:https://esoto.sake-shichiken.co.jp/

撮影/大見謝星斗

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