
イタリアが世界に誇る金細工を今に受け継ぎ、芸術の域にまで高めた「ブチェラッティ」。1919年の創業以来、世紀を超えて類いまれなる輝きを生み出し続けるメゾンの矜持とは──。来日中のヴィンテージコレクションから唯一無二の煌めきをお目にかけます。
ここにある5つのブローチは、初代マリオ・ブチェラッティと2代目ジャンマリア・ブチェラッティによる貴重なアーカイブ作品です。時代とともに変化する豊かな花の表情と、時を経ても変わらない圧倒的な職人技と煌めき……。ブチェラッティの美の真髄が、ここにあります。
右:1929/オーキッド
マリオ・ブチェラッティ作。ロッククリスタルとカーネリアンで蘭の花びらを表現。ローズカットダイヤモンドやオールドカットダイヤモンドの上品な輝きと小ぶりなサイズ感に、時代の気分を感じます。ブローチ(YG×SV×ダイヤモンド×ロッククリスタル×カーネリアン)/ブチェラッティ ヒストリックコレクション
左:1967/ダリア
ジャンマリア・ブチェラッティ作。優美なダリアの花びらを、見事な彫金で花脈まで表情豊かに仕上げています。花の中心は、カボションカットのエメラルドがアクセントになっています。ブローチ(YG×エメラルド)/ブチェラッティ ヒストリックコレクション
右:1991/ベゴニア
ジャンマリア・ブチェラッティ作。ベゴニアの立体感、風にそよぐような花びらがリアルに表現された有機的な輝きは、ジャンマリアの真骨頂。自然を愛する心が滲み出たような、生き生きとしたデザインに魅了されます。ブローチ(PG×WG×ダイヤモンド)/ブチェラッティ ヒストリックコレクション
中:1997/マルゲリータ
ジャンマリア・ブチェラッティ作。19世紀のイタリア王妃の名にちなんだ花は、日本では長命菊としても知られる花。端正な円をかたどる花びらを、イエローとホワイトのゴールドでグラフィカルに表現しています。ブローチ(YG×WG×ダイヤモンド)/ブチェラッティヒストリックコレクション
左:2001/マグノリア
ジャンマリア・ブチェラッティ作。春に白い花を咲かせるマグノリアを、まるで本物のような自然な質感で輝きに昇華させて。2000年代に入ると、職人技を駆使した花脈や花芯の見事な表情に加え、デザインもより現代的に進化しています。ブローチ(YG×WG)/ブチェラッティ ヒストリックコレクション
イタリアならではの彫金技術を美しいジュエリーに昇華させ、世界中の目の肥えた人々に支持されているブチェラッティ。精緻で表情豊かなゴールドの煌めきは、創業から100年を超えた今もなお、芸術品のような存在感で私たちを虜にしています。
メゾンの創業は1919年。イタリア中部のアンコーナの地に生まれた初代マリオ・ブチェラッティは、ミラノに最初のブティックをオープンさせます。

その後、ローマ、フィレンツェと広げ、2代目のジャンマリアの時代になると、1950年代にアメリカに進出。1979年にはパリ・ヴァンドーム広場にブティックを開き、1994年、フランスのハイジュエリー協会が、フランス人以外のジュエラーとして唯一、ジャンマリアだけを会員として認可するに至ります。

家族の強い絆をもとに、瞬く間に世界に認められたメゾンが最も大切にしているのは、彫金彫刻の職人技の継承です。ファミリーは、作品を見ればどの職人が彫ったものか瞬時にわかるそうです。それは何よりも職人に心を配っている証。
ブチェラッティには現在約200人の職人が在籍していますが、親子ともどもメゾンにかかわる職人も多いのだとか。ブチェラッティのジュエリーを作っているという誇りが、世代を超えて職人にも受け継がれているのです。

彼らが日々研鑽する技術は、気の遠くなるような透かし彫りや、二度にわたる丁寧な研磨、ゴールドの表情を自在に変化させる緻密なエングレービング、独特の石留め……。どの工程もすべて手仕事で生み出されるジュエリーは、一つ一つが唯一無二のユニークピースといえます。 



3代目アンドレア・ブチェラッティは、クリエイティブ・ディレクター兼名誉会長としてファミリーのレガシーを受け継ぐ中で、ルネサンス期の彫金彫刻技術の伝統を守り、さらに発展させることが必要と考え、2023年、スクオーラ・オラファ・アンブロシアーナという学校と提携し、職人技の教育にいっそう尽力しています。

ブチェラッティが日本に上陸したのは、1972年のこと。それから約半世紀を経た今、銀座本店に、初代マリオや2代目ジャンマリアがデザインした貴重なアーカイブコレクションや、ヴィンテージコレクションが一堂に会します。時を超えてますます魅力を増すジュエリーには、身につける喜びはもちろん、資産として所有する価値もあります。
メゾンのものづくりは、イタリアの工芸、芸術そのものを体現しています。価値ある輝きをまとうことは、尊い文化を慈しみ、未来に繫ぐことなのです。
・メゾンの歴史を公式サイトでもっと詳しく→
オープンワーク、モデラート……。数々の彫金技術が駆使されたジュエリーはため息が出るほどの美しさです。初代マリオの時代から大切にされ、脈々と継承される職人技は、メゾンの根幹を成すアイデンティティ。ほかにはない輝きの傑作が、ここにあります。

1964年、マリオによるデザインのブローチ。一枚のプレートから、糸鋸で少しずつ透かし彫りを施し、オープンワークで枝や葉をエレガントに表現しています。気の遠くなるような作業を経て完成する唯一無二の美しさは、手仕事の価値の何たるかを物語ります。
ジャンマリアが1977年にデザインしたネックレスは、プリーツ状の襟がモチーフ。ファセットカットのトルマリンを配したホワイトゴールドと、ダイヤモンドをあしらったイエローゴールドがリズミカルな輝きを生みます。地金にはモデラートという彫金技法が駆使され、この上ないオーラを放ちます。同じトルマリンのイヤリングを合わせ、冴えたコーディネートに。
可憐に、そして大胆に。美しく咲く花の数々をスケッチし、輝きにその生命力を注いできたメゾンの歴史は、常にブローチとともにあります。いつの時代も飽きることなく私たちを魅了してやまないタイムレスなデザインは、心豊かな日常にそっと寄り添うパートナーのような存在です。
大きなセンターストーンを配したカクテルリングは、パーティなど華やかな席で手もとに視線を集めます。とりわけブチェラッティらしさが光るのは、パコダ様式と呼ばれるリング。東洋の建造物の屋根から想を得たフォルムでサイドを美しく彩るデザインは、ジャンマリアがアメリカに進出した際に誕生し、以降ブランドを代表するアイコンとなりました。イブニングドレスやきものの色に合わせて、お気に入りを見つけてください。

上写真の貴重なアーカイブ作品をはじめ、一点もののヴィンテージ コレクションが銀座ブティックに勢揃い。メゾンの世界観を余すところなく堪能できる、またとない機会です。 この記事の掲載号
撮影/栗本 光 スタイリング/阿部美恵