
フランスの名門「エス・テー・デュポン」の高級ライターに「香川漆芸」の加飾が施され、春夏秋冬を表す4つの名品が誕生しました。

春の暖かさと生命の息吹が感じられる作品。主に使用されている技法は、漆を十数回塗り重ねたところに蒟醤剣で文様を彫り、その溝に色漆を埋め、平らに研ぎ出す「蒟醤」。本作にはその一種で1ミリに2、3本の線を彫る超絶技巧「布目彫り」が駆使されている。花の表現には、色漆で模様を描き、輪郭や細部に線彫りを加える技法「存清」を使用。

ライターの炎にも通じる花火は、人々の心を沸き立たせる夏の風物詩。その一瞬の閃光を「蒟醤」の技法でシンプルかつダイナミックに表現した。漆で文様を描き、乾く前に金や銀の粉を蒔いて定着させる「蒔絵」の技法で、上品な煌めきを添えている。

中秋の名月と『古今和歌集』の歌をモチーフにした秋の情緒たっぷりの一品。「蒟醤」の技法を用いて、表(写真左)は一面に凸凹を彫り、月は金色の漆で、背景は黒と黄緑色の漆でぼかしながら25回ほど埋めて研ぎ出した。裏(写真右)は白漆に川をイメージした線彫りを施し、金色から朱色にぼかしながら25回ほど埋めて研ぎ出し、紅葉に染まった川を表現している。

表(写真右)は香川県にも稀に降る雪の結晶を、裏(写真左)は北風が吹く冬の晴天をデザイン。各種の色漆を数十回塗り重ね、その色漆の層を彫り下げて文様を浮き彫りにする「彫漆」の技法で作られているため、立体感があり、手触りを楽しめるのも魅力だ。
江戸時代後期、高松藩の鞘塗師(さやぬりし)の家に生まれた玉楮象谷(たまかじぞうこく)が、唐物の漆器などを丹念に研究して確立した「香川漆芸」。「蒟醤」「存清」「彫漆」の三技法と豊かな色彩を特徴とする伝統工芸です。家庭画報は「香川漆芸」の今を牽引する作家たちと、日本の伝統工芸にリスペクトの念を持つ海外の一流ブランドを繫ぐことで、数々の名品の誕生を応援してきました。
イタリア製パンプスへの加飾から始まり、9回目を迎えた本プロジェクトの立役者は、重要無形文化財「蒟醤」保持者(人間国宝)の山下義人さん。香川漆芸発展のため、創作活動と後進の育成に情熱を注ぐ山下さんは、ときには自らも制作しながら、全体の監修を担ってきました。
今回、作家たちのパートナーになったのは、フランスのラグジュアリーブランド「エス・テー・デュポン」。香川漆芸の加飾を施す対象は、メゾンが誇る最高級コレクション「ル・グラン デュポン」のゴールドのライターに決定。「ダイヤモンドヘッド」と呼ばれるギヨシェ装飾が施された逸品です。
昨冬のプロジェクト開始から約4か月、四季をテーマにした4つの作品が完成。山下さんの総評は「昔ながらの主題を現代的な感性でデザインした、いい作品ができ上がりました。格調高いライターに合っていると思います」。一方で「エス・テー・デュポンジャポン」社長の向井 透さんも、「ライターの炎は一瞬でありながら、人を惹きつける圧倒的なエネルギーとカリスマ性を持っています。その力強さと静謐さを、漆の奥行きある美と精緻な技術が包み込むことで、唯一無二の存在へと昇華しました」と感じ入っていました。
手のひらにのせて、いつまでも眺めていたいと思わせる小さな芸術品は、シガーやキャンドル、お香などに火を灯す時間を特別なものにしてくれることでしょう。


女王エリザベス2世、ジャクリーン・ケネディ・オナシス、オードリー・ヘプバーン。150年以上の歴史を持つ「エス・テー・デュポン」の顧客リストには、時代のアイコンと呼ぶべき女性たちの名前が並びます。

4月に1周年を迎える銀座フラッグシップ(東京都中央区銀座7-6-2 1階)は種類豊富なライターはもちろん、レザーバッグ、筆記用具などの品揃えも充実。銀座店限定商品も多数あります。
「.ル・グラン デュポン」は2種の炎を出せる革新的なコレクション(画像はイメージ図。炎は同時点火ではなく、切り替え式)。


※4月上旬より銀座店にて、ご紹介したライター4点を展示販売する予定です。ぜひご来店ください。
●お問い合わせ
エス・テー・デュポン 銀座フラッグシップ
電話 03(6264)5622
URL:https://jp.st-dupont.com/
撮影/Fumito Shibasaki〈Donna〉(静物) 只安 渉〈福家スタジオ〉(香川取材) スタイリング/阿部美恵 取材・文/清水千佳子