
深澤さんがモチーフにしたのは、伝統的意匠である「日月硯(じつげつけん)」と「猿面硯(えんめんけん)」。どちらもシンプルな形でありながら、日月硯の曲線や、猿面硯のシャープな線などを表現するには職人の確かな技術が必要です。深澤さんは、そぎ落とされた美しさを持つこれらのデザインに目が留まったと話します。
桐箱や、手帳の中に「書の世界」を閉じ込めたプロダクト。硯で墨を磨って誰かのために筆を執る……。その時間こそが価値であることを思い出させてくれるようです。
奥秩父にある百名山のひとつ、金峰山(きんぷさん)一帯を中心に、かつてさかんに水晶が採掘されていた山梨県。この豊富な水晶資源が山梨県のジュエリー文化の起源です。江戸時代に独自の研磨技術を開発し、その後も世界的に稀有なジュエリーの集積産地として、高度な貴石の加工技術が受け継がれてきました。「貴石彫刻オオヨリ(TO LABO)」は、100年以上前から続く、伝統技術「甲州水晶貴石細工」を手がけています。
プロジェクトに参画した3代目の大寄智彦さんは「甲州水晶貴石細工 伝統工芸士」の国家資格、および、山梨県知事認定「ジュエリーマスター」の称号を、当時最年少で取得した、県内ジュエリー業界で最も注目されている職人の1人です。
深澤さんは、あえて技巧を凝らした要素を加えるのではなく、極限までシンプルに、そして難しい技術を必要とするものを追求。約1センチメートル四方の立方体に2種の石を組み込んだジュエリー「nougat(ヌガー)」をデザインしました。
「異なる素材の石をぴったりとすき間なく合わせる作業が、最も技術を要します」と大寄さん。最終段階での微調整は、石と石とを、手で擦り合わせながら、まるで1つの立方体のような滑らかな表面に仕上げています。

バリエーションはネックレスとリングの2種で、各2色ずつ。どんなコーディネートにもアクセントとして合わせやすいジュエリーで、きっと日々のお守りのような存在になることでしょう。
甲州織などの伝統的な繊維産業でも名高い山梨県。その歴史は江戸時代にまでさかのぼり、丁寧なものづくりの精神は今でも県内各地で受け継がれています。
戦後、甲府盆地南西部の市川三郷町はニットの集積地として発展しました。このエリアで、1945年に創業した「近藤ニット」が、2000年に立ち上げたブランド「evam eva(エヴァム エヴァ)」。リネンやコットンなど天然素材ならではの柔らかな質感や、自然からインスピレーションを受けた淡く優しいカラーが魅力です。
今回、柴田さんとコラボレーションし開発したのは、ストール、グローブ、ソックス、レッグウォーマー。カシミヤの上質で心地よい手触りと、遊び心あるカラーリングが目を引くラインナップです。 

「カシミヤの繊細な質感への真摯な向き合い方や、ブランドの美意識に深く心を動かされました」と柴田さん。ブランドが持つ静謐な品格が、柴田さんの手によっていっそう魅力を放ちます。
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文化や伝統に根付き、受け継がれてきた技術には、一つ一つ歴史や物語があります。これらが一流のデザインと出合い、組み合わさることで、新たな価値を持ったプロダクトが生み出されるのではないでしょうか。連綿と受け継がれてきた伝統的な技は、「山梨デザインプロジェクト」を通してより多くの人の心に届くことでしょう。
●YAMANASHI DESIGN PROJECT
https://ydc.pref.yamanashi.jp/ydp/
甲斐雨端硯本舗
電話:0556-27-0107
貴石彫刻オオヨリ
電話:055-224-3762
近藤ニット(evam eva)
電話:055-272-5101