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【美と美味の国・山梨へ】第7回 唯一無二のジュエリーを求めて。日本が誇る宝飾技術の街、『やまなし』へ

2026.03.26 | PR

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左・詫間宝石彫刻のストックより、ドラマチックな柄のメノウ。中・貴石彫刻オオヨリが彫刻部分を担当したペンダントトップ「リボン」。ドレープ状に彫刻した半透明の水晶が美しい(山梨ジュエリーミュージアム収蔵)。右・山梨県立宝石美術専門学校の卒業生、鶴見 蓮さんの作品「ゾウムシ」。JJAジュエリーデザインアワード2025で新人大賞を受賞しました。

山梨県甲府周辺は、かつて良質な水晶の産地でした。江戸時代以降、水晶を中心とした宝飾品の加工技術がこの地で飛躍を遂げ、現在では「甲州水晶貴石細工」として国の伝統的工芸品にも指定されています。日本の宝飾技術の「要」ともいえる甲府へ、唯一無二のジュエリーを探しに出かけましょう。
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職人がいる。技術がある。彫刻し研磨し、美が生まれる。山梨県——ここにしかない唯一無二の輝き

「水晶宝飾史」によると、甲府市北部の金峰山一帯で良質な水晶が採掘されたのは約1100年前のこと。そのほとんどは白、黒、茶など無彩色なもので、これらを水晶玉や置物(オブジェ)、数珠などに加工する研磨・彫刻技術が、この地で発展していくことになります。 山梨県で採掘された水晶の数々(山梨県立宝石美術専門学校所蔵)。

山梨県で採掘された水晶の数々(山梨県立宝石美術専門学校所蔵)。

「当時は採掘した水晶をその場で加工して、京都などへ運んでいました。甲府は石の集積場であり加工場でもあったわけです。今は閉山して石は採れませんが、培ってきた加工技術までこのまま衰退させてはいけない……そんな強い危機感を持ったのが、僕が父からこの仕事を受け継いだ20数年前のことでした」と語るのは、父親の代から甲府で宝石彫刻の工房を営む「詫間宝石彫刻」の詫間康二さん。

それよりさらに20年早く、1981年に甲府に誕生したのが「山梨県立宝石美術専門学校」です。日本では唯一の公立の宝石・ジュエリー専門学校として今も多くの在校生を抱える同校は、技術の継承と職人の育成を目的としています。飯野一朗校長は「本学の講師には、甲府で活躍する“現代の名工”たちも名を連ねています。彼らの技術に直接触れ、教わり、ときには工房にまで見学に行き、職人のすべてを吸収する。さらに技術だけではなく流通や経営といった今後のビジネスに必要なカリキュラムも取り入れて、学生たちの成長を促します。地元に寄り添いながら、山梨の大切な資産を未来へとつないでいく“砦”のような存在が、山梨県立宝石美術専門学校だと考えています」と語ります。

それでは、宝飾技術に関わる山梨の人々が抱く「決して失ってはいけない技術」とは、いったいどんなものなのでしょうか?

唯一無二の魅力〈1〉 国の伝統的工芸品に指定されている「甲州水晶貴石細工」は日々進化している

取材に同行していただいたのは、テレビ山梨のアナウンサーで、山梨のジュエリー大使としても活躍している小田切いくみさん。番組内で山梨ブランドのジュエリーを身につけて魅力を発信するほか、ジュエリー関連のイベントに参加するなど様々に活動されています。 小田切いくみ・TBS系列テレビ山梨アナウンサー。

小田切(おたぎり)いくみ・TBS系列テレビ山梨アナウンサー。山梨ジュエリー大使。現在は情報ワイド+ニュースを通して山梨県の情報をいち早く伝える生放送番組『スゴろく』の木曜・金曜のMCを務めています。

仕事でご縁があり、先述の詫間宝石彫刻の詫間康二さんとも面識があった小田切さんですが、工房の奥まで足を踏み入れるのは今回が初めて。まずは工房内にある石の集積場へ。そこには様々な産地から買い付けられた水晶やメノウ、半貴石とよばれる石がぎっしりと保管されています。

整然と棚が並んだストックスペースには、カットされた原石が木箱に入った状態で並んでいます。

「圧倒されます。博物館みたいですね。石の断面がまるで地層のよう……」という小田切さんに「これはほんの一部ですね。実際にはもっとストックしています」と詫間さん。海外で行われるストーンマーケットに足を運び、石を買い付けるそうですが「僕の場合はだいたい作りたいものを頭の中で決めてから赴きます。たとえば2日間の買い付けだったら、その中でどれだけいい石、研磨加工したときに無駄の出ない石を探すか。石って重さで価格が変わるし相場もあってないようなもの。自分が価値を見いだせる石と出会えるかどうか、時間と運の勝負です」。

詫間宝石彫刻は1階が研磨・彫刻のフロア、2階が彫金のフロアになっています。「知ってます? 石の加工って縦式と横式があるんですよ」と詫間さん。縦式というのは、甲州水晶貴石細工として国の伝統的工芸品に指定されている技法。わかりやすくいうと、石の表面に凸型に浮き彫りを施すもので、代表的なものはカメオ。日本では山梨県でしか作られていません。 縦式で彫刻した石を使ったリング。

彫刻した石を使ったリング。石の模様と鳥の姿が一枚の絵のような美しさを醸します。詫間さんは「なぜか鳥が好きでよく彫刻する」とのこと。

横式で面を磨き上げて作られたピアスやルース。

横式で面を磨き上げて作られたピアスやルース。石が内包する不純物も美しい景色になっています。

「縦式は彫刻、横式は宝石の表面を平らに研磨する方法なんですね。その違いを初めて知りました」と小田切さん。「同じ石でも産地や環境で色も形状も変化するといいますし、石のどの部分をどう研磨するかで、仕上がりがまったく変わってくる。詫間さんの彫刻を見ていると、水晶の中にあるインクルージョン(不純物)や断面の層がまるで一つの美しい景色のように見えてきます」。 石を見ながら話し始めると、止まらなくなる詫間さんと小田切さん。

石を見ながら話し始めると、止まらなくなる詫間さんと小田切さん。

水晶をくりぬいて作られたショットグラス。石の中にドラマチックな世界が広がります。

詫間さんは言います。「地中にある“なにか”を取り込んで、石は成長するんです。地下10キロメートルの場所で、時間を内包しながら結晶していく。僕はそこにすごく物語性を感じますし、同じものはひとつとしてないことにも強く惹かれます。だから僕たちのもの作りの主役は常に“石”。オブジェを作っても、ジュエリーを作っても、その思いは変わりません」。若い担い手たちの石への情熱が、山梨県の宝石彫刻の技術を未来へとつないでいきます。 工房や石のストックルームがある本社と、未知を1本はさんだ向かい側にあるギャラリー(写真上)。

工房や石のストックルームがある本社と、道をはさんだ向かい側にあるギャラリー。2026年中には、お客様が直接ここに足を運んで石選びからデザインオーダー、工房見学もできるような仕組みをスタートさせる予定。まさに唯一無二の、その人だけのパーソナルジュエリーが誕生します。

撮影/大見謝星斗

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