20年後、30年後のために本当の優しさを織る。前田源商店のオーガニックコットン

家族経営の前田源商店。前田社長(右)は奥様(中央)、お嬢様(左)とともに、オーガニックコットンや草木染の製品をコツコツと作り続けています。「主力はブランケット。赤ちゃん用のおくるみなども人気があります。娘はうちで作った生地で、コートやブラウスなどのファッションアイテムをデザイン。扱う商品にも幅が出てきました」。
「いろいろなブランドの下請けをすることで、技術力はさらに向上しました。でも“流行り廃り”のあるブランドでは、せっかく作っても生地の寿命は長くて2年。それではもったいなさすぎる」。自分達で作れば、20年でも30年でも愛され続けることができるのではないか、と前田社長は考えます。そんなときに注目したのが、オーガニックコットンでした。
3年以上農薬を使っていない畑で作られたオーガニックコットンを使用。新作のほか、作り始めた30年前から、品質も規格も変えていない製品も多いそう。「アトピーや皮膚疾患などの方が、安心していつまでも買える、使えることが大切だと考えています」と前田社長。写真はコットンリネンのストール6600円と、同じ素材に洗いをかけることでテクスチャーをつけたプチふわスカーフ1650円。
前田源商店は糸の太さや密度や色、経糸緯糸をどう組み合わせてどう織るかを自分達で設計し、オーガニックコットンの良さを最大限に引き出した生地を、用途に合うように外注で織り上げています。最初は皮膚疾患のある人、肌が弱い人、赤ちゃんをもつご家族などがお客様でしたが、次第にその肌心地、使い心地がたくさんの人へと広がっていったといいます。「それって大量生産だったらできないことですよね」と田中さん。「疾患やアレルギーのある人にとって、何十年先になっても前田源商店にはオーガニックコットンのこれとまったく同じ製品があるよ、といえることは本当の優しさだと思います。より良く生きるために必要なものとして、高い技術を惜しみなく使うその姿勢が素晴らしいなぁと感じます」。
前田源商店は糸を購入し、色や規格、デザインなどの計画を作って富士吉田市内の機織り工房へ外注。仕上がった生地を検品し商品化する、いわば郡内織物のコンダクターのような立ち位置。田中さん(右)と前田社長(左)
「このあたりは小さい工房がコツコツと作っていますから、大量生産はできません。そのかわり、とても小回りが利き、糸の買い付けから機織りまでオーダーメイド対応ができるのです。服でも、カーテンのようなインテリアファブリックでも、だいたい2~3カ月くらいで作れますよ」という前田社長。「ほかの産地との一番の違いはそこかな。隣がライバルではないのです。みんな仲間。一緒に技術を発展させていく仲間なんです」。
山梨県と郡内織物の組合や工房が協力して開発、製品化した、山梨の夏服「かいくーる」。前田源商店を含めて4つの会社が、様々なデザインのかいくーるを発売しています。写真は2025年の夏に前田源商店が出したオーガニックコットンが心地よいメンズのシャツ。1万4300円/前田源商店 TEL:0555-23-2231 https://www.maedagen-shop.com/
シルクだけじゃない。リネンの魅力を富士吉田から発信!
「ハタオリマチフェスティバル」でひと際お洒落なアイテムを扱うブースを見つけました。それが「TENJIN FACTORY」。ヨーロッパのビストロを彷彿させるような可愛いリネンのクロス、カラーバリエーション豊富なブランケットや布バッグなどが並びます。
代表取締役の小林新司さん(左)と奥様。もともとはネクタイなどのシルク織物業を営んでいましたが、ヨーロッパのアンティークに触発されて、リネンを中心とした業態にシフトチェンジ。今も1970年代製のシャットル織機(地域によってはシャトル織機とも呼ぶ)を丁寧にメンテナンスしながら、風合いのあるリネンを織り上げています。
それを見ていたナビゲーターの田中さんが「実は今日、持ってきているんですけれど……」と取り出したのが、東京のご自宅や山梨県のセカンドハウスのキッチンで使っているクロス。それがなんと TENJIN FACTORY のものだったのです。「せっかく山梨県で暮らすなら、その土地のものを使いたいと思って購入したことを覚えています。とても吸水性がよく、しかも乾きも早いので、キッチンで日々大活躍しているんです」。田中さんの使っているクロスを見て「よく育っていますね。リネンは使えば使うほど繊維がほぐれて、柔らかく白くなっていくものなんです。私たちはそれを“育つ”と表現しています」と小林さん。
写真左が田中さん愛用のキッチンクロス。よく育った、くたっと柔らかい触感です。写真右はTENJIN FACTORYで販売中のクロス。シャットル織機で織られていて、織り上がった布の端(耳の部分)がほつれない仕上がり(セルビッチ)になっています。左・AL トルション レッド3190円、右・ステッチストライプクロス ブルー4620円

ハタオリマチフェスティバル会場で、奥様がまとっていたような大判ストールが定番人気アイテム。写真はウィンターリネンと呼んでいる「リネンバイオストール」(96×170㎝)。さらりと柔らかい肌心地で、体がふわっと天然素材の温もりに包み込まれます。付属のストールピンを使って巻きスカートのようにも装えます。各2万2000円/TENJIN FACTORY https://www.tenjin-factory.com/
産学連携に取り組んでいるのも大きな特徴。郡内織物の未来が楽しみに
高い技術で作られた織物を様々なアイテムに展開している郡内織物。その中でもオリジナリティの高いブランドとして注目を集めているのが「光織物」の「kichijitsu」です。光織物は掛け軸などに使われる表装裂地や、箔糸や金糸銀糸を使った金襴緞子など、和の生地をメインにしてきた工房です。
その和織物の技術に、モダンでユニークなデザインを組み合わせ、「毎日が吉日」というテーマで生み出されたのが「kichijitsu」。実はこのブランドの誕生は、15年ほど前から始まった“フジヤマテキスタイルプロジェクト”という産学コラボレーション企画が発端でした。当時、東京造形大学に在学中だった井上 綾さん(現在はデザイナー)と光織物の協業でスタートしたこのアイディア商品は、郡内織物の新しい挑戦が生み出したヒット作として人気を博しています。
左上2点(123、ちどり)と下(ふじさん)・GOSHUINノート 11×16㎝ 各2530円、右上2点(fuji、akafuji)・おまもりぽっけ 11.5×17㎝ 4180円。おまもりぽっけはスマートフォンなど大切な小物を入れて。写真以外にも御朱印帖を入れる可愛い袋や、ブックカバー、ポーチなどいろいろなアイテムを展開しています。/光織物 TEL:0555-22-1384 http://hikari-textile.com/
一世を風靡し、いつしか忘れられ、それでも現代の職人たちの知恵と手によって再び脚光を浴び始めた山梨県の織物産業。今回ナビゲーターとして山梨・富士吉田市を巡った田中さんはいいます。「ここには、人が工夫して競い合いながら、新しくてより素晴らしいものを生み出そうとする歴史があったのですね。そんな職人たちの強い思いが、富士山の地下水のように蓄えられ湧き出しながら、今の山梨県のハタオリたちに受け継がれているのだなぁと、そんな思いがした今回の旅でした」。
次回は、良質な水晶が多く採掘されたことから発展した甲府の「ジュエリー」の魅力に迫ります。どうぞお楽しみに! ※2026年3月公開予定
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山梨県地域ブランドグループ
TEL:055-223-1584
https://hq.pref.yamanashi.jp/