• TOP
  • 話題
  • 【美と美味の国・山梨へ】 第5回 土壌と伝統が紡ぐ、山梨ワインの魅力をたずねて

話題

【美と美味の国・山梨へ】 第5回 土壌と伝統が紡ぐ、山梨ワインの魅力をたずねて

2025.11.14 | PR

  • facebook
  • line
  • twitter

日本ワイン発祥の地として長い歴史を持つ山梨県。独特の気候と土壌に恵まれ、そのテロワールを活かしたワイン造りが今も昔も盛んに行われています。

最近では、ワイナリー見学や、ワイナリー直営のレストラン、宿泊施設などのワインツーリズムも人気を集め、訪れる人々に醸造の現場と美しい風景を体験する機会を提供しています。“ワイン県やまなし”のテロワールとワインの魅力を知る旅に出かけましょう。

〈目次〉※クリックすると各見出しへ移動します
第1部 日本ワインを世界へ
三澤彩奈さんが語る、山梨のテロワールの記事はこちら↓

第2部 ワイナリーが手がける宿に泊まる
98WINEs「STAY366」の記事はこちら↓
セブンシダーズワイナリー「7c villa&winery」の記事はこちら↓

第3部 ワイナリーが営むレストランへ
勝沼醸造「レストランテ 風」の記事はこちら↓
ルミエールワイナリー「ワイナリーレストラン ゼルコバ」の記事はこちら↓


第1部 日本ワインを世界へ──三澤彩奈さんが語る、山梨のテロワール

今回の「山梨」ナビゲーター

三澤彩奈さん(「中央葡萄酒」醸造家)1923年創業の「中央葡萄酒」5代目取締役栽培醸造責任者。フランス・ボルドー大学醸造学部DUADを卒業したのち、フランス醸造栽培上級技術者の資格を取得。著書に、『日本のワインで奇跡を起こす 山梨のブドウ「甲州」が世界の頂点をつかむまで』(父の三澤茂計さんと共著。ダイヤモンド社)がある。写真は、北杜市明野の農場にて、収穫前の甲州の房の周りの葉を摘む作業をする三澤さん。

1923年創業の「中央葡萄酒」5代目取締役栽培醸造責任者。フランス・ボルドー大学醸造学部DUADを卒業したのち、フランス醸造栽培上級技術者の資格を取得。著書に、『日本のワインで奇跡を起こす 山梨のブドウ「甲州」が世界の頂点をつかむまで』(父の三澤茂計さんと共著。ダイヤモンド社)がある。写真は、北杜市明野の農場にて、収穫前の甲州の房の周りの葉を摘む作業をする三澤さん。

山梨の財産となるようなワインを

歴史ある「中央葡萄酒」(ブランド名「グレイスワイン」)の醸造家として、真摯にワインと向き合い続ける三澤彩奈さん。主に、甲州市勝沼と北杜市明野でワイン用ぶどうを栽培し、ワインを醸造しています。40社ほどのワイナリーが集まる勝沼エリアは、明治時代からの歴史を誇る伝統的なワイン産地。一方、北杜市明野は、標高700メートルの高地を活かした冷涼な気候と、日本一を誇る日照時間が特徴です。

「山梨は日本ワインの歴史の始まりの場所です」と語る三澤さん。山梨県は、日照時間や、水はけの良さ、土壌など、ワイン造りに適した環境だと話します。 さらに、山梨県は、日本で1000年以上もの歴史を持つとされる、白ワイン用ぶどう「甲州」の栽培も盛ん。これは、三澤さん自身が強い思い入れを持ち、向き合ってきたぶどうです。

「甲州は、長年山梨の人に愛されてきた品種。ワイナリーに生まれた私自身にとっては、一緒に育ってきて、いつも心の中にある大切なぶどうです」。 収穫を待つ、明野農場の甲州。美しく透き通るように輝くぶどうは、畑の宝石のよう。垣根式で育てられた甲州は、伝統的な棚栽培よりも日光を利用しやすく、比較的小さな粒でありながら高い糖度がある。

収穫を待つ、明野の農場の甲州。美しく透き通るように輝くぶどうは、畑の宝石のよう。垣根式で育てられた甲州は、伝統的な棚栽培よりも日光を利用しやすく、比較的小さな粒でありながら高い糖度がある。

従来、糖度が上がりにくいことから、上質なワインの醸造には適さないとされてきた甲州。ヨーロッパから伝えられた栽培方法、垣根栽培に挑戦し始めたのは、1992年のこと。当時は、ほとんどの甲州が伝統的な棚栽培で育てられていました。

そこから10年以上もの間、うまくいかない時期も甲州の可能性を信じて挑戦を続け、明野の三澤農場にて垣根栽培で造られた甲州ワイン「キュヴェ三澤 明野甲州2013」は、日本ワインとして初めて、世界最大のワインコンクール「Decanter World Wine Awards」にて金賞を獲得します。その後も6年間金賞を獲得。甲州ワイン、そして日本ワインの魅力を、世界に知らしめた出来事と言えるでしょう。

「キュヴェ三澤から名を変えた『三澤甲州』は、唯一無二のアイデンティティを持っているワインだと思っています。ようやく、山梨の財産になるようなワインを造ることができたような気がしました」と語る三澤さん。山梨の土壌、そして、甲州への愛と誇りがにじみます。2025年10月11日から販売を開始したヴィンテージ「三澤甲州 2022」(参考価格1万6610円。オープン価格のため店舗によって変動あり)。

2025年10月11日から販売を開始したヴィンテージ「三澤甲州 2022」(参考価格1万6610円。オープン価格のため店舗によって変動あり)。

さらに、三澤さんは、明野の三澤農場で栽培する甲州が、通常と異なる酸の構成を持つことを発見。その特殊な酸の構成を活かしたマロラクティック発酵という製法や、ぶどうの果皮、花の酵母を使用した発酵にも挑戦し、より土地の個性を感じられるワインを目指しています。地下にあるカーヴでテイスティングをする三澤さん。わずかな違いや感覚を大切にできるよう、念入りに準備をしてテイスティングに望む。この部屋で、ヴィンテージワインは熟成され、出荷される時を待つ。

地下にあるカーヴでテイスティングをする三澤さん。わずかな違いや感覚を大切にできるよう、念入りに準備をしてテイスティングに臨む。この部屋で、ヴィンテージワインは熟成され、出荷される時を待つ。

現在は、3代目の祖父が造っていた甘口ワイン、4代目の父が造っていた辛口ワインとも異なる、「熟成され、より深みを増した辛口」を目指したいと語る三澤さん。「5年、10年と熟成させた時に『より美味しくなっている』、そう思われるワインを造りたい」。強い信念を胸に、挑戦は続きます。

ワイン産地として、山梨が目指すべき姿とは

上から眺めた明野農場のぶどう畑。遠くに見える南アルプスが雨雲を遮り、晴れの日が多い。「海外の醸造家の方たちは、整然と管理された農場に驚かれます。これも“日本人らしいきめ細やかな手仕事”という意味で大切にしています」と三澤さん。

明野のぶどう畑。遠くに見える南アルプスが雨雲を遮り、晴れの日が多い。「海外の醸造家の方たちは、整然と管理された農場に驚かれます。これも“日本人らしいきめ細やかな手仕事”という意味で大切にしています」と三澤さん。

2016年、国連世界観光機関が主催した「第1回ワインツーリズム会議」に登壇した三澤さん。その経験から、「協働=コーポレーション」と「競争=コンペティション」を融合させた「コーペティション」という考え方の大切さを学んだと話します。

「山梨のワイン文化でもこの『コーペティション』を大切にしていきたい」と三澤さん。多数のワイナリーがともにライバルでありながらも、地域全体の価値を高めていく──。そんな、ワインによって作られる唯一無二の“ワイン文化”が山梨にはあるのです。

●グレイスワイン ワイナリー・ワインショップ
山梨県甲州市勝沼町等々力173
定休日:日曜(1~7月)、水曜(8~12月) 不定休あり
TEL:0553-44-1230
公式HP:https://www.grace-wine.com/

撮影/本誌・大見謝星斗

  • facebook
  • line
  • twitter