今回訪れるのは、山梨県の南西部、富士山の西側一帯に広がる「峡南地域」。市川三郷町・富士川町・身延(みのぶ)町・早川町・南部町の峡南5町に、南アルプス市を加えたこのエリアは今、「南山梨」という新しい愛称とともに注目を集め始めています。
南山梨エリアきっての景勝地・本栖(もとす)湖。富士五湖の中で最も水深が深く、水の透明度も高いため、風のない好天に恵まれると湖面に映る逆さ富士を見ることができます。その美しくおめでたい風景は旧千円札にも描かれました。
“非日常”が日常のすぐそこにある──
南山梨の豊かな自然に魅せられて
今回の「山梨ナビゲーター」串田裕梨さん(古民家シェアスペース「石川庵」運営、編集者)
岡山県出身。東京の大学院在学中に、アフリカ・ウガンダにて国際協力関連機関のインターンシップ等を経験。帰国後、山梨県・峡南地域の老舗旅館での住み込みアルバイトを経て、南山梨の魅力にはまり2015年から本格的に移住。現在は身延町で古民家を改装したシェアスペース「石川庵」を運営しながら、地域の魅力を発信する編集者としても活動しています。●石川庵 @ishikawaan00 石川庵のフォトギャラリーはこちら>>
「東京から南山梨に移り住んで一番感じているのは、ここにはそれまで“非日常”でしか出会えないと思っていた風景が、日常生活のすぐそこにあるという驚き」と串田さん。満天の星空や、澄み切った朝の空気、時折庭先に遊びに来る野生の鹿、一日で刻々と表情を変えていく富士山──。都会の暮らしでは“非日常”と思っていたこうした景色が、ほぼ毎日、目の前で繰り広げられているということに感動を覚えるといいます。
「日常生活の中で “非日常”に出会える──その驚きと感動は、学生時代、アフリカに滞在していた頃に経験した感覚に少し似ているなと思いました。でも、こんな感動を味わえる南山梨は都心から車でたった2時間半。わざわざアフリカに行くよりもずっとお手軽ですよね(笑)」(串田さん)。
歴史あるお寺の「朝活」で心身をリトリート
身延山久遠寺周辺での宿坊体験
日蓮宗の総本山、身延山 久遠寺の三門。
串田さんの石川庵から車で約10分、まず訪れたのは「身延山 久遠寺(みのぶさん くおんじ)」。鎌倉時代に日蓮聖人が開いた日蓮宗の総本山で、約1万5000坪の広大な敷地に数多くの重要文化財、そして周辺には支院の運営する20もの宿坊があります。
三門をくぐると現れるのが「菩提梯(ぼだいてい)」。高低差104mもある急斜面に配された287段の階段で、「南無妙法蓮華経」の7文字に因んで7区画に分かれています。この石段の先に「浄土(じょうど)」とされる本堂があることから、信徒はお題目を唱えながらこの階段を上っていきます。 体力に自信のない方は、有料駐車場からの斜行エレベーターで上がることができるのでご安心を。
久遠寺の魅力を最も深く味わうことができるのは「早朝」。宿坊に泊まり、翌朝の本堂でのお勤めに参加する“お寺の朝活”が、今「南山梨」のアクティビティとして注目されています。各宿坊もそれぞれに趣向を凝らし、モダンなインテリアやWi-Fiを完備するなど、ワーケーションに対応するところも。そして、早朝5時30分から久遠寺本堂で行われる朝のお勤めでは、僧侶たちの大音声による読経に身をゆだね、心洗われるひとときを過ごせます。
室町時代開創の宿坊「岸之坊」。現代的なしつらいに心安らぎます。
東の空が白み始める頃、大太鼓が鳴り響き僧侶たちがお題目を唱えながら本堂へ。
荘厳な本堂内から、木柾と読経の音が境内に響き渡ります。
●身延山久遠寺
https://www.kuonji.jp/ 朝のお勤めは5時30分から誰でも参加可能。各宿坊で写経等を含む宿坊体験プランを実施しているのでお問い合わせを。
日蓮聖人のために作られた「身延ゆば」はお土産にも
久遠寺の門前町には「身延ゆば」ののぼりを立てた商店がいくつもあります。日蓮聖人の身延山入山を機に弟子たちの常食として定着し、「身延ゆば」の名称で今に受け継がれています。
串田さんのおすすめのお店は「ゆば工房 五大」。「社長の望月五夫さんが考案した『五大の角ゆば』は、従来のゆばとは異なるしっかりとした食べ応えが持ち味。他にもゆばのアレンジ商品が豊富でお土産にもぴったり。特に『ゆばまん』は、もっちりとした食感がお気に入りです」(串田さん)。
左・薄いゆばを30枚以上重ねて厚みを出した「五大の角ゆば」。刺身はもちろん、てんぷらにしても美味。250g 1296円。 中・肉を使わず、たっぷりのゆばと椎茸、竹の子を中華風味に仕上げた「ゆばまん」。120g 300円。 右・上の「角ゆばスモーク」は、味噌漬けにした角ゆばを桜チップで燻した、チーズのような食感が乙な逸品。130g 994円。 下の「ゆばのオリーブオイル漬」は、ごはんやパスタ、野菜とも相性抜群。120g 1296円。
●ゆば工房 五大 TEL:0556-62-3535 https://www.yuba-godai.jp/
ギネス認定・世界最古の宿
西山温泉「慶雲館」で癒やしのひとときを
南山梨は、実は上質な温泉の宝庫。中でも、串田さんが大学院時代に住み込みで働いていた「西山温泉 慶雲館」は、その歴史を飛鳥時代にまで遡り、2011年に『世界で最も古い歴史を持つ宿』としてギネスワールドレコードに認定されています。
北側・西部を南アルプス、東部を櫛形山系、南部を身延山地に囲まれた慶雲館。四季折々の表情を変える野山の風景に心身ともに癒やされされます。
「西山温泉のお湯は、無色透明で肌に触れるとゆったりとした重みを感じ、疲れた体がすーっと軽くなるような気がします。山梨の食材をふんだんに取り入れた料理もおすすめ。特に、富士山の溶岩石を使った『甲州牛の溶岩焼き』はぜひ体験していただきたいですね」(串田さん)。そして、ロビーやお部屋、そして野天風呂から望む風光明媚な山の風景もまた、山懐に抱かれた秘湯ならではの贅沢。街の喧騒から離れて、豊かな自然の中で身も心もリフレッシュできる至福の宿です。
1階の渓流野天風呂「白鳳の湯」は、早川で採掘された上質な石材「白鳳石」を使った趣深い風情。日本列島を横断するフォッサマグナの地下で、長年にわたり涵養されて湧出している名湯で、千年以上一度も涸れることなく、多くの都人や名将、文人に愛されてきました。

日本料理の美と技の祭典「全国日本料理コンクール」郷土料理部門において『国土交通大臣賞』を受賞した料理を堪能して。写真は、A5ランクの甲州牛を富士山の溶岩石で焼く「甲州牛の溶岩焼き」。
●西山温泉 慶雲館 TEL:0556-48-2111
https://www.keiunkan.co.jp/次回は、フルーツ王国・山梨の魅力に迫る旅へとご案内します。どうぞお楽しみに!
※7月公開予定
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山梨県新事業・地域ブランド課
TEL:055(223)1584
https://hq.pref.yamanashi.jp/