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話題の作家 乗代雄介さんが考える“小説を書くこと”。孤高の視線がとらえるものとは?

2021.02.02

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“場所”を描かなければ物語は立ち上がらない


――風景描写の練習は、場所の見方に何か変化をもたらしましたか。

以前より、目につくものが増えたとは思います。歩いていて、いいなと思った場所に座って書くのですが、選ぶ場所も変わってきて、自分的によりよい場所を見つけられるようになってきた気がします。


――勘が冴えてきたという感じでしょうか。

そうですね、土地や自然への理解が進んだというか。道の流れが見えるようになってきたので、庚申堂とか馬頭観音とか、そういうものがありそうなところもわかるようになって。坂の途中にあるお寺や神社はだいたい怪しくて、そういう場所をうろうろしていると、地元の人が声をかけてくれたり、自分から尋ねることもあります。

移動は単純に楽しいです。歩かないことには、昔の人の痕跡に出会えないですからね。その場所に人の営みがあったことを発見すると、興味や幸福を感じます。

――今までの小説でも、移動の途中で人と出会うことから話が膨らんでいったりしています。

まずは場所がないと状況をつくることができないので、そこはいちばん重きを置いています。ストーリーを書く練習は、それこそ中高校生の頃からずっと続けているので、不遜な言い方ですが、どんな状況でも話をつくることはできるんです。

でも、自分としては話を組み立てること=物語よりもまずは場所で、その場所についてどれだけ実感を持った情報を集められるか、その作業のほうが重要です。場所にまつわる情報を集め終える頃には、人物やシーンが形を取り始めています。

――話は飛びますが、亜美も、彼女のお母さんもみどりさんも見ている『おジャ魔女どれみ』も、小説に効いていますよね。

『おジャ魔女どれみ』は、魔女見習いとして、魔法だけではない練習を重ねて、自分のあるべき姿をさがしていく少女たちの話です。料理やお菓子づくり、機織り、子育てまで、失敗をくり返しながら少しずつできるようになっていくというストーリーが、今回、考えていたこととすごくシンクロする部分があったので、ぜひ入れたいと思いました。

20年続けてきた「書き写しノート」


――このアニメへの言及もそうかもしれませんが、乗代さんは小説によく引用をされています。読んでいると、引用は創作と不可分であるように感じるのですが。

そうですね。(といって、書き写しをしているコクヨのキャンパスノートを取り出して)引っ越しで最初の2冊は失くしてしまったので、これが今ある初期のものですけど、書き写しは高校時代からずっと続けていて……。



――(書き写しは)どんなきっかけで始めたのでしょうか。

最初は自分の好きな言葉で名言集をつくろうという軽い気持ちでした。だから引用も短いんですけど、最近の書き写しは数ページにわたるものもあります。こんな感じで日々やっているので、文章を書きながら考えたり、思い浮かぶことは、たいてい書き写したものと結びついているんです。

自分が書き写しをしていなければ、意識することもないのでしょうけど、文章を書きかける時に、こんな文をどこかで書き写したなという感覚が生じるんです。そうであれば、元の文章をきちんと出したほうが、誠実じゃないかという思いがあって。

――あることをないことにはできない、という……。

そうですね。これはいろいろなところで話していることですけど、僕は、作家に限らず、自分以外の人が書いているときの感覚を知りたいんです。外国人の場合、もとは日本語じゃないし語順も違うし(笑)、わかるはずもないんですけど。でも、書き写しているだけとはいえ、ある言葉が出てくるとき、頭のなかで同じ回路を通っている、先の言葉がわかると感じる瞬間が時々あって。

――何か、その作家と重なるような感じが、ですか。

はい。だからそういう実感は極力ないことにはしたくない。基本、小説に引用しているのは、書き写してそんな感覚を持つことのできた、自分が好きな文章です。

◆後編はこちら>>

乗代雄介(のりしろ ゆうすけ)


のりしろゆうすけ●1986年北海道生まれ。2015年『一七八より』で群像新人文学賞を受賞し、デビュー。18年『本物の読書家』で野間文芸新人賞を受賞。著書に『最高の任務』、デビュー前から15年以上にわたって書いてきたブログから自選し、全面改稿した『ミック・エイヴォリーのアンダーパンツ』がある。https://norishiro7.hatenablog.com/

【乗代雄介さんの最新刊】
中学入学を前にした亜美と小説家の叔父。コロナ禍で予定がなくなった春休み、ふたりは利根川沿いに、徒歩で千葉の我孫子から鹿島アントラーズの本拠地を目指す旅に出る。『旅する練習』(講談社)
取材・構成・文/塚田恭子 撮影/大河内 禎 中島里小梨(静物)
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