エンターテインメント

柿澤勇人さんが吉田鋼太郎さんと挑む濃密な舞台『スルース~探偵~』

2020.12.03

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――演出家としての吉田さんは、どういう感じなのですか?

「難しい古典作品であっても、僕らにもわかる言葉で、僕らの腑に落ちるように説明しながら導いてくれます。すごい知識量をお持ちだし、厳しくて優しいです。芝居のことがわかっていない役者に対しては、蜷川(幸雄)さんと同じようにボロクソに言いますが(笑)、それをクリアできている者には役者目線で話をしてくれます。どうすればその役者が生理的に気持ちよく芝居ができて、よりよく見えるかを敏感に感じ取ってくれて」

――たとえば、どんなふうに?


「たとえば『アテネのタイモン』で、僕が演じる武将が怒り狂うシーンを稽古していたとき、僕がもっと強く怒りのエネルギーを表現できないかなと思いながら、椅子を投げたり、机をひっくり返したりしていたら、鋼太郎さんに『やりにくそうだな。もっと叫びたいだろ? 客席でやろう』と言われたんです。結局そのシーン全部を、客席で演じることになりました。客席の武将VS舞台上の貴族というような形で。やりがいはあるけど、絶対に喉を潰すなと思って、毎日もう入念に発声練習と喉のケアをしましたよ。きっとこの演出をクリアできたら、また鋼太郎さんと一緒に芝居ができると信じて」

――それが見事に今回につながったわけですね。今年は出演予定だった2本のミュージカルがコロナ禍で公演中止になった一方、『エール』でNHK連続テレビ小説に初出演した柿澤さん。周囲の反応はいかがでしたか?

「朝ドラの影響力は、やっぱりすごいんだなと実感しました。遠方の親戚からも“見たよ”と連絡が来たり、いろいろな世代の方が見てくださって。そんなことは初めてだったので、参加できて本当に嬉しかったです。ただ、日本ではまだまだミュージカルはマイナーな存在なんだなと、悔しさも感じました。ミュージカル界の人間が続々と出演していた『エール』をきっかけに、ミュージカルに興味を持つ人が増えていけばと思いますし、こういう機会がもっともっと増えたらいいなと思います」


「出し惜しみしないこと」が、演じる際に大切にしていること。「それが稽古でも、どんなにしんどくても、その日できることを出しきるようにしています」
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