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パヴァロッティの別荘の料理人アンナが作る「ラグーのタリアテッレ」

2020.11.25

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パヴァロッティが愛したイタリア料理のレシピ 02(全3回) 誰もが知る不世出のテノール歌手、ルチアーノ・パヴァロッティ(1935~2007)の人間味あふれる素顔の魅力を綴った『パヴァロッティとぼく-アシスタント「ティノ」が語るマエストロ最後の日々』。本に書かれている料理にまつわる数々のエピソードからは彼の人間味あふれる魅力が垣間見えてきます。食通のパヴァロッティが愛したイタリア料理のレシピを、翻訳者の楢林麗子さんのエッセイとともにお送りします。前回の記事はこちら>>

02.【パヴァロッティの別荘の料理人アンナおばさんのレシピ】
ラグー(ミートソース)のタリアテッレ


ペーザロの別荘で料理をするパヴァロッティ。


――別荘は、まるで絵葉書のようなパノラマの景色が見えるサン・バルトロの丘の上の、海岸からほど近い場所にあった。天気も最高で、夏のようだった。マエストロは海に面したテラスの椅子に座り、昼食の相談をするためにアンナを呼んだ。彼女がこの家の事実上の主だった。


なぜなら、たとえ昼食を6人分用意してくれと言われていたのが急に20人分になっても(そういうことはよくあったのだが)、顔色ひとつ変えなかったからだ。この日ももう全部用意ができていた。家で飼っているニワトリの卵を使った自家製タリアテッレとミートソースだった。

庭先には鶏、鴨、ウサギ、ホロホロ鳥などの小動物たちが放し飼いにされていて、そのまわりを二匹の大きなシェパードが歩きまわっていた。

==中略==

“彼女の”家ではいつもコーヒーの香りが漂い、コンロではコトコトとパスタ用のミートソースやシンプルなトマトソースが煮えていた。 「アンナの作るタリアテッレは世界一だ!」とマエストロは幸せそうに言っていた。まさにマエストロの言うとおりだった。食卓には、いつも庭で飼っている動物の肉料理や、かごに盛ったさくらんぼが出された。庭の畑のアンズや桃、ブドウも用意された。

(『パヴァロッティとぼく』16節より)


ペーザロの別荘の料理人アンナおばさん
文/楢林麗子


イタリア・アドリア海沿いのペーザロにあるパヴァロッティの別荘には、管理人兼料理人のアンナおばさんがいました。

「アンナは小柄できれいな青い目をしていて、年のせいで少し背中が曲がっていた。もうすぐ80の声を聞くというのに、それでも毎日25kgの穀物の袋を背負って動物たちの世話をするために行ったり来たりしていた」と描写されています。

彼女の作るラグー(ミートソース)と卵入りの自家製タリアテッレもまた、イタリアの伝統的な家庭料理。彼女の料理をこよなく愛したパヴァロッティの気さくな人柄が感じられます。

毎夏をこのペーザロの別荘で過ごすのを恒例にしていたパヴァロッティ。毎日何十人もの招待客とともに囲む夕食のテーブルに並んでいたのは、アンナの作った料理と水よりも多いランブルスコ(エミリア地方特産の微発泡赤ワイン)のボトルでした。

「ティノ」(『パヴァロッティとぼく』の著者)はキッチンでアンナを手伝いました。そして、料理とともに招待客が楽しみにしていたのはパヴァロッティの機知とユーモアたっぷりの会話でした。

モデナの友人たちと食卓を囲むパヴァロッティ(右から4人目がティノ)。 ペーザロの別荘での最後の夏2007年。(『パヴァロッティとぼく』より)

8月15日の「聖母被昇天の祝日」にはこの別荘に、医者や弁護士から、家の設備メンテナンス会社の作業員、電気工事の技師、庭師までも招待し、盛大なパーティを催すのが恒例でした。

イタリア・エミリア地方のモデナで、パン職人の父のもとに生まれたパヴァロッティは、世界的大スターになってからもその庶民の出自を忘れず、周囲への気配りと気さくな態度で多くの人たちに愛されたのです。

ラグー(ミートソース)のタリアテッレ
Tagliatelle al ragu


※レシピは家庭料理なので、およその分量を記載してあります。お好みに合わせて調節してください。

【自家製タリアテッレ】(※第1回のレシピのタリアテッレもこちらを参照)
●材料
・小麦粉

・卵(アンナおばさんは別荘の庭で放し飼いされていた鶏の卵を使った)

小麦粉1kgに対して卵8個の割合(ひとり小麦粉100gくらいを目安に)

●作り方
小麦粉と卵を混ぜてこねる。オリーブオイルを少し加えると、よりなめらかな生地になる。30分以上寝かせる。麺棒で薄くなるまで伸ばし、1cm弱の幅に切る。

【ラグー(ミートソース)】
●材料(4人分)

・ 玉ねぎ 1個

・ にんじん 1本

・ セロリ(茎の部分) 1本

・ 牛ひき肉 200g

・ 豚ひき肉 200g

・ 塩、コショウ 適宜

・ パッサータ※(粗ごししたトマト) 約600g

・ バター 少々

・ パルミジャーノ・レッジャーノチーズ 約50g

●作り方
1)フライパンでみじん切りにした玉ねぎ、にんじん、セロリを軽くいため、塩、コショウも加えて炒める。

2)牛ひき肉と豚のひき肉も加える。

3)パッサータ(※缶詰のホールトマト、カットトマトなどをこしたものでもよい)を加える。

4)沸騰してきたらふたをして、とろ火にして3時間ほど煮込む。

5)深鍋にお湯をわかし、沸騰したら塩を入れ、自家製タリアテッレを入れる。2分たったら水を切りバター少々を加えて混ぜ、ミートソースを加えて混ぜる。

6)最後におろしたパルミジャーノをかけて混ぜればできあがり。

『パヴァロッティとぼく-アシスタント「ティノ」が語るマエストロ最後の日々』


エドウィン・ティノコ 著 楢林麗子 訳 小畑恒夫 日本語版監修 アルテスパブリッッシング刊 ・詳しくはこちら>>
ルチアーノ・パヴァロッティ(Luciano Pavarotti)
1935年10月12日、イタリア・モデナ生まれ。輝かしい歌声から“キング・オブ・ハイC”と讃えられた20世紀最高のテノール歌手。レコード・セールス1億枚。世界で最も売れたクラシック・ヴォーカリストとして知られる。「神に祝福された声」と評されたイタリアの空を思わせる明るく豊かな美声は世界中の人々から愛された。2007年9月6日、モデナにて死去。

エドウィン・ティノコ(Edwin Tinoco)
『パヴァロッティとぼく―アシスタント「ティノ」が語るマエストロ最後の日々』の著者。“ティノ”はパヴァロッティの付けた愛称。ペルー・カハマルカ生まれ。ペルーの首都リマの5つ星ホテル「ラス・アメリカス」で客室担当係として働いていた1995年(当時28歳)にパヴァロッティに出会い、彼が亡くなるまでの13年間、パーソナル・アシスタントを務める。

楢林麗子(ならばやし・れいこ)
翻訳家。「三大テノール」をきっかけにオペラに興味を持ち、鑑賞したイタリア・オペラのビデオやDVDは150本以上、オペラやコンサートは、海外公演約30回、国内公演約90回。好きな言葉は「Never too late(なにごとも遅すぎることはない)」。50歳からイタリア語を学び始めて、『パヴァロッティとぼく―アシスタント「ティノ」が語るマエストロ最後の日々』が初の翻訳となる。
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