カルチャー&ホビー

今も息づく福澤諭吉のDNA 。各界のリーダーに聞く「福澤の教え」

2020.10.06

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各界のリーダーに聞いた質問


(1)福澤諭吉の「言葉」、「教え」に関して好きなものは?
(2)福澤諭吉の考え方に影響を受けていると思われる点。

(3)今こそ生かすべき福澤諭吉の言葉・考え方とは?




【半学半教】
服部真二さん(セイコーホールディングス会長 兼グループCEO兼グループCCO)


(1)福澤先生は「公徳」「公智」といった言葉を通じて、社会における公正さを非常に重視されていました。持続的な成長を社会課題の解決を通じて実現させるSDGs的なアプローチを早くから提唱されていたのだと思います。

(2)組織の構成員、いわゆるステークホルダーが共に協力して組織を運営していこうという「社中協力」、教え教わる者は、それぞれが共に学びあう関係であるという「半学半教」、福澤先生のこれらの考えは、組織が自ら学び成長する自立型学習機能を、組織に埋め込む考え方だと思います

組織というものは、どうしても縦割り型になり、縦方向のコミュニケーションは頻繁に行われますが、どうしても横の連携が弱くなります。福澤先生の教えを実践する意味でも、組織人は、「横に走る人材になれ」ということを私の会社でも繰り返し説いています。

(3)福澤先生の名著『文明論之概略』において、江戸と明治、激動の二つの時代を生きた者だからこそ成し得ることがあると語られています。Beforeコロナ、Afterコロナを体験している現代の我々にも当てはまる言葉だと思います。

この社会的ピンチに立たされた我々だからこそ出来ることがある。ピンチをチャンスに変えられるのは、この時代に生きる我々に与えられた大きなテーマであると考え、日々の業務に当たっています。

服部真二(はっとり・しんじ)さん
幼稚舎からの慶應義塾育ちで慶應義塾大学経済学部卒業後、1975年三菱商事入社。2010年セイコーホールディングス社長、2012年会長兼グループCEO、2020年よりグループCCOを兼務。


『学問のすゝめ』初編
福澤諭吉『学問のすゝめ』初編(初版)。訳述書でなく、福澤が自身の言葉で西洋文明の精神を説いた最初の書。(写真/慶應義塾福澤研究センター)

【今日も生涯の一日なり】
松山剛己さん(松山油脂社長)


(1)「されば賢人と愚人との別は、学ぶと学ばざるとによってできるものなり」という言葉は、「天は人の上に人を造らず、人の下に人を造らずと云えり」という有名な一節に続くものです。人は生まれながらに平等であると安心していると、実はそうではなく、機会だけが平等であり、その結果は後天的に不平等であると、福澤諭吉は教えています。

中学生の時、初めてこの言葉を知ったものの、深く考えることもなく忘れていました。再びこの言葉に触れたのは、30歳を過ぎて家業に戻ってから。謙虚な気持ちを忘れず他人から学ぶこと、固定観念を持たず歴史から学ぶこと、この2つの大切さを痛感します。

(2)山を高くするためには裾野を広げなければならない、という福澤諭吉の考え方が好きです。「独立自尊」「一身独立して一国独立す」という言葉を用いながら、福澤諭吉は、国民一人ひとりが自立心を胸に、学びと工夫を続けることを奨励しました。

また、「仕事というものは偶然できるものではない。善い事も悪い事も、すべて人間がこれをやろうという意思があってこそできる」として、強い意思を持ち続けることの大切さを説きました。

私は、いま企業経営者という立場にありますが、社員にいかに主体的に働いてもらうか、いかに仕事に対する誇りを感じてもらうか、に頭を痛めています。経済的理由だけでなく、働くことを自分を成長させるため、新たな挑戦のためととらえてもらいたい。そう思うとき、福澤諭吉から、仕事の意義や働く楽しさについて、学ぶ点は多いと考えます。

(3)「今日も生涯の一日なり」という福澤諭吉の言葉は、含蓄に富んでいます。永遠に続くだろうと思われる長い時間軸(生涯)の中にあって、あっという間に過ぎていく今日一日を精一杯に生きよう。遠くをはかりながらも、目の前のいまとしっかり向き合おう、というメッセージは、コロナの時代、将来への不安に押しつぶされ、固まってしまっている私たちに、前を向いて行動することの価値を思い出させてくれます。

正解を求めるのではなく、いまできることを考え、一歩踏み出す勇気を持つべきかもしれません。明治の変革期を生き抜いた福澤諭吉は、現代を生きる私たちに様々な示唆を与えてくれます。

松山剛己(まつやま・つよし)さん
慶應義塾大学経済学部卒業後、博報堂入社。三菱商事を経て1994年松山油脂入社。2000年社長就任とともにマークスアンドウェブを設立し社長に就任。

【活用なき学問は無学に等し】
玉塚元一さん(デジタルハーツホールディングス社長CEO)


福澤先生からは主に以下の2点について大きく影響を受けた。

1.学ぶ事の大切さと学びの本質について


●活用なき学問は無学に等し
●賢人と愚人との別は、学ぶと学ばざるとによってできるものな


人間は本来平等であり、生まれ育ちが違えども、一人ひとりに大きな能力の差はない。人生の差を作るのは、学びに対する姿勢である。

学ぶ事の大切さ、学ぶ事への貪欲さを持てる人とそうでない人では自ずと結果に差が出る。

また単に学問として学べばよいのではなく、学んだ事を実践して初めて学びの意味、価値が出るという事についても大いに影響を受けた。

2.前を向いて挑戦を続ける事の大切さ


●進まざる者は必ず退き、退かざる者は必ず進む

私はこれまで常に困難でも挑戦を続ける事を意識して生きてきた。挑戦するリスクと挑戦しないリスクを考え、常に困難な道を選んできたつもりである。その姿勢の根源には福澤先生の上記の教え、言葉が間違いなくある。

玉塚元一(たまつか・げんいち)さん
幼稚舎からの慶應義塾育ちで慶應義塾大学法学部政治学科卒業後、旭硝子入社。ファーストリテイリングほか、2社を経て2014年ローソン社長、翌々年会長。2017年より現職。
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