専門家に聞く、更年期の心身の不調の乗りきり方。医療から代替療法、食と運動まで

基本は食事と運動。そして代替療法、医療へと段階を踏む

ホルモンの欠乏を補うといっても、すべての人にホルモン補充療法が必要なわけではありません。自然で穏やかな方法から即効性のある強力な方法へ、段階を踏んで取り組むことが大事です。

まずは食事や運動など生活習慣の改善。次に代替療法（漢方薬、アロマテラピー、鍼灸、サプリメントなど）を試みる。それでも治らない場合はホルモン剤や抗うつ剤など医療（西洋医学）の力を借りる。

「治療に対する感受性には個人差があり、大豆と山いもと鶏肉を食べて運動するだけで元気な人もいれば、ホルモン剤を使わないと元気が出ない人もいます。まず負担の少ない方法から実行し、必要に応じて次の段階に進むのが無駄のないやり方です」


関口先生が更年期症状に対してよく用いる代替療法は漢方薬です。漢方では老化を「腎虚」といい、先天的な生命エネルギー（腎気）の異常な減少と考えています。

腰が痛い、目がかすむ、耳が遠い、がんばりがきかない、寒さに弱い、性欲がなくなるといった症状に対して、補腎剤（体質に応じて八味地黄丸（はちみじおうがん）、牛車腎気丸（ごしゃじんきがん）、六味丸（ろくみがん）など）を処方します。

女性ホルモン補充療法には経口剤（飲み薬）や塗布剤（貼り薬、塗り薬）などがあり、貼り薬は性器出血のコントロールが難しい、飲み薬は血栓症のリスクがやや上がるなど副作用も異なるので、医師の指導のもとでいくつか試し、自分に合う方法を選択するとよいでしょう。

閉経後性器尿路症候群（GSM）は中年女性の5割以上がかかっているとされる一般的な疾患です。

陰部のイガイガ感、頻尿・尿漏れ、性交痛など不快な症状がありながら我慢している人が多いのですが、段階を追った治療が可能です。

「まずは骨盤底筋トレーニングを行い、潤滑剤、保湿剤を試す。それで改善しなければ女性ホルモン軟膏を外陰部に塗る（部分投与）、次に飲み薬の女性ホルモンを使う（全身投与）。さらに男性ホルモンを併用する方法もあります」

また、性ホルモンはコレステロールから作られるので、コレステロール値を下げすぎない注意が必要です。

更年期症状に対する段階別処方箋