エンターテインメント

坂本龍一さん【編集者が見た素顔】映画「Ryuichi Sakamoto: CODA」公開

2017.11.29

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ドキュメンタリー映画に込められたメッセージ

坂本龍一さんを追ったドキュメンタリー映画「Ryuichi Sakamoto: CODA」が公開されました。これまで家庭画報本誌にも、度々ご出演いただいた坂本龍一さん。多くの人を惹きつけ、魅了してやまない坂本さんの素顔を、『家庭画報』担当編集者の島本公子が取材当時のエピソード交えて紹介すると共に、映画の魅力を紹介します。


■プロローグ 津波に遭ったピアノ


映画は冒頭、津波で水を被った宮城県名取市の農業高等学校のピアノの場面から始まった。静かな静かなオープニングである。坂本さんが体育館の壇上に置かれたピアノの鍵盤をひとつひとつ音を確かめるように弾いている。
「津波という自然の猛威によって水に溺れたピアノの音を聞き、『ピアノの死体のような感じを受けていたんですよ』と語るが、後にこの想いが大きく変わることになる――」と映画のパンフレットには書かれている。

実は2012年7月、『家庭画報』ではこのピアノを取材している。


坂本さんが、被災した学校の楽器を修復して元の学校へ返す「こどもの音楽再生基金」を立ち上げたのは震災直後の2011年7月。そしてその楽器で練習を再開した生徒や学生が仙台市のTホールに集まった初めての演奏会に、私たちは同行取材したのである。その場には、2012年から密着取材撮影していた監督のスティーブン・ノムラ・シブルさんも同行していた。

仙台の前に立ち寄った会津若松のお蕎麦屋さんで、坂本さんが「なんかずっと密着撮影しているんですよ」と含羞に満ちた面もちで紹介して下さったのを覚えている。
まさか、このような映画になるとは、その時は思いもよらなかったし、その後の坂本さんのご病気や活動のことを考えると誰も予測しなかったことが起きたのだと思う。

「これは最終楽章のはじまりなのか――――世界的音楽家 坂本龍一の音楽と試作の旅を捉えた、初の劇場版ドキュメンタリー映画」


とパンフレットに紹介された映画の始まりにこころが震えた。

■家庭画報と坂本龍一さん



≪坂本龍一 in 東北≫――子どもたちに音楽を再び


2013年1月号掲載 撮影/阿部稔哉

2011年に取材したオックスフォードでの吉永さんとの対談の中で、忘れられない坂本さんの言葉がある。「被災支援も非戦の活動も、大切なのは継続することです」。
私たちは、それを実行したいと思った、翌年、東北へ子どもたちとの初のコンサートに行かれる坂本さんに同行取材が叶った。

その年、NHK大河ドラマ『八重の桜』のテーマ音楽を作曲されることが決まり、まずは会津若松訪問となったのだった。そして「こどもの音楽再生基金」主催の「スクール・ミュージック・リバイバル・ライブ」。必ずしも「良い音」ばかり出せる子どもたちだけではなかったと思うが、朝から夜まで坂本さんは休むことなく満足そうに観客席で聴き、また舞台で共に演奏し、愛のこもった言葉で褒め、励まし、楽しんでいた。子どもたちから「坂本さんと同じ舞台に立てたなんて夢のよう」の声が聞かれた。

翌日、既にその春に坂本さんが訪問された宮城県名取市の宮城県農業高等学校や大崎市の古川学園高等学校も取材した。

「大きな視点で見ると、日本列島はここ1万年くらい、さほど変化していません。でもそれは『たまたま』で宇宙の尺度で見たら一瞬です。


(中略)地球という星は決して優しいばかりでなく、強大な力も持っていて、私たちはそういう星の上で生活しているということを思い出させてくれたのが、今回の震災です。同時に、宇宙の片隅のちっぽけな地球で地球誕生から45億年のうちの1万年の間、人間が生を享受できている奇跡も思い出してほしいのです。その奇跡を思ったら殺し合ったり、何百世代先まで消えない核のゴミを残したりといった愚かな行為はできませんよね? 何をすべきか、自ずとわかってきます」(要約)

多忙な音楽活動をしながらも宇宙から俯瞰した決してぶれない視点。5年前のインタビューから。根幹は変わらずさらに進化したメッセージが「CODA」に結実した。
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