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芥川賞作家 高山羽根子さんが受賞作『首里の馬』で紡ぎ出したもの

2020.08.04

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〔高山羽根子さんの自選3冊〕


たしかにSFの賞をいただいたけれど、SFの世界では、これ、どうなの?と思われているし、純文学でも、ちょっと違う人みたいなので、ふたつのはざまにいる感じですね(笑)、という高山さん。どの作品も手探りで書いているけれど、いつどうなるかわからないこのご時世、機会をもらえる限り、そのときどき自分が思うものを書いていきたいと話す作家の、自選3冊とは。

『うどん キツネつきの』(東京創元社)


表題作は、第1回創元SF短編賞の佳作だったので、ウェブも含めてほかで書いた作品をまとめて短編小説集として出していただくまでに5年近くかかりました。これが最初の一冊で、自分にとっては書くこと、やりたいことの、ひとつの基準ができたという感じです。


『うどん キツネつきの』は飼っている本人と家族だけが、その生き物を犬と思っているという話です。それが何なのか。生き物って赤ちゃんのときは、どんな生き物かわからない場合があるのに、そういう状態のものを拾っても、人間は決して死なさないように努力します。自分に危害を加えられない限り、治療や介護をしたり、食事を与えるのは人間の本能なのか。自分とわかり合えなさそうな生き物とともに暮らすことについて書きました。

『オブジェクタム』(朝日新聞出版)


初めて純文学系の雑誌で書かせてもらった中編作品で、完全に手探りで書いていましたし、思い入れもすごくありました。文学賞に応募した小説は100%自分で完結していて、善し悪しをいわれるのはその後ですが、この本は最初から編集の方と話し合って、少しずつ詰めながら進めたということも、すごく新鮮でした。自分のなかでは情報についての話として、きちっと書いたという気があります。

『居た場所』(河出書房新社)


SFっぽい話でもなんでも、とにかく自由に書いていいですよ、と、担当の方がおっしゃってくださって。小説を書くうえでの手探り感は、書くにつれて減るのかと思っていましたけど、逆にどんどん増していますね(笑)。小説の主人公は男性ですが、私に近い世代です。旅に対する考え方とか旅先で思うこと、心のなかで考えていることなど、書いているうちにどんどん自分が反映されていって。そういう意味で、自分にいちばん近い人です。

連載「小説を書くということ」のバックナンバー>>

高山羽根子(たかやま はねこ)


たかやまはねこ●1975年富山県生まれ。2010年『うどん キツネつきの』が第1回創元SF短編賞佳作に選ばれる。16年に『太陽の側の島』で第2回林芙美子文学賞大賞受賞。『首里の馬』で第163回芥川賞を受賞。著書に『オブジェクタム』『居た場所』『カム・ギャザー・ラウンド・ピープル』『如何様』、近刊は、池澤春菜さんとの共著『おかえり台湾 食べて、見て、知って、感じる 一歩ふみ込む二度目の旅案内』。公式Twitter @HighMt_HNK

【高山羽根子さんの最新刊(第163回芥川賞受賞作)】

沖縄の古びた郷土資料館に眠る数多の記録。中学生の頃から資料の整理を手伝っている未名子のもとに、ある台風の夜、幻の宮古馬が迷いこんできて……。『首里の馬』(新潮社刊)
取材・構成・文/塚田恭子 撮影/大河内 禎 大見謝星斗(静物)
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