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【女医たちの更年期物語】皮膚炎、うつ、離婚問題に苦しんだ日々。ダイビングとの出会いが自分を変えた

2017.11.24

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医療法人社団 結草会 いけした女性クリニック銀座院長 池下育子先生の場合

「海の中から太陽を見上げてごらん。世界観が変わるわよ」――友人のひと言が、池下育子先生(64歳)の心に強く響きました。仕事一筋、運動も苦手で泳げなかった先生が、こともあろうにダイビングを、64歳という年齢で「やってみよう」と思い立ったのです。

その背景には、40代前半から続く心身ともに追い詰められた状況がありました。「このままではいけない、自分を変えなければ」と意識し始めた頃だったのです。

別居中の夫との離婚調停が長引き、お互いを責め合う殺伐とした毎日。やがて生じた湿疹は全身に広がり、体じゅうを激しいかゆみが襲います。診断は自家感作性皮膚炎。何か所もの皮膚科を受診し、塗り薬、飲み薬、食事療法、生活改善とあらゆる方法を試しました。お肉もアルコールも禁止、ご飯は玄米。日中の外出を控え、夏でも長袖長ズボン。汗をかく運動はしない。


「治りたい一心でひたすら禁欲的な生活を送ったのに、何をやっても効かない。寝ている間も全身を搔きむしるので布団は血だらけ。入眠剤が手放せなくなり、ステロイド薬の量も増える一方。四六時中続くかゆみと絶望感で、精神的にも大きな負担がかかり、抗うつ剤も必要になりました。ほとんど薬物依存に近い状態でしたね」

そんな3年間で体重は10kg減。体力も生気も失った先生は「このままいつ死んでもおかしくない」と思ったそうです。しかし、底辺まで落ちて万策尽きると、人は開き直れるのかもしれません。ふと、「どうせ治らないなら、我慢するのをやめよう」と吹っきれたといいます。やっと離婚調停も片づき、自立して生きていく覚悟を決めた頃でした。

「こんな弱々しい医師に、誰がみてもらいたいと思うだろう。とにかく体力をつけよう。食べたいものを食べて、大好きなビールも飲んで、お日さまにも当たろう!」――こうして生活を元に戻すと体重も増え、信じられないことにあれほど苦しんだ皮膚炎が噓のように治っていったのです。
ちょうどそのタイミングで誘われ、始めたのがダイビングでした。クリニックの仲間と一緒にライセンスを取り、伊豆で潜ってみると……すぐに虜になり、1週間に一度のペースで通うように。夢中になれる趣味の存在が先生にとって最も効果的な薬でした。

「目の前を泳ぐ無数の魚、悠々と通り過ぎるウミガメ。自然の中に一緒に交ぜてもらっている感覚が最高。心から楽しいと思ったのは本当に久しぶりで、そのうちに抗うつ剤も必要がなくなっていました。ダイビング仲間は20代、30代の若者たちです。ガイドさんにも〝年齢に甘えて周りに迷惑をかけないように〟と釘を刺されています。自立して安全に楽しむために、本格的にジムに通い始めました。80歳になっても潜りたいから(笑)」

こうして心も体も元気になった先生は食の大切さも痛感したといいます。「楽しく食べることは人間の大事な欲望の一つですから、健康のために満たしてあげないと。海の中でアジタマ(団子状になって泳ぐ無数のアジの集団)に出会うと、今日のご飯はアジフライかな、アジのたたき丼かな?って(笑)」

40代に経験した体の不調や、精神的な落ち込みと苛立ちの背景に離婚問題があったとはいえ、ホルモンの変化も関係していたのではないかと池下先生はいいます。

「40代でイライラが激しくなる、攻撃的になる、反動で落ち込むなど今までとは違う情緒的な乱れが生じたら、ホルモンの影響も考えられます。適切な治療で穏やかな日常を取り戻せる可能性があるので、婦人科への受診をおすすめします」

Information

いけした女性クリニック銀座

東京都中央区銀座2-8-4 泰明ビル3階

    池下育子(いけした・いくこ)


    診療の合間にはダイビング雑誌を眺めることも。月刊誌『DIVER』を手に。

    1953年青森県生まれ。帝京大学医学部卒業。
    同大学麻酔学教室助手、国立小児病院麻酔科、東京都立築地産院産婦人科勤務を経て、92年池下レディースクリニック銀座を開業。
    銀座を選んだ理由は「女性が、美容院に行くような華やいだ気持ちで来院できるように」。
    働く若い女性や更年期世代の女性の、仕事や人間関係の悩み、心身のトラブル全般に対応。
    99年弟で小児科医の宮野孝一氏と医療法人社団 結草会を設立。2012年病院名を改称。
    取材・文/浅原須美 イラストレーション/水上多摩江 撮影・八田政玄 【連載】女医たちの更年期物語 ほかの物語を読む ・卵巣手術後、体と仕事と生活の調和を考えながら迎えた50代 医学の記事は毎週金曜更新です。
    「家庭画報」2017年12月号掲載。
    この記事の情報は、掲載号の発売当時のものです。
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