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サラダのように色とりどりな、それぞれの女性の人生を描く『女神のサラダ』

2020.07.06

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〔免疫力がアップする本〕
『女神のサラダ』

おうちで免疫アップ 人は心身がゆったりと落ち着き、楽しい気持ちになると、副交感神経の働きにより免疫力が高まるといわれています。心がときめく人のインタビュー、心がじんわりと温かくなる本と音楽など、家庭画報のナビゲーターがとっておきの情報を選んでくれました。前回の記事はこちら>>
『女神のサラダ』

瀧羽麻子 著/光文社 1700円

群馬県昭和村のレタス農家、北海道京極町の広大な農場、和歌山県広川町の果樹園、岩手県葛巻町の牧場、小豆島のオリーブ園......。全国各地の農場を舞台に、それぞれの事情を抱えて農業の世界に足を踏み入れた女性たちの想いとともに、農業の現場のリアルを描いた8つの短編集。


ナビゲーター/中江有里(なかえ ゆり)

子どもの頃、野菜が嫌いだった。こんなに味気ないものをどうして食べなければならないのか、と無理やり口に詰め込んでいた。しかし現在、野菜を食べない日はほぼない。特にサラダはわたしにとって、体だけでなく、心も浄化してくれる一品だ。

本書は日本全国で農業に携わる女性たちの想い、悩みが描かれる短編集。農業に縁のない人でもきっと共感せずにいられない。いわば「読むサラダ」である。

「夜明けのレタス」の舞台、群馬県昭和村の農場では、夜明け前にレタスの収穫が始まる。

主人公の沙帆は、心身に不調をきたして東京の勤め先を辞めて高樹農場に転職したが、そのことをまだ親に言えずにいた。

SEから農業へ転職する......それは沙帆の希望というより、ともかく環境を変えるためにしたこと。沙帆は農業にやりがいを感じつつも、どこかに後ろめたさを残している。

一度躓いた沙帆が、再び躓くことを過剰に恐れる気持ちが痛いほどわかる。その不安をほどいていくのは、農業であり、共に働く仲間だった。

農業には仲間や同僚がいる。それは家族であることも珍しくない。

「レモンの嫁入り」は、夫の実家である和歌山県広川町の果樹園で働く美優が主人公。移住してすぐ、農作業に慣れない美優は、失敗をして義父を激怒させてしまった。それ以来、義父との距離が縮まらない。

知り合いの少ない町で、やがて助け合える友人ができたが、ある日友人の身にトラブルが起き、美優はにっちもさっちもいかない状態に陥る。そこで助けてくれたのは......。

本書には、農業の家に生まれた人、外から農業へ飛び込んだ人がいるが、どちらも同じくらい農業を愛し、農作物を何より大事に思っている。作り手が手をかけた分、作物は応えてくれるのが魅力なのだろう。

最終話「トマトの約束」を読みながら、ある場面で「あっ」と声が出た。本書のタイトルはこの話に集約されていると言っていい。

『女神のサラダ』にはさまざまな人生と作物が入っているが、逆に言えば、サラダのように色とりどりの違う種類の作物が入っているから、人生は面白い。どの甘みも苦みもいとおしく思えるのだ。

中江有里さん

中江有里(なかえ ゆり)
女優、作家。『トランスファー』『残りものには、過去がある』など著書多数。新聞、雑誌、テレビなど各メディアで書評を手がける。今年は音楽活動も再開。現在『yom yom』で小説「愛するということは」を連載中。


「#今月の本」の記事をもっと見る>>

中江さんセレクション

『綴る女 評伝・宮尾登美子』


『綴る女 評伝・宮尾登美子』

林 真理子 著/中央公論新社 1500円

宮尾登美子がフィクションで描いた世界は実在したのか。そのことを知りたい。彼女のファンを公言する著者が描いた、作家・宮尾登美子に迫る評伝。




『坂下あたると、しじょうの宇宙』


『坂下あたると、しじょうの宇宙』

町屋良平 著/集英社 1600円

自分には才能がないと思いつつ詩を書いている毅と、毅が天才だと思っている彼の親友あたる。文学にかける高校生の熱を伝える青春エンタメ小説。
表示価格はすべて税抜きです。
取材・構成・文/塚田恭子

『家庭画報』2020年7月号掲載。
この記事の情報は、掲載号の発売当時のものです。
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