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茶箱あそび

おうちで楽しむ日々の抹茶 ふくいひろこ「京都発 茶箱あそび、つれづれ」4月

2020.04.17

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〔連載〕京都発 茶箱あそび、つれづれ 京都在住のふくいひろこさんが、ひと組の茶箱を通して、ときには京都の歳時や工芸を味わい、ときには茶を点てる場所を変えて、日常に抹茶を楽しむ具体例をお伝えします。一覧はこちら>>

4月
おうちで楽しむ日々の抹茶


ふだんからダイニングのテーブルで朝の抹茶一服を楽しんでいます。

紅茶や煎茶の日もありますが、抹茶はさっと点てられるので登場回数が多いお茶。人からよく「抹茶はどうもハードルが高くて」と言われるのですが、やってみればとても簡単です。いわば粉末の緑茶に、湯を注いで、攪拌するだけ、なのですから。


もちろん茶道という世界があり、そのお点前にはきちんとした手順がありますから、攪拌するだけなどというと叱られそうですが、ふだんの飲みものとしての抹茶は、もっと身近でよいのではないかと考えています。みんな、抹茶アイスや抹茶ケーキはふつうに食べるのに、美味しい抹茶そのものを楽しまないなんてもったいない。

お気に入りのトレーの上に、道具を並べて。

美味しいだけではありません。朝、抹茶をいただくと心身がすっきりとするのです。しゃんとする。個人的な感覚としては、朝いちばんの抹茶がもたらす爽快感は、少なくとも午前中はずっと持続します。そこでだいたい朝食の後に、一服か二服抹茶を点て、それからその日の用事を始めるというのが、習慣になっています。

茶道具一式を入れた茶箱とトレーをテーブルに常備。

ふだん着のお茶で使う道具は、ひと箱にまとめておくととても便利です。

茶箱はもともと屋外でお茶を点てるために、道具を箱に組んだものですが、自宅用の茶箱もあってよいのではと思い、季節ごとに組み合わせダイニングに置いています。このようにお茶道具一式が身近にあることは、日常を少し豊かな気持ちにしてくれるのです。

抹茶を入れる容器は茶器でなくてもいい。自分の好きな「気分の上がる」器を使いたい。

道具もいわゆる茶道具にこだわらず、工芸家の器や日常の食器なども利用します。家で楽しむ抹茶なら、誰に気兼ねもなく、自由にあそべばよい。

そして、気に入りの道具たちを詰めた茶箱が一つあれば、ベランダやお庭、子供部屋やベッドの上、家のどこへでも運んで行って、好きな場所でお茶を点てることができるのです。

わたしの場合、使う茶箱や道具は、季節やその時の気分によって変わりますが、外へ持ち運ぶ茶箱より、さらに自由度は上がります。

ふつうの大きさの茶碗が余裕で入る大ぶりの茶箱。

たとえば茶箱の大きさ。外へ持っていく際、わたしはバッグに入れて持ち歩いたり、自転車の荷台に載せたりすることが多いので、できるだけ小さくまとめることを考えます。旅に出る際は、別の荷物もあるのでさらにコンパクトさが求められます。

しかし、自宅用は持ち運ばないぶん、箱がどれだけ大きくても大丈夫。中に入れる道具の大きさも制限が少なくなります。お気に入りの大ぶりの茶碗も使えるので、季節ごとにあれやこれやと入れ替えます。

雑貨店で積んであった数百円の収納カゴを茶箱に見立てる。

ちょっとデリケートな箱が使えるのも嬉しいところ。お菓子の入っていた綺麗な紙箱や缶なども利用します。

今回の箱は、雑貨店で求めた整理用のカゴ。このカゴ、半額セールの数百円の代物で、お得に手に入れたことも自慢です。小さなカゴと入れ子になったセットなので、茶箱役をお休みしている時には、小物の整理に使われているという働き者。外に持ち出すには華奢すぎますが、家で使うのであれば問題なしです。カゴの間から道具が透けて見えるので、飾っていても楽しいひと箱です。

雰囲気の異なる茶碗を2つ合わせて楽しむ。

中には今回は茶碗を二つ組みました。茶箱用の小ぶりの茶碗ではなく、春から夏にかけて愛用しているふだん使いの茶碗二碗。

一つは辻村史朗さんの刷毛目平茶碗。もう一つは淡い桜色のガラス碗。いずれも若かりし頃から愛用の品。それぞれ大切な方からいただいた茶碗ですが、ふだんからどんどんお茶を点てています。自分で見つけた器もよいけれど、人からいただいた道具も仕舞い込まず、日常の中で気持ちよく使います。

おうちでの抹茶ならお菓子も自由。チョコレートも抹茶と合うのです。

以前、ある知り合いに朝のダイニング茶の話をしたところ、ご家族で朝茶をするようになったと嬉しい報告を受けました。

朝食後、テーブルでお茶を点てると、息子さんが美味しそうに一服してから出かけるのだそうです。朝の茶は家族のコミュニケーションツールにもなり、そのお宅でも好評です。

立派な道具を集めなくても、ふだん身の回りにあるもので、ひと箱を組んでみる楽しさ。朝からの抹茶一服と、おうち用茶箱、みなさまにもぜひお勧めします。

ふくいひろこ

京都市生まれ。茶道周辺や京都関連本の編集者をつとめながら、自身の趣味として茶箱であそぶこと20余年。茶道具のみならず見立ての道具をふんだんに使い、日常で楽しむお茶を提案。道具を集めるのに飽き足らず、理想の茶箱道具を知り合いの作家や職人にオーダーするうちに、オリジナル茶箱の作品群が生まれ、時折展示会なども行っている。
●水円舎ホームページ https://suiensha.com
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お茶室がなくても、茶箱一つあれば、どんな場所も「わたしの茶室」になる




 
文・写真/ふくいひろこ
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