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作家 田中慎弥さんの小説との向き合い方、自選の3冊

2020.04.28

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〔田中慎弥さんの自選の3冊〕


自選の3冊について尋ねると、「常套句ではありますけど、いちばん新しい作品がいちばんよいものでなければいけないので」という田中さん。世に出ているなかで新しい2作、そして少し考えてから挙げてくださったデビュー作。作家から見て共通するところがあるという3作の、その共通点とは。


『冷たい水の羊』(『図書準備室』収録作・新潮文庫)
『ひよこ太陽』(新潮社)

『完全犯罪の恋』(『群像』2020年4月号掲載)


『冷たい水の羊』は、書いているときに自分ではよくわからない、足を踏み外す感があった作品で、だから新人賞を受賞してデビューできたのだと思います。

小説を評する際、女性がよく描けている/描けていないという言い方がありますが、特にこのご時世、女性と限定する必要はないし、それは人間が描けているかどうか、ということなのでしょう。主人公を男性にすることが多い私の小説のなかで、この3作は主人公と女性の距離の取り方に共通するものがあるような気がしています。

『完全犯罪の恋』というすごいタイトルの小説も、『ひよこ太陽』に続いて一人称で、ほぼ自分に近い作家が主人公です。一応恋愛小説のかたちは取っていますが、ちょっと観念的なものになってしまったかなと、そんな感があります。

田中慎弥(たなか しんや)

たなかしんや●1972年山口県生まれ。2005年『冷たい水の羊』で新潮新人賞受賞。2008年『蛹』で川端康成文学賞、『切れた鎖』で三島由紀夫賞、2012年『共喰い』で芥川賞、2019年『ひよこ太陽』で泉鏡花文学賞を受賞。近作に『宰相A』『美しい国への旅』、エッセイに『孤独論:逃げよ、生きよ』など。

【田中慎弥さんの最新刊】


喋るネズミと人間の和解をめぐるやりとりを、さまざまなエピソードを交えながら描く寓話的小説『地に這うものの記録」(文藝春秋刊)
取材・構成・文/塚田恭子 撮影/大河内 禎(人物) 中島里小梨(静物)
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