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桜並木を駆け抜けるSLの響き【残したい日本の音風景・4月】文/細野晴臣

2020.02.28

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4月 大井川鐵道


文/細野晴臣



蒸気機関車は20世紀を牽引した動力だった。アイアン・ホースと呼ばれた鉄の塊は、産業革命のシンボルとして力強さと哀愁を併せ持つ稀有な機械だ。


既に過去のものとなった蒸気機関車だがそれでも人々は愛し続けている。デジタルやアナログといった現代的な枠を超え、心を揺さぶる鉄の動物なのだ。

10年ほど前に大井川鐵道に乗って寸又峡(すまたきょう)まで行ったことがある。

乗車前に運転台で汽笛を操作させてもらえたのが嬉しかった。

昔のままの木の座席が心地よい。気がつくと子供の頃に乗って経験した黒煙が出ていない。昔はトンネルを通過する時、乗客は真夏であっても窓を慌てて閉じたものだった。

この黒煙は不完全燃焼の色であり、本来は無煙もしくは白い蒸気が正常らしい。アミューズメントとして生き残ったSLだが、鳴り続ける車内放送はガイド・イヤフォンにすればいいのに。

上のバナーをクリックすると、実際の音を聴くことができます。

細野晴臣(ほその・はるおみ)



音楽家

1947年東京生まれ。1969年「エイプリル・フール」でデビュー。1970年「はっぴいえんど」結成。73年ソロ活動を開始、同時に「ティン・パン・アレー」としても活動。78年「イエロー・マジック・オーケストラ(YMO)」を結成、歌謡界での楽曲提供を手掛けプロデューサー、レーベル主宰者としても活動。YMO散開後は、ワールドミュージック、アンビエント、エレクトロニカを探求、作曲・プロデュースなど多岐にわたり活動。
公式サイト www.hosonoharuomi.jp
出典・音響提供/環境省「残したい“日本の音風景100選”」 写真/大井川鐵道

※こちらの音は、公益社団法人日本騒音制御工学会ホームページ「日本の音風景100選/サウンドライブラリ」からも聴くことができます。

『家庭画報』2020年4月号掲載。
この記事の情報は、掲載号の発売当時のものです。
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