我らが応援団長、松岡修造さん心のコラム 第10回「挑励（チョレイ）！卓球男子代表に内定した張本智和選手が苦悩の末に取り戻した自信」

毎日の練習を続けることで取り戻した自信

しかし、その後、智和さんは復活します。12月1日にはワールドカップの男子シングルスで日本勢初の準優勝！　12月13日にはグランドファイナルの男子シングルス決勝で、世界ランキング1位の許昕（キョキン／中国）選手をあと一歩のところまで追い詰めました。代名詞の雄叫びも戻って、ものすごく積極的にプレーしています。

前回の取材から約半年ぶりに、僕は智和さんに改めてインタビューさせていただきました。復活のきっかけを尋ね、最後には彼が「よし、がんばろう！」と思えるようなインタビューにしたい。そんな思いを胸に臨みました。

辛かった時期、智和さんはとにかく毎日の練習だけは続けていたといいます。理由は、コーチから「練習しないで強くなることはありえない」といわれたこと、自分自身も「一日でも練習を怠ったら同じ失敗を繰り返してしまう。練習したほうが絶対に勝つ確率はあがる」と信じていたこと。彼の中に、まだ「勝ちたい」という気持ちがあったのです。


8月、ブルガリアオープンの男子シングルスで、智和さんは8か月ぶりとなる優勝を果たします。「毎日の練習が自信となり、試合中も勝てるという気持ちが大きかった」のだそう。この勝利を機に、彼は強い自分を取り戻していきました。

智和さんの復活は、全アスリートに力をくれます！

智和さんの復活には、心の変化とともに、技術の進歩も大きな役割を果たしています。僕はグランドファイナルで、彼のフォアの強打にびっくりしました。それまでは手だけで打っていたのを、手と腰で打つように変えたそうで、本人も、「自分の卓球人生のなかで、初めてフォアで得点が取れると思った試合でした。今までバック頼みだったのが、戦術の幅が広がりました」といっています。

マッチポイントを3回取りながら勝てなかったことについては、「自分の力は100％以上出していたんですけど、あと一歩のところで自分のプレーができていなかった」と語った智和さん。でも、僕はオリンピックのことを考えると、それでよかったと思っているんです。優勝していたら、きっと、「張本は絶対オリンピックで金メダルだ！」という声がますます高まり、彼のプレッシャーをより大きくしてしまっていたでしょうから。

番組の最後に「挑励（チョレイ）」の書を見せて、「挑戦すること、そして自分を励ますことが智和さんの力になっている」と話したところ、「こんないい表現があって嬉しいです」と笑顔でいってくれました。そして、「来年のオリンピックで活躍するための経験値はすごくたまったと思うので、来年7、8月で全部出し切って、金メダルを獲るだけだと思っています」と決意を語ってくれました。

自国で開催される東京2020オリンピックは出場する全選手にとって特別なものです。プレッシャーを感じている選手はたくさんいて、智和さんはその筆頭だったと思います。その彼が練習を重ねることで苦しい時期を乗り越え、代表の座を掴んだことは、他の選手のみなさんにとって大きな励みになると思います。智和さん、東京2020に向けて、挑励！





コラムの締めは毎回、僕のメッセージを凝縮した一文字の書。”心”がすべての根っこにある！という思いをもとに書いています。第10回は「挑励心」。みなさんも、自分を励ましながら挑戦を続けていれば、きっと智和さんのように未来が開けます！