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マリー・アントワネットが愛した“王妃の村里”を守る人々

2020.01.15

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パリ郊外のヴェルサイユ宮殿の広大な敷地の外れに、小さな“村”があります。宮殿の豪奢な建築とは異なる簡素な田舎家が並ぶこの一角こそ、マリー・アントワネットが心から夢見た場所。プチ・トリアノンの庭に作り上げられた擬似農村です。宮殿内で唯一、彼女の命で建造された「王妃の村里」。革命後は、ナポレオン1世の2番目の妻マリー・ルイーズに引き継がれました。そして2018年5月、2人のマリーのスタイルを調和させた形で修復が完成し、再公開されています。
ヴェルサイユ宮殿

「王妃の村里」の中心、「王妃の館」は、プチ・トリアノンから夕方徒歩で向かう際、夕日を受けて美しく輝く姿を庭から楽しめるようにと西向きに建てられた。人工池の周囲に塔や納屋、水車小屋などが点在する。

【ル・アモー・ドゥ・ラ・レーヌ】
マリー・アントワネットが思いを託した夢の村里を忠実に再現


ルイ15世が愛妾ポンパドゥール夫人のために建て、やがてマリー・アントワネットのお気に入りとなったヴェルサイユ宮殿の離宮プチ・トリアノン。


その奥にあるのが「王妃の村里」です。

王妃の村里

マリー・アントワネットが寝室の窓から見た、朝日を浴びて輝く庭の景色
寝室の窓からは、建物の背後から昇る朝日が庭を輝かせる様子が見渡せる。マリー・アントワネット時代から、多くの鉢植えの花が飾られていた。


それまでは既存の建物のインテリアを好きなように整えるのみだった彼女が、唯一自身の命で築かせた場所。

池を掘り、風車小屋などを建て、実際に農民を住まわせて小さな村を作り上げ、中心に居心地のよい館を建てました。完成は1781年です。

王妃の館

「王妃の館」の背後から昇る朝日。特徴的ならせん階段は、マリー・ルイーズ時代には撤去されていたが、今回の修復で甦った。

謀略がうずまく王宮を離れ、ごく親しい友人のみを招き入れて憩いの場所とし、同時に、3人の子どもに王宮の外の暮らしを見せる教育の場としても活用しました。

革命後はナポレオン1世の2番目の妻マリー・ルイーズに引き継がれ、王妃の館は1818年に全面的に改修。村里はふつうの庭に戻されました。

現在も敷地内にヤギやヒツジが飼われている。

現在も敷地内にヤギやヒツジが飼われている。

帝政時代崩壊後は数度の修復と放置を経て荒廃。

今回、「ディオール」の支援のもと、5年間の調査と工事を終え、2018年に再公開されました。

ヴェルサイユ宮殿

左はヴェルサイユ宮殿、右は「王妃の村里」の略地図。池のほとりの塔は、当時の流行歌にちなんで「マールボロの塔」と名づけられた。イラスト/朝倉めぐみ

畑

マリー・アントワネットは子どもたちに農業を教えるため、実際に野菜を育てさせていた。当時フランスにあった野菜はキャベツ、いんげん、レタス、玉ねぎなど。花も育てていたという。

調査と深い考察により甦った2人のマリーの憩いの場所


かつて王妃と皇后が使用したという歴史の厚みを考慮しながら全体を1つのものとして捉え、バランスを取ることは挑戦だったという、ジャック・ムーランさん。

ヴェルサイユ宮殿の歴史的建造物チーフとして、調査開始から完成までを見届けました。

ジャック・ムーランさん

歴史的建造物チーフ ジャック・ムーランさん
フォンテーヌブロー、サン=ジェルマン=アン=レー、ヴォー=ル=ヴィコントなどの城の修復に携わった後、ヴェルサイユ宮殿へ。歴史的建造物チーフとして、庭と建物の修復をトータルで監修。


「当時流行していた英国式庭園を参考に、農民に対して親しみをもつフランスの伝統的な考え方と、その頃登場した“農業こそが国富である”という経済論の影響から育まれた敬意を織り交ぜて、マリー・アントワネットは村里そのものを作るという独自のアイディアを発揮しました。

パリのビジネスマンがノルマンディーの田舎家で過ごす週末を楽しみにしながら仕事に励む現代にあって、この場所を甦らせたことには大きな意味があると思います」。

椅子

椅子のフレームは家具工房、椅子張りとカーテンはタピスリー工房が担当。壁の絵は布絵の専門家に修復を依頼。

150年後の人にもわかる修復の記録を残す


ヴェルサイユ宮殿の家具・工芸品のディレクターを務めるエリザベス・コードさんは、「王妃の館」の内装の修復に携わり、おもに金箔、家具、タピスリー(椅子などの家具に布を張る部門)を担当。

エリザベス・コードさん

家具・工芸品ディレクター エリザベス・コードさん
コンピエーニュ博物館、マルメゾン城に勤務後、ヴェルサイユ宮殿の家具、工芸品担当チーフに。調査・研究のみならず、宮殿内から殺到する修復依頼を受け、約15名の修復職人に采配を振るうのも仕事のうちという。


「サロンの内装はほぼ失われていたため、ほかの同時代の城を参照するなどして、新たに生地から製作しました。

18世紀に発掘されたポンペイ遺跡のモチーフはマリー・アントワネットの時代にまず流行し、マリー・ルイーズ時代には定着していたので、マルメゾン城などほかの城にも同様のデザインが見られます」。

マリー・ルイーズ時代の室内装飾

伝統技術の粋を尽くしたマリー・ルイーズ時代の室内装飾
「王妃の館」で最もラグジュアリーな「サロン」。建物そのものはマリー・アントワネット時代を、家具やファブリックなどの内装はマリー・ルイーズ時代を再現。インテリアは、当時の潮流“ポンペイ”スタイル。黄色も流行していた。


宮殿内の家具や内装の修復方法、置かれた場所、価値などをリスト化した「ログブック」という記録が18世紀から残されており、修復の参考にするとともに、現在も記録をすべて書き残し続けているといいます。
マリー・ルイーズがしつらえたくつろぎのベッドルーム

マリー・ルイーズがしつらえたくつろぎのベッドルーム
壁にはマリー・ルイーズ時代同様、グリーンのシルクが張られている。失われていたベッドの天蓋は同時代のものを参照し、新たに作製された。
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