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久石 譲さん×沼野雄司さんが語り合う「私の愛するベートーヴェン」

2020.01.07

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音楽社会史家 大崎滋生さんが語る
今、解き明かされる新・ベートーヴェン像


大崎滋生さん

大崎滋生(おおさき・しげみ)
音楽社会史家。『ベートーヴェン像 再構築』に続き、2019年に600ページに及ぶ『ベートーヴェン 完全詳細年譜』(ともに春秋社)も出版。これまで音楽史の通説を覆す数々の論考を発表し、「音楽史のデストロイヤー」の異名も取る。

膨大な一次資料から見えてくる誠実な人柄


皆さんはベートーヴェンについてどんなイメージをお持ちでしょうか。真実のベートーヴェン像を追究すべく、2018年全3巻の研究書が出版されました。

会話帖(活字転写版)、セイヤーによる伝記、新作品カタログ

上から、会話帖(活字転写版)、セイヤーによる伝記、新作品カタログ。同伝記は今までベートーヴェン認識の基礎となっていたが、全実態を摑めていなかった。

膨大な第一次資料(会話帖、新作品カタログなど)を丹念に読み解き、仮説と検証を重ね、新しいベートーヴェン像を打ち出した、大崎滋生著『ベートーヴェン像 再構築』(春秋社)です。

同書では、ベートーヴェンの死後、元秘書シンドラーによる虚偽言説が後の研究や伝記に紛れ、長らくベートーヴェン像を歪めてきたことも憂慮して、さまざまな批判的考察・検証を重ねたうえで新しい説を打ち出しています。

では、大崎先生が検証した第一次資料とはどんなものでしょうか。現存する139册の会話帖からは、耳疾の悪化したベートーヴェンが知人たちと交わした会話内容が推測できます。

計1000ページに及ぶ新作品カタログ

左2冊は計1000ページに及ぶ新作品カタログ。スケッチ・自筆譜・出版譜情報等がすべて掲載。

相手が書き込み、ベートーヴェンは口頭で答えるもの。最後は、ウィーンにおけるイタリアオペラ最新事情について交わした会話で終わっています。

約2500通分が収録された書簡集は、日付・宛先不明だった“不滅の恋人”宛も含め、執筆時期の特定によって前後関係が解読できるように。

こうした資料から、激しい気性・人づきあいの悪さなどといった従来の通念とは違う、「音楽と同様の、誠実な人柄が浮かんでくる」と大崎先生。

さらに2014年に刊行された新作品カタログは、約8000枚にも及ぶスケッチの全記録、世界中の図書館にある1830年までの出版譜がすべて収録されています。

これによりベートーヴェンの創作活動の全貌がついに明らかに。大崎先生による世界初の包括的な研究成果、その一部をご紹介しましょう。

『ベートーヴェン像 再構築』

1300ページのベートーヴェン大研究ベートーヴェンに関する一次資料を網羅的に解読・検証した、世界初の研究書『ベートーヴェン像 再構築』(2018年、春秋社)。なぜ交響曲第3番を「ボナパルト」から「エロイカ」にしたかの真相、作品番号に17もの欠番があった理由、創作活動の全貌、作品献呈行為の公的な性格等、同書で発表された数々の新説が最終巻索引にまとめられています。

真実1:「第九」へとつながった『オリーブ山のキリスト』の存在


ベートーヴェンは“ハイリゲンシュタットの遺書”後、精力的に活動を再開しますが、その最初の一つがオラトリオ『オリーブ山のキリスト』。キリストが俗世の人々の罪を一身に背負い、苦悩し、救済の仕事が成就したとき、天使の祝福を受ける、いわば受難曲です。

自分とキリストの苦悩を重ね、遺書の中で語る「芸術だけが死を思いとどまらせた」は神による救済と相応しているのでは、そして「第九」などの原型ではと考察。

真実2:「熱情ソナタ」と同じ想いの、知られざるもう一つの名曲


ベートーヴェンは想いを寄せていた未亡人ヨゼフィーネとの恋愛が再燃する最中に「熱情ソナタ」Op.57を、破局後に「ピアノ・ファンタジー ト短調」Op.77を作曲。あまり知られているとはいえない後者は「激しい感情と柔和な諦観が交替する鬼気迫る曲」と大崎さん。

2曲とも公的な原版出版譜はチェロ奏者であるヨゼフィーネの兄に献呈されているが、本当は妹に捧げたかったのではと想像を膨らませています。

真実3:実は音楽総合クリエイター&プロデューサーの先駆けだった


難聴で演奏活動が絶たれたベートーヴェンの生計の柱は、作品の出版販売となります。市民に向けた音楽の時代への変革期にあって、ベートーヴェンは自立した音楽家として、上演準備や原版出版のための出版社との交渉も自らこなし、その作業すべてが“創作活動”でした。

著作権の確立とも闘い、数カ国を相手に時間差多発出版、後には国際同時出版や自ら編曲版を出して海賊版を防ぎました。

真実4:交響曲やピアノ曲だけにあらず!オペラ・オラトリオ創作も熱望


ベートーヴェンはオラトリオやオペラの作曲を生涯途切れなく望んでいました。完成・未完成それぞれ2作のほか、台本の検討はなんと41作。宮廷劇場オペラ作曲家への登用を請願し、叶わなかったことも。

言葉や台本にもこだわり、シラーやホメロスなど“不滅の詩人”に曲をつけたいと希望。これを踏まえると、シラーの詩とベートーヴェンの音楽が融合した「第九」は、生まれるべくして生まれた一曲なのです。
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